今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

115 / 200
高校一年生 七回目 十一周目 一

目を開ける。今の状態を確認する。頭は少し冴えている。

 

スマートフォンを手に取る。時間は十一時ちょっと前。おかしいな、私は少し仮眠しようとしていたのだが。なんでかなり時間が経過しているんだ?

 

立ち上がる。着ているのは部屋着というか寝巻き。ええと、記憶を辿っていけ。

 

やけに疲れて帰った。お風呂もご飯もできず、酷い眠気をどうにかするべくベッドに倒れ込んだ。寒かったので服は朝に脱いで洗濯機に突っ込まれていたやつをそのまま着た。さすがに下着のまま寝るのは夏だけです。ぎりぎり秋。

 

ああそうか、それでここまで倒れてしまったのか。こんなことをしてしまうと体内時計が完全に狂うんだよな。直すためには週末の寝溜めが必要である。

 

「……ん?」

 

流れるように自然に取ったスマホに着ていた通知。真山くんから一言。

 

『起きてる?』

 

私が今まで寝ていたことを知っている。アプリを開いて確認。受信したのは一時間ぐらい前だ。これで既読はついたけど、相手が見ているかどうかは別の話。さて、少し推理の時間。

 

何でこんなメッセージを送ってきた?ちなみに一番可能性が高いのは真山くんがループ中だということである。まあそれ前提で返信すればいいか、と思って手を止める。

 

もし必要なら、私の返答に必要な情報を一緒に送ってきているはずだ。三周目以降で私と連絡が取れていれば何周で終わるかの推定値を出しているはず。

 

ということは、もしループだった場合は純粋に私が起きているかどうかを確認したいだけか、あるいはそれすら言う気力がないか。仮定に仮定を重ねるのはちょっと危なすぎないか?とはいえ今の時点でできる推測も限られるわけで。

 

ともかく返信が遅れても大きな問題はないはずだ。最大で四十周ぐらい。明日の学校で顔を合わせないということは最長で十二時間ぐらいか?その場合は全部で十周ちょっと。しかし考えすぎても限界があるな。私に推理は向いていないのかもしれない。

 

『起きたよ』

 

結局色々悩んだあげく、私は短い返信をする。いいんだよ考えるより行動することが時には正解の場合がある。今回がそうかは知らない。

 

『やっぱり寝てたんだ』

 

一瞬で既読がつき、間を置かずに真山くんがメッセージを送ってきた。なんか待たせてしまって申し訳ない気分になる。やっぱすぐに返信するべきだったな。

 

『面倒なら通話するけど』

 

頭の中で優先順位をつけていく。最悪面倒だったらお風呂も洗わず、夕食を冷凍庫のごはんにふりかけで済ませてもいい。これを日常的にやったらダメだが、一回ぐらいはいいだろう。一応冷蔵庫に食べるものぐらいはあるけどさ。

 

『かけていい?』

 

『いいよ』

 

送信ボタンを押して一息つくと、着信音がした。覚悟していたから特にびっくりするとかはない。ええ、緊張とかもしていませんとも。

 

「こんばんは」

 

真山くんの声。ここから感情を読み取るのは難しそうだ。

 

「なに?」

 

「この後出かけるってできる?」

 

外出の誘い。今の時間は十一過ぎ。条例的に行ける場所は少ない。それでもこう聞いてくるってことは、何かあるんだろうな。

 

「……どのくらいの時間?」

 

「あと四時間ぐらい」

 

「……ちょっと待って」

 

終わるのは三時ぐらいになるわけだ。丑三つ時というやつ。頭の中の天秤に考慮すべき物を載せていく。空腹。真山くんとの関係。情報不足。真山くんとの夜遊び。準備不足。真山くんからの持ちかけ。

 

「……和乃さん?」

 

「ごめん。目的は?」

 

面倒なので追加の情報を求めることにした。いや、選択を先送りしたとかではないですよ。あと何周目かは覚えていないかもしれないので今は聞かないことにする。

 

「……特にないよ」

 

特にない人がそんなことを言うものかね。私はそういう心理についてそこまで詳しいわけではないけれども、まあちょっと不安定な時期かな?なら変わらない私がどうにかするしかないか。

 

「私の父が帰ってくる時間を知ってる?」

 

「……うん」

 

ほう。つまり私の家には来たくないってことかな。父の存在を除けばそれなりに良い場所だと思うんだけど。ちなみに代替案はちょっと未成年二人が入ると法的に問題なくとも倫理的にちょっとあれな場所だ。

 

「いいよ、着替えるから少し待って。それとどこに行くの?」

 

時間はそこまで残っているわけではない。外は寒いんじゃないかな。ならしっかり着込みたいところだ。

 

「……考えてないけど、一緒にいたいなって」

 

「なるほどね、話なら聞くよ」

 

まあ別にいいんだけれどもね、一度ぐらいは目的もなくループを過ごしたって問題ないだろう。そういう時間を過ごすのも悪くない。

 

「……ありがとう」

 

「どこで待ち合わせる?」

 

「僕が和乃さんの家まで行くよ」

 

真山くんの家からここまでの時間を思い浮かべ、そこから着替えにかかる時間を引き算。うーん、負になってしまった。

 

「……なら、のんびり歩いてきて」

 

「……うん」

 

通話が切れる。さて、ちょっと急ぎますか。ご飯はまあどこかで買い食いしたりすればいいでしょ。どうせ寝てたわけでそこまでお腹が空いているわけでもないしね。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。