私と君の子だよ(ガチ)
私は夏油 継子。
無個性である。そう、私は八割という勝ったも同然の賭けに負けた落伍者だ。
クッソ生きづらく、思い余って強個性の友達に異世界に送ってもらった。
もちろん、それなりに準備をして、偽の戸籍と仕事、無個性の旦那も手に入れた。
さて、無個性の子は無個性か?
そんなわきゃーない。八割って言ったら八割だ。
私の両親だって個性持ちだ。むしろ親子二代続けて無個性って言ったらめちゃくちゃ不運な部類である。
なので、両親が無個性でも、子供が個性を持って生まれることはなんら不思議な事ではなかった。
私の息子の傑は、なんとお化けをお腹に収納する個性を持った子だった。
しかも、お化けはなんとこっちの世界にしかいないというのだ。
悩みに悩んだ私は、義務教育なのを良い事に、幼稚園までは向こうで、小学校と中学校は半々で通わせる事とした。どちらの世界を傑が選ぶにしろ、個性あふれる友達にも普通の子から力を隠すことにも慣れていた方がいい。そして、一緒にお化け探しなどを手伝う事とした。
こればかりは、私が責任持って面倒を見てあげなければならない。
自信満々で魑魅魍魎溢れる幼稚園に出かけて、泣いて帰ってきた時は心が痛んだけど、心を鬼にした。私は無個性で行ったんだぞ、頑張れ。
私は夏油傑。
母さんは身籠(みかご)という名前を激推ししてたらしいが、そこは母さんに内緒で出生届を先に出した父さんに感謝である。
私の個性は、お化けを身籠る事だそうだ。お化けはこちらの世界にしかいないので、個性持ちの母さんとこの世界生まれの父さんの子供という事だろう。
幼稚園はクッソ大変だったし、小学校や中学校では習う事が微妙に違うので別の意味で大変だった。私はごく普通にヒーローに憧れたが、お化けを操る力を持つ以上、こちらの世界で生きていくというのも捨てがたかった。そして、いつまでも母さんの友人の渡さんにお世話になっているわけにもいかない。
どちらかの世界を選ぶべき時が来るのもわかっていた。
呪術の学校にスカウトされた時、自分が術式持ちで無個性だった事を知り、驚きはしたものの、私の心は決まった。
私程度で最強なんて片腹痛いけれど、この世界だと順当だろうとも思う。
悟の力は、向こう基準でもかなり強いものだし、補い合う形でなら二人で最強も一理ある。
向こうの方が、私の力は役立てるのだけれど……。こっちではヒーロー、いや呪術師が人手不足だから、こちらの方が必要とされるだろうとは思った。
私の力は、レスキューに特化しているし、向こうの人間は呪霊を殺せないから、捕縛にもすごく便利だし、適性は向こうの方が遥かに上で、悩んだんだけどね。何せ呪術師はレスキューとかしないから。
ヒーロー資格は専門の高校で取るから、どちらかを選ばなくてはならなかったから、中々決めるのは大変だった。
未練たらしく、友人から借りたヒーロー高校の教科書は読んでいるけれど。
今の私の悩みは、性的嗜好が男に特化している事だ。
いっそ女に産まれれば良かったのにと思う。
原因はなんだろうか。あれか。格好いい友人が多すぎる事か。
悟もだけど、ヒーロー志望だったので友人もヒーロー志望の性格よし能力強しの男の友達多かったし、それでだろうか。
そんな私だが、転機があった。
理子ちゃんの死、灰原の死、過労で弱っていた私は本能を抑えきれず、悟をベッドに誘ってしまったのだ。
悟と交わった私は、自分の真の個性を理解した。
あ、私の個性、孕む事だ……。
そんなの普通の女の子でもできるじゃないか!???
なんでそんな個性!????
しかも個性となると、一生身籠りたいって欲求と付き合わないといけないって事じゃないか!??
もう頭は真っ白である。
産むか産まないか、頭が混乱状態の時に、美々子と菜々子に会った。
震える二人を見て、私は決意をした。
村人を殴り倒して、美々子と菜々子を連れて、母さんの友達の渡さんに泣きついたのだ。
当然呪詛師として追われてしまったので、母さんと父さんもこちらの世界に引っ越してもらうことになってしまったけれど……。
みんなに迷惑を掛けながら、必死に子育てをしていた。
美々子も菜々子も息子の喰空も父さんも呪霊を産んだので、いつどうやって帰ろうかと相談していた。
そして、十年後。
両親がヴィランに殺されてしまい、渡さんが無理に扉を開かされ、ヴィランが私の世界に流出した。
私は渡さんが最期の力で扉を開いてくれた為、美々子と菜々子、それと喰空を連れて戻り、ヴィラン狩りをした。
ヴィランは派手に暴れ、異形型でしかも呪力の残穢がなく、検出されるのが私とやり合った際の残穢だけだった為、私のせいだという事になってしまった。
どうでも良かった。
私のせいで両親と渡さんが死んだ事は間違いがないのだから。
「傑。最後に一応聞く。本当にお前がやったのか」
「私のせいではあるね。ああそうだ。私がやった」
「……言い残すことはあるか」
「そうだね。この住所の子供を保護して欲しい。あの子達に罪はない」
「子供?」
「私と君の子供だよ」
「は?」
「あっははははは! その顔!! 冗談だ、拾った子だよ。まあよろしく頼むよ。さ、一思いにやってくれ」
悟に悟の子を産んだって知られるのは死んだ方がマシだけど、死んだあとならまあいいや。嫌悪感とかじゃなくて、はとが豆鉄砲喰らった顔だったから、まあいいかな。
悟は、私を放置して転移して、子供を抱えてすぐ戻ってきた。
「傑、お前さぁ……。マジじゃん!!! 覚えあるし! どういうこと!??」
「先に確かめるなんてずるいぞ悟! 今の完全に私にとどめ刺してから確認する流れだっただろ!!!」
「後味悪い真似すんなよ!!」
私の抗議をものともせず、悟は私を連れ帰る事にしたようだ。止めて向こうですら針の筵だったんだよ!?
最期の言葉は? って聞いたじゃないか!!!
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