「そういえば、和乃さんの家ってどういう感じなの?」
真山くんが椅子に座って言う。
「どう、って言われてもな……説明が難しい」
寝っ転がりながら読んでいた本を一旦閉じ、私はあぐらをかいて座って考える。
「……今したほうがいいかな」
私はちょっと考える。場合によっては真山くんに何度も聞かせることになるし。
「後でもいいけど、どうして?」
「私が何を言ったかは覚えておきたくてさ」
もし無意識に嘘とかを言ってしまって、それを複数の周で聞いたことの矛盾として真山くんが受け取って、面倒なことになる可能性はありそうだ。
別につかなくっちゃいけない嘘があるとか、絶対に嘘がバレたくないとか、そういう意味ではありませんよ。ただ、人間はどうしても記憶とかに食い違いが生まれるもので。
「……その、困ってるなら」
「いやいいよ。ええと今日は母が出張でいない、父は残業……いや厳密にはフレックスタイム使ってる夜型の人なんだけど、そういう話って聞いた?」
首を振る真山くん。となると下手するとあれか?今日の夜は家に私一人だけとか言って過去に誘ったりしたのか?いやでも父が帰ってきても驚いた素振りもなかったし言っていたか?
「父方のおじいちゃんが外国人で、おばあちゃんと結婚する前から世界各地を転々とする仕事をしてて、その流れで父も貿易系のところで……あまり詳しくないけど、色々している」
「どんなものを売ってるの?」
「売るっていうか取引の仲介がメインかな。技術系で……。あまり家族にも言えないものを取引している」
「……危なくないの?」
「いや別に非合法ってわけじゃないよ、むしろ当局にちゃんと監視されているというか、当局との取引もあるっていうか」
「……そうなんだ」
「まあぶっちゃけちゃうと特殊な軍事とか防衛とか原子力とか核とか宇宙開発とか、そういう方面に使える精密部品とか技術とかのパッケージ。まあ父のメインは海外とのやり取りの窓口だけど」
「通訳?」
「非常にざっくり言ってしまえばそうだね。あとはその繋がりで父の部屋には海外のSFとかいっぱいある」
「そういうのを読んでたの?」
「まあね、昔は絶対に部屋に入るなって言われたものだよ」
「……どうして?」
「そうしたら入りたくなるからって理由。あと入った時でも何かを動かしたりとかをほとんどしないからって」
「……和乃さんの性格は、お父さんに似たのかな」
「まあ母とはあまり会わないからね……」
「そうなの?」
「国内メインだけどあっちこっち飛び回ってる人で、今日は……どこだったかな。GPS見ればわかるけど」
「そこまでしなくていいよ」
「そう」
まあそりゃ知人の親の位置座標を知ったところでどうという話だが。
「……お母さんは、どういう人なの?」
「んー、端的に言えばちょっと思想が危ない人」
「思想が危ない……」
「政治屋?」
「政治家じゃなくて?」
「もっとこう……反社会的というか……」
「なんかいい言い方ないの?」
「あんましない」
「そっか……」
「いい人だよ?いい人なんだよ?」
一応母の稼ぎで高校行ってるところがあるのでとやかくは言いませんけどね、なんていうかこう、考え方が合わないことがあるんですよ。母もそれは自覚しているんだけれども。
「……大変だね」
「まあその両親との繋がりも薄いんだけどね。小学校の頃までは母も基本家にいてくれたけど」
「和乃さんが大きくなったから出張とか多くなったの?」
「そんな感じ。私だけ話すのも癪だし、真山くんも……いや、話すのはまた後でいいか。あと二日間ぐらいあるんでしょ?」
「……そうだね」
「あとは私の計算が間違っていたら早く終わるかもしれないし、お金かかったり警察に補導されたりする可能性のあることはあと数回以内にしなよ?」
「……うん」
真山くんの言葉を聞いて、私はまた視線を本に戻す。
そういえば、真山くんはループの時間を私とかなり過ごしているんだよな。いや今回みたいな例ならともかく、もっと他の人もいるんじゃないか?
「他の人とは夜遊びしないの?」
「……いきなりさ、友達から深夜に出かけようって言われて付き合う?」
「……相手にもよる、かな」
私がそういう行動をするとしたら、まあその時の状態にもよるけど下手すると跨線橋から飛び降りたりしかねない。そういうのを止めれたかもしれないのに後悔を引きずるみたいなことはしたくないしね。
「……僕には、あまりそういう人が和乃さん以外にいなくて」
「これについては作ったほうがいい、とは言えないな……」
声をかけたら夜遊びに付き合ってくれる人、まあいい友達ではないのは間違いないな。私は悪い人なので問題ないけど。
あくびを一つ。結構寝たのに眠くなっているな。終わるときにカウントダウンされるとかも怖いし、寝てしまうか。
さすがに真山くんでも、寝ている私をその親が近くにいる状態であれこれすることはないだろう。ないよな?お腹触るぐらいはいいよ?
本を置き、枕にうつ伏せになる。息をゆっくりとする。意識が遠のいていく。