今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 三回目 二十一周目

高校に入って最初の中間試験のテストを改めて確認しながら、私は少し笑みを浮かべる。

 

「……不随意のタイムリープを起こしてる」

 

そういう声が聞こえて返却された解答用紙から目を上げると、同級生である真山(サナヤマ)くんがいた。

 

「……外に出ようか。ここだとあれだし」

 

そう言って周囲を見渡す。彼の発言を確認するよりも、まずはこの疲れたというか病んでそうな雰囲気の真山くんをほっといたほうがまずいなと私は判断する。

 

「……話して」

 

「その前に、証明。これ、ワンタイムパスワード。それと小学三年生の時の本屋さんでの話を聞いた」

 

そう言って、彼は少し乱暴に文字列が書かれた紙を差し出す。

 

「ありがとう。少しだけ待っててもらえる?」

 

何も言わずに、彼はただ頷いた。落ち着け。示された証拠に矛盾はない。これらを否定する仮説は、少なくとも今すぐ思いつくものはない。

 

「……タイムリープ、ね。私と仲はいいの?」

 

信じるか。後悔は今じゃない私に任せよう。

 

「いろいろ、以前の周で話を聞いてもらった」

 

「それは、よかった」

 

私はかつて色々な人に助けてもらった。具体的にどうって言われると難しいけど、話を聞いてもらっただけのネットの知人でも私を随分楽にしてくれた。だから、ここは聞き役に回ろう。

 

「それで、何があったの?」

 

「少し前に、和乃さんから、僕だけが世界をやり直しているならって話をされて」

 

「……うん」

 

「色々な人を、それは和乃さんも含めて、殺しているんじゃないかって思うようになって」

 

「不随意、って言ったよね」

 

思い通りにできないこと。自分ではどうしようもないこと。それなのに悩むのは、まあ思春期だからと言っていいのかな。

 

「そう。でも、もしかしたら僕の意思で終わらせられるのかも」

 

「……終了の条件は?」

 

「前の和乃さんは、回数だって言ってた。けれども、それは僕は知らない」

 

事実上、未知の定数と扱うべきって考えたのかな。

 

「じゃあ、どうやって終わらせるの?」

 

「……死んだことは、まだなくて」

 

希死念慮。最近はないけど、私だって覚えはある。あれを気の迷いだとか言えるほど、私は昔の自分を軽蔑できない。

 

「……それは、辛いね。どう考えたか、教えてくれない?」

 

私は正直共感性とかがある方じゃない。痛みを堪えるような表情を浮かべる。相手がこれを悲痛だと思ってくれればいいけど。まあ半分ぐらいは合ってるよな。

 

「僕がループから出ない周では、僕が戻ったあとの世界はどうなるのかなって話をして」

 

「うん」

 

「何も無くなっているんじゃないか、って和乃さんは言ったんだよ」

 

「……うん」

 

危ない。一瞬、ああ言いそうだよねって口から出そうとしてしまった。

 

私は彼よりも人間関係に慣れてはいない。下手したら、私についてはループを繰り返している彼のほうがよく知っているところがあるかもしれない。

 

でも今はループで心が擦り切れた状態だ。それに他人に死なれていい気はしない。

 

「そう言われて、考えてた。何回ループしたのかわからないけど、その間、ずっと怖くて」

 

「……そうなんだね」

 

「たぶん、何も考えずにループしていた。そういうものなんだって思ってた」

 

いや、たぶんそういうものなんだと思うけれどもね。無理に意味を見出そうと意味がないし。なにより、不随意でいつ脱出できるかわからないなら舞台装置として使いにくすぎる。

 

それにたぶん、ループについてはその性質を把握できるぐらいには経験しているはずだ。出れる条件がわからないけどあるって言えるってことは、経験したことがあるってことなんだから。

 

「……考えが、変わったの?」

 

「もう少し一周一周を大切にとか思ったけど、そうできる自信がない」

 

まあ私だって今の時間が一回しか過ぎないと思っていても雑に消費しているしな。それに加えてループの経験があるんだ。そう簡単には変わらない。

 

「もっと軽く考えたら?」

 

「今までずっとそうだったんだよ」

 

「……そうか。でも、できないことをしようとするのは場合によっては上手くいかないよ」

 

特にこういう価値観の問題では、ね。どう感じるかはその本人に依るし。

 

「かも、しれない」

 

「だからさ、いつもやっていたみたいに過ごせばいいよ。いつもはどうしてるの?」

 

「……和乃さんと相談したり、他のクラスの子に話しかけてみたり、あとは、ぼんやりと考えたり」

 

「なら、そういうことでいいよ。私だったら相談に乗るから」

 

「……いつもそう言ってくれて、ありがとう」

 

「いいのいいの」

 

ここで私にとって一回恩を売れば、彼にとっては何十回も助けられたことになるんだろうなと思ったがそれについては黙っておこう。

 

「……ところで、和乃さんって恋人とか、いるの?」

 

「あー……その質問が単純な疑問なのか、それとも今後の関係変化を前提にしているのか、それに依るかな」

 

精神的に弱いタイミングで優しいことをしてもらった相手に抱く特別な感情については、まあ、知らないわけじゃない。その後の軽率な行動とそれに対する後悔のほうが記憶に新しいけど。

 

「……わかった。後者」

 

まあ、悪い気はしないけど私にとってはよく知らない相手だ。だから、ちょっと卑怯に逃げさせてもらおう。

 

「ループが終わったら答えてあげる。だからそれま

 

[二十一周目終了]

 

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