呪いはオカズ 作:密かにヒソカ
九州のとある田舎。
そこにはとある噂があった。
「ねぇねぇ、この噂知っとる?」
「なになに~?」
「この学校、夜になるとすっごい不気味になるやん? それでさ、3年の先輩たちがここに肝試しに行こうってなって、3人ぐらいで行ったらしいんよ」
「うわ、ちょっそれ怖い話~?」
「最後まで聞いてってー。続きがね、先輩たちは学校の屋上まで行こうってことになったっぽいの。昼に開けておいた窓から校舎に入って、一階、二階って順に上がってって、最後の屋上へ続く扉を開くと~?」
「………」
「全裸の男がブレイキングダンスしてたんやってー!」
「ぷはっ、何それ意味わからん」
『夜になると全裸の男が踊っている』
これがこの周辺に広まっている噂だ。噂の内容はまちまちで、踊っているのではなく戦っている、大人じゃなくて子供、アソコはでかいなどがある。
「ぅべぇああ」
「うるさい」
白髪に目隠しを付けた特徴的な大男は、呪霊と呼ばれる一般人には知覚出来ないものを祓う。目隠し、改め五条悟は任務でここまでやってきていた。
一級相当の呪霊の討伐、という建前の上層部からの嫌がらせで。五条はそれを分かった上で承諾し、遠いこの地までやって来た。
「夜になると現れる、そして裸………一般人に見える時点で呪霊じゃないよなー。なら間違いなく人間だろうけど、念の為確認してみるか。もしかしたら、同業者かもしれないしね」
そう考え、五条は目的の呪霊を祓わず夜まで待つ。
この時に、ある一人の運命が大きく変わった。
※
―――今日の俺は、運がいいッ!!
「べぁあああば」
「あぁ、お前も忘れてねェよ。もうちょっとだけ、遊んでやるよ」
呪霊を殴り飛ばす、この男。裸である。全裸である。フル◯ンである。
裸男の何倍ものデカさをもつ呪霊を、まるでサンドバッグ。呪霊が攻撃をしたくても出来ない、継ぎ目のない怒涛のラッシュ。腹が立った呪霊は、自身の術式を発動する。
「はん? それがお前の
呪霊の周りを水が浮かび、それが刃のように鋭くなって裸男に向かう。しかし裸男は動じず、目を瞑る。すると浮かぶ三つの水刃を木の葉のように身体を揺らして避ける。それは紙一重の動きで、達人のようだ。
「なかなか良いじゃねェか、うっ」
暗闇でよくは見えないが、裸男の下半身から
よくは見えないが。
「ふぅ………オーケー。お前はもういい」
「ふげ?」
瞬間、裸男は呪霊に超速で迫り先ほどよりも数段鋭い拳を振るう。
それだけで、呪霊の胴体が弾け飛んだ。
どうやら今までは全力では無かったらしいこの男。
―――パチパチパチ
「いやーすごいね君。お疲れサマンサ!」
「………」
どこからか響いてきた拍手、それをしているのは唐突に現れた五条悟。
しかし、裸男はまるで知っていたとでもいうのか、驚かずに五条に顔を向ける。
「君はさ、何者なのかな?」
「…………くくっ」
五条の問いに答えず、笑う裸男。
五条は見知らぬこの男について考える。地方の呪術師か、呪詛師か、はたまた一般から出てきた呪いが見える者かを。
―――もしも、彼が呪いについて何も知らずここまで来れたのなら、凄まじいね。
五条は六眼で裸男の呪力、術式を見て感嘆する。よくぞそこまでの呪力操作ができるものだと。まるで、
五条が思考を巡らせていると、裸男のニヤけ面はますます非道くなっていた。
「くかかかっ……お前、92点だァ」
「92……?」
「そう、92点♡ ここまで俺好みの力を持った奴は、今までいなかったぜェ」
「へぇ? 僕の質問にまだ答えてもらってないけど、まいっか!」
五条は手をクイッと挑発的に曲げる。
「いいよー、遊んであげる」
「それはァ……こっちのセリフだぜェェエ!!」
裸男が超速で五条に迫り、拳を突き出す。しかしそれは、空中で止まった。
「なんだ?」
「これね、"無限"って言うんだ。アキレスと亀って言えば分かるかな?」
「あァ、全然知らねェなァ!」
裸男は何度も拳を突き出し、そしてその全てが五条に届かず止まってしまう。
「簡単に言うと、君の攻撃は僕に届かない。絶対にね」
五条の言葉に、しかし裸男はひたすらに拳を突き出す。
「あふっ、お、おっほぉ!」
ひたすらに拳を突き出しては、なぜか気持ちよさそうにする裸男。
しかし五条はその場に止まったまま動こうとしない。なぜなら当たらないと確信しているからだ。裸男の術式では、
そしてそれは正しい。
しかし裸男に問題はない。なにせ裸男は今、戦闘を行なっているのではないからだ。
「おっほぉぉぉおあおおお!!」
またもや弾ける、本日二度目の白濁色。しかし暗くてナニカは分からない。
「もういいかな?」
五条は頃合いだと思い、声をかける。
「ふぅ………なんだよ?」
裸男は、今度はあっさりと言葉を返す。
「君はさ、昔から呪術を学んでたのかな?」
「呪術? 知らねェが、この力のことか?」
「そうそうそれ。いやー驚いたね、まさか本当に呪術も知らない一般家系だったなんて~」
五条はやや大袈裟に驚いてみせた。五条を知っている者たちからはウザがられる言動だが、裸男は特に反応しない。
「君さー…………呪術高専に来ない?」
「ほーん、そこにいったらお前みたいな奴にも会えるか?」
「呪術師ってことかな? それならいっぱいもいーっぱいいるよ~」
五条は平気で嘘をついた。呪術師は万年人手不足である。
「なら行く。俺にとって、オカズは多い方がいいからな」
「はい決定~。じゃあ君、名前教えてよ。あと学生でしょ? 学年も教えて」
「鳳仙 透だ。今中3で、来年から近くの高校に通う予定だった」
裸男、改め鳳仙は気だるげに答えた。
「ちなみにさ、なんで裸なの?」
「イク時に服あると邪魔だろ? あとは趣味」