今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 七回目 八周目 二

鼻歌交じりのお風呂上がり。バスタオルで髪をワシャワシャとしていると物音がした。想定していなかったので一瞬びっくりして警戒してしまう。

 

「……何やってるんだ、私は」

 

誰かと思ったが、真山くんだろうな。時刻はまだ十二時を回っていない。父が帰ってくるにはもう少しかかりそうかな。

 

「あ、寝巻き忘れた」

 

洗濯機に突っ込んだものをまた着るか少しだけ悩んで、変えることにした。そもそも下着ぐらいは新しくしないとまずいだろ。あと数時間しか着ないとはいえ、一応身体をちゃんと綺麗に洗ったわけだし。

 

雑に腰にバスタオルを巻き付け、バスルームの扉を開けて左右を確認。真山くんは部屋にいるな。というわけで特に面白いハプニングもなく、着替えを回収してさくっと身につけた私は部屋に戻ってきた。

 

「……おかえり」

 

「どう?面白い?」

 

真山くんが読んでいるのは古本屋で見つけたアンソロジーみたいなものだ。そこそこ面白いものもあったが、かなり玉石混交な感じだったよな。それなりに昔の記憶なのでよく覚えていない。

 

「……まあまあ」

 

「ま、特にできることここにはないからな……」

 

パーティーゲームとかは友達がいなかったので持っていない。本はそれなりにあるけどこれは複数人プレイには対応していないからな。となるとあとは互いに一人で本を読むぐらいしかここでやることはない。

 

「今まで何してたのさ、退屈じゃなかった?」

 

「……夜の街でいろいろと」

 

「なるほど、面白いことを私とできた?」

 

青少年が夜の街に滞在できる時間には限界がある。となるとまあ、今の私にとってはアイデアの段階でしかないがあそこに行ったか。

 

「……それなりに」

 

「そう」

 

寝てしまったのでまだ眠気は来ていない。何をしよう。積んでいる本でも読もうかな。ベッドから降りずに文字通りに積まれている山を見て、読んでいない本を探す。

 

「……読むんだ」

 

「どうして?」

 

「その、いつもの和乃さんなら今読んでもどうせなくなるからって言いそうで……」

 

「今日はそういう気分じゃない、でいいかな」

 

「……わかった」

 

真山くんを見る限り、私は結構ループごとに調子が違うらしい。

 

ページが進む。一章を読み終わったので少し休憩。

 

いや別に、真山くんと同じ部屋にいるのに特に話したりとかしてないなって思っただけです。特にそういうことをする必要もないし、真山くんが求めなければしなくてもいいんだけれどもさ。

 

それにわざわざ私の家に来たってことは、夜の街ではできないことがあったわけで。なに、私の父に会うとか?あまりおすすめはしないが。

 

うーんどうだろ、色々言われたりするかな。基本的に我が家は不干渉の家庭である。そこまで崩壊してるとは思わないし、誰かに負担がかなりかかっているとかもないはずだけどさ。他の家庭の例をあまり知らないのでなんとも言えないが。

 

義務教育でもないのに、お金の心配をせずに高校に行けるのだから家事ぐらいはやるけどね。あと純粋に両親の生活ペースが高校生のそれとマッチしないという問題もありますが。

 

部屋には時計はないので、スマートフォンの電源を入れる。時間は日付が変わってしばらく。

 

鍵が開いた音がした。廊下に人が入っていっている。本を閉じて忍び足で真山くんの近くへ。

 

「父に会ったほうがいいかな」

 

もしなにか前の周であったら真山くんが知っているだろう、という予想に基づいた質問。

 

「……わからないよ、いつもはどうしてるの?」

 

あら、知らないのか。

 

「普通は入ってこないよ」

 

そんな話をしていると、扉がノックされる。珍しいな。普通は電気がついていようが無視しているのに。

 

「へーい」

 

まあ顔ぐらい出すか。相変わらず冴えない細めの中年男性が現れる。

 

「ユイ、そこにいるのは同級生か?」

 

おっと、この扉の角度からは真山くんは見えないはずなんだがな。何で気がついた?靴とか?確かにありそうだ。でも靴のサイズから同級生って割り出すのは難しいだろ。

 

「ちょいと泊りがけで勉強してたら遅くなってね、まあ私は床で寝るよ」

 

「……そうか」

 

「一応お風呂はまだギリギリ温かいはずだよ」

 

「早く寝ろといつも言っているだろ」

 

「色々高校生にはやることがあるのですよ」

 

そんな話をしていると、真山くんが私の隣に立って礼をした。

 

「……どうも」

 

「……どうも」

 

ちなみに父は私ぐらい人見知りだ。なにかいたたまれない雰囲気が父の方から漂ってきたので私は扉をすっと閉める。

 

「……あれ、和乃さんのお父さんって外国の人?」

 

確かにちょっと顔の彫りは濃いし、よく聞くと発音に癖があるけどわかるもんなのかな。私は見慣れているのでわからん。

 

「うーん、これが実に面倒なことに戸籍は日本で血筋は東南アジア混じりで若い頃はインドのほうにいて……」

 

「和乃さんは?」

 

「私は生まれも育ちもこの家だよ」

 

「もしかして、和乃さんが英語得意なのって」

 

「父の蔵書を読んでたのはあるね」

 

「なるほどね……」

 

まあ、保護者から一応許可が出たので今夜はのんびりするとしよう。真山くんのほうの親の許可は取ってない気がするけれどもな。

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