今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 七回目 三周目 一

意識が戻っていく。規則的な、聞き慣れたような、でもどこか馴染みのない音がする。

 

「あぁ……なに?」

 

寝巻き。電気がつけっぱなしの部屋。起きてすぐなのに妙にすっきりした頭。

 

スマートフォン。着信音。ああ、この音か。かけてきたのは真山翔太。

 

「これから和乃さんの家に行くから」

 

「せめてもう少し情報をくれないかなぁ?」

 

無理矢理に脳を回していく。なるほど、ループか。三周目以降。私と夜を過ごしたことがある。

 

父が帰ってくるのは日付が変わる頃かな。私の家に来た理由は何だ?雑に私が誘惑したとか?いいことしてくれましたね、褒めて遣わす。

 

「三周目。終わるのは明日の朝三時半ぐらい。六時間ぐらいのループになる」

 

「……深夜、か」

 

「前は自転車で県外まで行った」

 

「アホなんか?」

 

おもわずかなり強い言葉が出てしまった。夜中なのでちょっと間違えば近所迷惑である。

 

「カップ麺はおいしかったよ」

 

「いいなー」

 

「……もうやらなくていいかな、って思ったけど」

 

「そうだよね」

 

そんな会話をしながら、私はパソコンを起動して計算用のファイルを出す。時間を入力すると、グラフ上に点が現れた。

 

「……和乃さん?」

 

「あ、ごめん。計算結果が出た」

 

「計算結果?」

 

「うん、今回は十七周で終わる可能性が高い」

 

今までの規則性から出した数字だ。どこまで正確かはわからないし、誤差の範囲もあるのであまり正しいことは言えないが。

 

「どうしてわかるの?」

 

「規則性。周数が倍になると、一周の時間は四分の一になる」

 

「……三倍だと?」

 

「九分の一」

 

「二乗?」

 

「その逆数。あくまで仮説だけどね」

 

「……それで表みたいなものって作れる?」

 

「あるよ、見に来て」

 

そう言うと、家のチャイムが鳴った。なんだ、かなりすぐに来たな。というか話しながら来たのか。

 

「開けて」

 

電話越しと扉越しに声が同時に聞こえる。

 

「はいはい、今行くよ」

 

寝間着のままだが、まあいいだろう。それとも純粋な高校生にとってはちょっと刺激的だったりするのかな?

 

「寒っ」

 

風が吹き込んできたので、急いで扉を閉める。真山くんもそれなりに暖かそうな格好をしていた。

 

「だよね、身体動かせばそうでもないんだけれども」

 

「トイレの場所は?」

 

「聞いた」

 

「よし」

 

真山くんが慣れた感じで私の部屋に入ってくるので、私はそういうものだと頭を切り替える。恥ずかしいとか考えていたら今後保たないぞ。

 

「これがその計算?」

 

「そうだね」

 

表示されるのはグラフとか曲線とか。近似曲線の設定をいくつか触っていたらいい感じに三つの点を通るやつが出たので、それに合わせて式を作った形になる。

 

「これって今までの数字と合ってるの?」

 

「そのはずだよ」

 

私はそう言って、今まで経験してきた回数と周数だけを選んで色を変える。

 

「……確かに、それっぽい」

 

「でしょ?これだと私達が最初に出会ったやつは九十周ぐらいしていたことになる」

 

「そんなにしてたんだ……」

 

「意外だった?」

 

「数えてなかったし、こんな規則があるとは思っていなかったから」

 

「まあ、これも本当にあっているかは不明だけどね。あと十五回したらわかるけど」

 

さて、これで今の私がやるべきことは終わった。あとはもう自由にしていいよな。

 

「……ところで」

 

「ん?」

 

「これって、今までに僕が嘘をついていたら計算がおかしくなるよね」

 

「嘘をついたことがあるの?」

 

「……ここに入っている数字については、ないよ」

 

「まあ、これについてはそういうことするメリットがないか」

 

色々書き足したものを保存しないことを選択してファイルを閉じ、私はちょっと悩む。

 

「……こっち座る?ベッドの方がいい?」

 

「……ベッドで」

 

「そう」

 

まあ二人以上来たら座る場所がないからね。一応床にあぐらかいたりしてもいいけど、肩の高さぐらいまで積み上がった本の隣で安心して話せるかは不明である。

 

「で、何する?」

 

私は真山くんをじっと見つめて言う。なんか座り心地というのか居心地が悪そうな感じをしている。まあまだそこには熱が残ってますからね。

 

「……何がいいかな」

 

「前の周は自転車だっけ」

 

「そう。地図ってある?」

 

「ちょっとまってね」

 

私はパソコンをまた操作する。拡大。拡大。ちょっと縮小。

 

「現在地はここ」

 

「ええと、たぶんここの通りをずっと進んで……」

 

立ち上がって画面を指さしてくれる真山くんに従って地図を動かしてくと、指は県外まで行って少し経ったところで止まった。

 

「……相当行ったね」

 

「だから今回は近場でいいかな」

 

「近場ね……」

 

改めて地図の縮尺を調整して、駅とこの家と真山くんの家と高校みたいな普段の行動範囲ぐらいの範囲にする。

 

駅前の繁華街の隣、歓楽街も入っている。わかりますかねこの違い。繁華街は昼の街、歓楽街は夜の街。いやあまり夜には通らないんですけどね。

 

「……カラオケ、とか?」

 

「たぶんよくないからな……」

 

「条例とか?」

 

「そう。スーツとか着ればなんとかなるかもしれないけど……」

 

「……やめとく?」

 

「そうだね」

 

色々と面倒なのだ。夜遊びというのは大変なのである。

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