今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

112 / 200
高校一年生 七回目 八周目 一

意識が戻っていく。規則的な、聞き慣れたような、でもどこか馴染みのない音がする。

 

「あぁ……なに?」

 

寝巻き。電気がつけっぱなしの部屋。起きてすぐなのに妙にすっきりした頭。

 

スマートフォン。着信音。ああ、この音か。かけてきたのは真山翔太。

 

「泊まりに行ってもいい?」

 

「今日はたぶん親帰ってこないけど、日付が変わったら帰ってくるよ」

 

そこまで言って、なるほどループかと合点が行く。それにしても泊まりに来るとはね。何度か経験あるのかな。

 

「……それでもいい」

 

いや、この間を考えると初めてかもしれないな。まあいいや。片付けとかは面倒だし、今からやったって限界があるのでしない。足の踏み場ぐらいはあるしね。

 

「はいはい、じゃあ私はえーっと……」

 

通話越しに言いながら私は台所に入り、冷蔵庫を開く。ええと野菜はあって、豚バラ肉がある。これを適当に炒めてしまうか。ご飯は冷凍のがストックあるからそれでいいとして、だ。

 

「卵って買ってきてもらえる?その分のお金は出すから」

 

「……いいよ、それぐらい奢る」

 

「何周目?」

 

「八周目。折返しになる」

 

なら全部で十四か十五周か、と考えながら浴室の方に行く。お風呂は洗ってないから洗わないと。ループの周数がわかっていることには今更驚きはしない。

 

「それじゃあ適当に待ってるね。ご飯食べたりお風呂入ったりするつもりだけど、時間は大丈夫?」

 

「明日の三時半ぐらいまでがループ」

 

「……なるほど」

 

だいたい事情は飲み込めた。というわけで家にやってくる真山くんは無視して私は私のことをしよう。お腹が空いたりリラックスできなかったりして辛い思いをするのは真山くんだからね。

 

お風呂を洗い、キャベツとお肉をざく切りにしてから先ににんにくを切るべきだったなと後悔していたら真山くんが来た。

 

「……こんばんは」

 

「外寒かったでしょ?私の部屋で待っててもいいけど」

 

「……何してるの?」

 

「晩ごはん作ってる。真山くんはもう食べたでしょ?」

 

「……うん」

 

「まあ夜食に食べたいなら食べていいよ」

 

実際、もし残っていれば明日の朝食と夕食にもなるのだ。ちなみに昨日作ったれんこんと人参と鶏肉をなんかいい感じに煮たやつは父が食べたのかなくなっていた。あれ結構美味しくできた自信作だったのに。

 

電気ポットに一人前ぐらいの水を入れてスイッチオン。火をつける。油ににんにくが跳ねて、香ばしい匂いが漂う。おっと、換気扇を回しておこう。ちょっと火加減を調整。

 

冷凍庫からラップに包んだご飯を出して電子レンジへ。焦げないように薄切りのにんにくをひっくり返す。この後加えられる熱も考えればこのぐらいでいいか。

 

さて、あとはちょっと急ごう。切っておいた具材を入れて火力を強める。本当はもっと色々入れたかったのだが、冷蔵庫から発見された使いかけのもやしが案外量があったのでバランスも考えるとあまり彩りがないものになった。

 

オイスターソースと醤油をなんかいい感じに入れる。あまり強くない腕力でなんとか深めのフライパンを振るいながら、全体に火を通していく。ちょっとこぼれたもやしは適当に指でつまんで戻しておく。大丈夫、別にお腹壊したりとかそんなことはない。

 

「……卵、要る?」

 

声がしたので横を向くと真山くんが私の調理の様子を見に来ていた。他人に見せられるほど綺麗な調理場じゃないんだけれどもな。まあ別に見られて困るものもないからいいけど。

 

「買ってきてくれたの、ありがとうね」

 

私はパックを受け取って、卵を一つ出して残りを冷蔵庫に入れておく。

 

「別に、いいよ」

 

「あーなら水の量もう少し多くしてもよかったかな……」

 

別の鍋に顆粒の鶏ガラスープを入れてお湯を注ぐ。これが溶けて少し冷めるまで待機。っと、炒めものが焦げないようにしないと。

 

全体に茶色が回って、いい感じになった。食べる分だけを取って、残りは粗熱が取れたら冷蔵庫行きだ。おっと、胡椒をかけておこう。炒めているときに入れたほうが香りが出るのだが忘れてしまったものは仕方がない。

 

スープにするつもりの液体の方はたぶん大丈夫な温度になったので片栗粉を袋から適当に取って投入。ここで早く入れすぎるとダマになります。お玉で適当にかき混ぜて、スープに使うお椀に片手で卵を割り入れる。

 

「……上手だね」

 

「やれば慣れるよ」

 

箸を出してもいいが面倒なので、お玉で適当に白身を切ることを意識して卵をかき混ぜる。いいんだよ洗い物が少ないほうがいいじゃないか。まあシンクには今朝のご飯食べた時のが残っているんだけれども。

 

鍋の下の火をつける。鍋肌についた雫が沸騰したところで火を止めて、ゆっくりと卵を垂らしていく。あまりふわふわにできないんだよね。もっと量を作ったほうがいいのかもしれない。

 

まあふわふわなやつが食べたければインスタントのやつでいいんですけれどもね。さて、というわけで今日の私の晩御飯は出来上がり。電子レンジからご飯を取り出して、お風呂を沸かしてからゆっくり食事にするとしよう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。