今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 七回目 十一周目 二

「で、どうするのさ」

 

私は真山くんの隣を歩きながら言う。隣を走る車はほとんどなく、人についてはしばらく見ていない。

 

「……どこが、いいかな」

 

「あてはないの?」

 

「一つあるけど、あそこはちょっと……」

 

「そう」

 

まあ大方あそこだろうな。ちょっと問題があるだろう。でももうそれがありそうなエリアも遠くなってしまった。

 

「和乃さんは、なにかない?」

 

「ただ夜の街を歩く、っていうのもいいと思うよ。明るいほうがいいだろうから大通りとかになるけど」

 

「そうだよね……」

 

頭の中でちょっと計算をする。ループが終わるまでの時間はさっき聞いたところによると三時間。十五キロメートルほどか。地図でも見たほうがいいかな。

 

「まあでも、ともかく何も考えずに歩いたほうがいいよ。そういう時ってない?」

 

「……二周目」

 

「ほう」

 

「自転車に乗って、ひたすら走った」

 

「私は追いつけてた?」

 

「ちょっとふらついてた」

 

「だろうね」

 

たまに図書館に行く時ぐらいは自転車を使うようにしているが、そうでないと乗らないからな。引っ越す前は家にあったのだが。

 

「でも、今から自転車取りに行くのもな……」

 

今私達が歩いているのは真山くんがかつて私と自転車を飛ばしたのとは別の方角。話をしながらだらだらと歩いていたら、全然知らない場所についてしまった。

 

「……だよね」

 

「まあ疲れたら休憩すればいいよ、この道沿いならコンビニぐらいはすぐ見つけられるだろうし」

 

深夜にはここらへんの通りは一部の輝く看板を残して暗くなっている。遅くまでやってるお店とはいえ、ここらへんで日付をまたいで営業しているお店はないようだ。まあ開いていても入れないんだけれどもね。

 

「で、何を悩んでるの?」

 

「……よくわからなくて」

 

「今周は十一周目、だったよね」

 

「……うん」

 

「で、色々聞いたけど数が合わなかった。一回か二回、私に言えないことがあった?」

 

「……家で、だらだらしていただけ」

 

「じゃあ違うか、ごめん」

 

「……それ、だと思う」

 

「ん?」

 

私はどうにも飲み込めないので、真山くんの話に思考を向ける。ちょっと疲れはあるが、まあ頭はちゃんと回っていますとも。

 

「和乃さんといないと、なんていうか、いけない気がして」

 

「んなことあるわけないでしょ、最初の頃の私を無視して他の同級生と楽しく話していていた真山くんはどこに行ったのさ」

 

「そんなことあったっけ?」

 

ちょっと心外そうな声色で真山くんが言う。なんていうか、浮気を疑われた人ってこういう反応するのかな。

 

「一番最初。夏休みの前」

 

「……あった。思い出した」

 

「そのくらいでいいと思うよ?夜遊びとは言わなくても、真山くんの話を聞いてくれる人とかいないの?」

 

「……いる、けど」

 

「私は自分で言うのも何だけれども、かなり面倒くさい人だよ?」

 

「……知ってる」

 

「真山くんはそれでもいい、とか思ってるんだろうけどさ」

 

少し大股で歩いて追い越してから、足を止める。真山くんも止まってくれた。

 

「共倒れになりたくなかったら、私から離れたほうがいいよ」

 

真山くんは少しだけ、うつむくように視線を下げる。もし私の勘違いとかだったすごい恥ずかしいなこれ。ただ、誰にでも刺さる言葉ではあるんだよね。

 

ええ、具体的には私の経験由来ですよ。恋みたいなものをすると、本当に周りが見えなくなる。なった。

 

そうして変な行動でも、相手が誘ってきたからって理由だけでついていってしまう。いった。いっている。

 

「私は真山くんにそれなり以上の好意を持ってるし、好きだって言えるけどさ、だからといってただでさえループっていう重荷を抱えている真山くんが余計なものまで背負う必要はないからね?」

 

これで真山くんが鬱憤を晴らすためだとかストレスの解消のためだとかの行動を取っていたなら、私はまだ許容できただろう。最後の周にそれをしないって倫理感を超えなければ、私はそもそも何をされたか知りようがないし。

 

でもこうやって、ただ悩むだけ悩んで、それでなにかに溺れたりもせず、正面から考え込んでしまうのはよくないよ。たぶん。もっと気軽に誰かに相談したり、面倒ごとから逃げたりするべきだ。私はできなかった。

 

記憶にないけど、真山くんが話しかけてくれなかったら私はまだ色々と悩んでいただろう。だから、別に私からすれば多少の無茶は問題ないわけで。

 

「……和乃さんってさ、昔なにがあったの?」

 

「くだらない話だよ?今から思えば幼稚な恋をして、抱かれて、別れた。高校生ぐらいの歳なら珍しくもないとまでは言わないけど、探せばあるような話だよ」

 

口に出して言う抵抗は、思った以上になかった。まあ背景を説明すると少し面倒になるけど、それでも解決に手間がかかる家庭内の問題とか、消えることのない記録とか、そういうものはない。私だけの問題に収まってくれている。

 

「……それは、わかってるけど」

 

「まだ終わりまで時間があるし、歩く?」

 

「……うん」

 

真山くんは頷いて、私の隣に立つように一歩踏み出した。

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