今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 七回目 四周目 二

「……どうする?」

 

ひとまず私の家の方向に足を進めながら、私は真山くんに聞く。

 

「そういえば和乃さん、食べてないんじゃないの?」

 

「午後にあんまり動いていないからそこまでお腹空いていなくて」

 

空腹感を自覚できていないだけかもしれませんけどね。こういう時は食べ始めるといきなりお腹が空いてきて、食べ過ぎた頃にやっと満腹感が出てくるのだ。

 

そしてさらにもう少し経つとお腹が苦しくなる。人間というのは愚かな生き物なので、私は何度もこういった経験をしている。

 

「……食べに行く?」

 

「食べる場所、ある?」

 

「あーそっか、夜だとお店に入れないんだ……」

 

まったく、なんで夜の街はお腹を空かせた少女にこんな厳しいのですか。家に帰れってことだと思う。ちゃんと冷蔵庫とかには食材がそれなりにはあるけどさ。

 

「さすがにこの見た目で成年済みっていうのは少し難しいし」

 

多少化粧とかすればごまかせるかもしれないが、真山くんの方は難しい。いや子供っぽいってわけじゃないですよ。化粧という文化の性別に対する非対称性ってだけであって。

 

「……カラオケよりも、食事のほうがよかった?」

 

「真山くんは晩ごはん食べたんでしょ、そっちに合わせていいよ。もしお腹空いたら勝手にこっちで買い食いするから」

 

「……うん」

 

「それにしても、できることは少ないよね……」

 

「入れる場所もないし」

 

「ないわけじゃないけど」

 

頭を少し回す。問題になるのは条例だ。で、条例で立ち入りが禁止されている施設はいくつかあるが禁止されていない施設もある。そして条例やら法律やらを回避しようとしている施設もある。

 

「あるの?」

 

「まあね、ただまあ……」

 

「そこに行く?」

 

こっちの気も知らないで気軽に言いやがって。まあいいか、開き直ってしまおう。どうせあと十周はしなくちゃいけないんだ、いい感じの空間の確保はしておいた方がいい。

 

「……行ってみるか、どうせ失敗したところでまだ序盤だし、恥をかくのは数時間で済む」

 

「……どこなの?」

 

不思議そうな顔の真山くん。まあそれはそうか。私だって経験がなければ思いつかなかっただろうし。

 

「休憩施設、って扱いになってる」

 

「……それって」

 

「偽装ラブホテル」

 

「……偽装?」

 

ツッコミどころはそっちなのね。まあいいか。

 

「ええと、ちょっと説明用に検索する」

 

うろ覚えだったが、単語を入れるとちゃんと出てきてくれた。

 

「えーとそもそもラブホテルについてはご存じ?」

 

「……そりゃ、まあ」

 

「行ったことは?」

 

「……ない」

 

「よし。法律的にラブホテルは風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律って法律内で定義される性風俗関連特殊営業扱いされて、十八歳以下の立ち入りは禁止されてる」

 

「じゃぁ入れないんじゃ」

 

「ただね、こういう施設は届け出とかが面倒だし、立てることのできる場所も限られてる」

 

「……まさか、偽装って」

 

「書類上は一般的な宿泊施設ということにしておいて、実際中身は受付で顔を合わさなかったり支払いが無人だったりする施設があるんだよ。怖いよね」

 

「……ええと、そこに泊まることって」

 

「宿泊者側からすると普通の旅館に泊まるのと変わらないよ、経験あるでしょ?」

 

私はないけどな。まあ今夜には一緒に夜更かしできるかもしれないからそれで我慢するか。

 

「あるけど……」

 

「ええと、この近くだと」

 

そう言って私はちょっと検索する。受付が無人かどうか、届け出されている場所じゃないかとか。幸いにもこの街には歓楽街があるのだ。こういうちょっと怪しいお店の一つや二つあるだろ。レビューで施設内の写真とかあるのもありがたいな。

 

「ここかな、候補としては」

 

そう言って私は一つの施設を見せる。見た目的にはデザインのいい小さめのビジネスホテルみたいなものだ。場所はさっきのカラオケがあった通りから平行に伸びる細めの通り。

 

「……その、和乃さんはこういう場所に行ったことがあるの?」

 

「……一回ほど、ね」

 

「……そう」

 

おっと、いたいけな少年の脳を破壊するようなことを言ってしまったかな。とはいえどうせ言わなくっちゃいけない事だし。黙って居続けることもできるけど、どうせどこかの周の私が口を滑らせるだろうから今言ってしまえ。

 

まあでもちょっと考えればそうか、時期的に考えれば私は中学生の頃にそういう施設に行ったことがあるっていうのと同義か。むしろそこを心配されている可能性は高いよな。

 

「大丈夫だよ、たぶん真山くんが思うような面倒事じゃないし、もう全部終わったことだから」

 

「……わかった」

 

真山くんからしたらそう言うしかないわけだけなのだが、本当に納得してくれていることを願うしか無い。

 

「で、どうする?行ってみる?」

 

「……うん」

 

「どんな設備があるかも確認しておきたいよね。場合によっては映画とか見てもいいわけだし」

 

というわけで私達は進路を百八十度変えて、もと来た道を戻っていく。ちょっとわくわくしてきた。ええ、これはちょっと危ないことで、あまりよろしくないことですけれども、少年少女の夜っていうのはそういうものじゃないですか。

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