高校に入って最初の中間試験のテストを改めて確認しながら、私は少し笑みを浮かべる。
「
そういう声が聞こえて返却された解答用紙から目を上げると、同級生である
「……証拠があれば」
私がそう言うと、彼はすっと口を私の耳元に近づける。
「小学三年生の時、和乃さんが本屋さんでやったことを知っている」
「……っ」
「あとこれ、ワンタイムパスワード」
「こっちだけなら、いいのに」
まだ胸がズキリと傷んだ感覚が消えない。でもこれはこれで、思考をちゃんと動かすきっかけになった。
「……一致しないけど」
解答用紙で上半分をアカウント名を隠した画面に映る文字列は、真山くんが見せてくるものとは異なってる。
「もう少し待って。あと一分しないと」
「……で、何がしたいの?」
私から秘密を聞いている以上、それなりの信頼関係は築いていたのだろう。彼にとっては前の周の私を信じるか。面倒とも言う。
「聞きたいことがあって」
「私に答えられることならいいけど」
「もしタイムリープをしているってことがバレたとしたら、どういう時だと思う?」
そう言われて、どう返すべきかを少し考える。読んできたSFを思い出すけれども、直接的に参考になりそうなものはないな。私が読んできた範囲が少ないからかもしれないが。
「未来を予言する、という事自体は必ずしもタイムリープであるとは限らない。念のために確認するけど、肉体はその時間時点のままで意識だけが巻き戻る感じ?」
時をかける少女ではかなり位置とか運動量とかも持ち越すことができていた。もし物を持ち運べるならその能力の価値はかなり大きくなる。ただ、その分面倒なパラドックスを引き起こしやすくはなる。
「うん。だから例えば怪我をしても、戻れば問題ない」
「……死んだことは?」
「……ない。はず」
そりゃまあ、たとえループしているからといって死を選べる人はそうそういないわな。
「それはよかった。もし死にたくなったら言って。一回はどうにかする」
具体的にはちょっと拘束とかするかも。だって他人に死なれると気分が悪いし。
「……ありがとう」
「で、本題だけどまずはほのめかし。タイムリープの話をして、その後にループしていないとわからないような事を言ったら疑われるよね」
「前の周で、それをやった」
少しばつが悪そうな顔をする真山くん。
「誰に?」
「和乃さんに」
「……へえ」
私を騙すんだ。そういう人なんだ。とはいえそれに罪悪感を覚える程度には真っ当らしい。ループで心が擦り切れていてもおかしくないのにね。
「言い訳じゃないけど、その前の和乃さんに許可はもらった」
「何を出してんだよ私は……」
私ならやらかすな、という自信がどこかにある。
「あと他にはそうだね、さっき言ったけど予言の場合でも例えば未来視みたいな形もあるし、予測の凄いバージョンかもしれない。それらの候補の中からループの可能性を言い当てるのは、ちょっと難しいかな……」
「……よかった」
「気がつかれたくないの?」
私は周囲を確認する。幸いかどうかは知らないけどこちらに注意を向けてくる人はいない。
「どうせまだループはしばらく終わらないだろうからって、ちょっと横着した」
「……別にいいけどね、私が困るかも」
「どういうこと?」
「真山さんの主観的にはこの周があるタイミングで切れるとしても、私にとってはそうとは限らない」
そう言って、解答用紙の裏に私は並行にいくつかの矢印を引いてから縦に並んだ始点に線を描き、枝分かれしている矢印を作る。
「真山さんは、おそらくこういう経路を辿っている」
そう言いながらシャーペンの先を動かしていく。ある程度まで行ったら、下の矢印の始点に戻るように。
「でも、今ここで主観的な私から見たらどうなると思う?このタイミングで真山さんが消えるのかもしれない。あるいはコピーみたいにこの会話が続くのかもしれない。あるいは……」
「あるいは?」
「存在しなくなるのかも。まあ、死に相当するって言っていいんじゃないかな」
そう言うと、彼は黙り込んでしまう。おっと思春期の脳には刺激的すぎる内容だったかな?
「とはいえこういうシャットダウンされるような終わりなら誰も苦しみはないし、その先には何もない。気絶して二度と目覚めないのと同じだよ」
「……僕一人が、そんな事を引き起こせる?」
「もし真山さんだけがループしているなら、それは特異点みたいに扱われるべきものになる。真山さんのためだけに世界が再演されているわけ」
「……眠れなくなりそう」
「あまり気にしすぎないほうがいいよ、証明も不可能なことなんだし」
なぜ死を恐れるのか、みたいな話があったな。どうせ死んだら恐れるとかそういうのもなくなるんだし。
「あとは、意識だけっていうのが面白いな。意識はそれ自体が独立で存在するって証明になるなら、意思の哲学とかがまた面白い感じになる」
そういうものが存在することを前提に話を進めてしまうSFに非科学的だと野暮なツッコミを入れるのはあれだけど、思考実験としてなら許容されるだろう。
「それってどういうこ