今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 七回目 七周目 二

「慣れた?」

 

私の後ろで部屋の扉を閉じる真山くんに私は声をかける。

 

「……まあ」

 

呆れとか諦観とか、そういう感じの雰囲気を漂わせながら真山くんが返す。

 

「それで、見たい映画とかはある?」

 

「……今回はちょっと、休みたい」

 

「まあそうか、ええと七回目ってことは……一日半。精神的な問題が出る可能性は十分にある、と」

 

「……うん」

 

「ならお風呂とか入りなよ、ここってどうなっているのかな……」

 

そう言ってから私はこんなことを何回言ったんだろうなとか考えてしまう。

 

結構大きかった。二人ぐらいは入れそうなやつ。ちゃんとシャワーもあるので問題ない。ちなみに構造上ベッドからお風呂の中を見ることはできなかった。まあそれは別にいいか。

 

「……真山くん?」

 

戻ってくると呆けていたので声をかけると、彼は驚いたように背中を伸ばした。

 

「……ちょっと変なことを思い出していただけ、大丈夫」

 

「私がなにかやらかした、とか?」

 

「……まあ、そんなところ」

 

「まあ場所が場所だからね……」

 

真山くんがどこまで嘘をつけるのかはよく知らないが、話したくないことぐらい生まれてもおかしくないぐらいの時間はループが始まってから経っているはずだ。

 

「……行ってくる」

 

「行ってらっしゃい」

 

さて、その隙にテレビの方の準備をしておこう。こういうところのテレビでは変なものが流れているかもしれないので電源を入れるとともに音量を下げて消音。

 

おっと、なんかちょっと色っぽい展開の映像が映る。ええとなんか設定で切り替えとかできないかな。あった。VODってやつだ。ひとまずこれに切り替えておいてから持ってきたケーブルをテレビの裏側というか横側に刺す。

 

「お風呂沸かしてもらえる?」

 

ちょっと扉の前で私は声を出す。

 

「シャワーで済ませるつもりだったんだけど」

 

くぐもった音が聞こえる。声をちょっと大きくするか。

 

「私が入りたいから。入りたかったら先入ってもいいよ」

 

「……そうするよ!」

 

「よろしく!」

 

この部屋の防音ってどうなってるんだろうな。まあ悪くはないことを祈ろう。では真山くんがのんびりしている間に私は横になっておくか。

 

一応それなりに寝たとはいえ、時間も経ってお腹もいっぱいになったので眠気がやってきている。というわけで外套を適当にそこらへんのハンガーにかけておいて、ちょっと服を脱いでおく。

 

ああそうだ、バスローブとかあるのかな。あったら着てみたい。そんなことを考えているとまぶたが重くなる。

 

柔らかいベッドに体重をかけながら呼吸をしていると、寝ていた場所が揺れた。薄目を開けると温かそうな真山くん。

 

「……起こしちゃった?」

 

「……寝てたのか」

 

結構時間を過ごしてしまった気がする。テンションが上がればいいのかもしれないけど、落ち着くと眠くなってしまうね。さて、私もお風呂に行こうか。

 

髪を触る。ちょっと脂っぽい手触り。できるだけ綺麗にしておくか。何があるかわからないわけだからね。

 

「あ、見たいものあったら先に見てていいからね」

 

私は服を脱ぎながらベッドにいるらしい真山くんに言う。角度的に見えないんだよ。

 

「さて、と」

 

シャンプーを適当に取って目を閉じ、頭皮を洗っていく。そういえばやっぱり大きなお風呂だよな。色々なことがされたんだろうな。余計なことを考えないようにしよう。

 

潔癖的なことを考えるなら、そもそもこういう場所は色々とあれなわけで。なので気にしない。気にしなければ問題は起こらない。丁寧に髪に指を通すことだけを考えろ。

 

湿った息を肺いっぱいに吸い込む。かじかむほどではないが冷たくなっていた指先に血が通っていた。やっぱり寒いと血流とか悪くなるよね。

 

手探りのままボディソープも取って、丁寧に洗っていく。腋とか鼠径部とか、汗の溜まりやすいところは特に。

 

太もも。脛。足の指先。本当なら除毛とかしといたほうがいいのかな。でもそのままのほうがありって話もあるわけで。そもそもそういうことにならないようにするべきだろ。はいはい、また余計なことを考えている。

 

全身を流す。深呼吸。大丈夫。私は冷静だ。こういうときに昔のトラウマが出てこないあたり、あの傷というか経験はもう過去のものになってくれたんだな。

 

湯船に身体を浸ける。あまりお湯が入っていないように見えたが、深いだけだった。ちょっと驚いたけど大丈夫。

 

全身が温まっていく。少し目を閉じると意識が落ちて大変なことになってしまいそうだ。そういえば私ってたぶん死んだことないんだよな。まあ実質毎周死んでいるようなものだと思うけど。

 

特に今回のループの仮説が成り立てば、それはほぼ確実になる。回数を予測できるってことは、それ以外の回数で抜け出すことはないってことと同じだ。

 

もちろん真山くんのループする能力が特に理由もなく起こるなら、特に理由もなく終わったり、特に理由もなく中断する可能性はあるわけだけど。でも議論しても意味がないタイプの可能性だよなこれは。

 

手と足の指を動かす。そろそろあがろうかな。

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