今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 七回目 十七周目 一

意識が戻っていく。規則的な、聞き慣れたような、でもどこか馴染みのない音がする。

 

「あぁ……なに?」

 

寝巻き。電気がつけっぱなしの部屋。起きてすぐなのに妙にすっきりした頭。

 

玄関のチャイム。ああ、この音か。父が帰ってきたのかな?鍵でもなくしたか?

 

「はいはい、ちょっと待ちなよ」

 

ふらつく足取りで私は念のためにとドアスコープを覗き込む。あれ、なんで真山くんが?

 

まあいいか、別に家に招いたところでそう問題を起こすような仲ではないし。

 

「こんばんは、本を借りに来たよ」

 

「お疲れ様。今どのくらい?」

 

「今周で終わり、のはず」

 

おや、ということは今の私の記憶は引き継がれるのか。というか少なくとも回数予想は下の方に間違ってはいなかったんだな。安全性を考えれば十分使えるかもしれない。

 

「いいこと?」

 

「……どうだろ」

 

まあそういうわけで真山くんを部屋に招く。

 

「前に私におすすめされた本とかあった?」

 

「うん、読みかけのがあるからそれにする」

 

「そっか……」

 

いや別に、真山くんにおすすめの本を紹介するっていうのができなくて悲しいとかそういうわけではありませんとも。あとこの心のマイナス感は空腹だと思います。

 

「で、借りたら帰るの?」

 

「……そうだね、帰らないと和乃さんのお父さんと会うし」

 

「見たことある?」

 

「少し話した。海外に長くいた人なんだっけ」

 

いや父よ、娘が深夜に連れ込んでいた相手に対して話した程度で済ませるのか。まあでもそうなってもおかしくはないよな。

 

「今でもたまに行くけどね」

 

「……和乃さんのお母さんも、家を開けること多いんだっけ」

 

「比較的、ね。今日もだし」

 

「……重なること、あるの?」

 

「まあ、真山くんがループに巻き込まれるのと同じぐらいの頻度では」

 

「……そうなんだ」

 

「なので重なることは期待しないほうがいいよ」

 

そこまで言ってから、場合によっては面倒になりかねない情報を渡してしまったなと思う。まあ今更だよ。真山くんに対して口が軽くなるのは今周の私に限らないはずだし。

 

というか別に重ならなくても関係ないのでは?ループ中以外は真山くんは私に関わらないとか考えてないか?うん、まずいな。

 

「じゃあ私の方はご飯とかお風呂とかしてくるので。帰るときは鍵閉めなくていいよ」

 

「……いいの?」

 

「閉めれないでしょ?」

 

「……それもそうだよね」

 

真山くんに合鍵を渡すほど、我が家には鍵は余っていないのだ。いや確かどこかに隠してあるっていうのは聞いたことあるな、どこだっけ。ガスメーターボックスの裏とかだっけ。あとで確認しておこう。

 

「……あとさ」

 

「ん?」

 

「和乃さんの作った料理、食べていい?」

 

「もう晩ごはん食べたような時間じゃないの?」

 

「……前は食べそびれて」

 

「ま、別にいいよ。なに作ってた?」

 

「野菜炒めみたいなやつ」

 

「んー、まあ冷蔵庫にありそうなものだとそんなものか……」

 

「あ、あと必要なら卵を買ってくるけど」

 

「切らしてた?」

 

「みたい」

 

いやぁこういう時にタイムリープで記憶を持ち越せるって便利ですね。非常にしょうもない使い方だと思う。もっと有用なものを運べよ。

 

というわけで真山くんが買い物をしてきてくれている間に、私は私のことをする。優先順位をつけるのが難しいな。お風呂を先に沸かすと微妙か。ならご飯食べる前に沸かせばいいな。

 

楽しい料理の時間。そうか、これ真山くんも食べるんだ。なんかちょっと緊張するな。事前に材料を確認しておこう。

 

キャベツと使いかけのもやし。豚バラ肉。ええと、なにか彩りとかほしいな。ちょっとしなびているけどこの人参を入れてしまうか。あとにんにく。おいしいので。

 

にんにくを薄切り、チューブの生姜を少々。低温の油でじっくりと加熱。

 

その間にキャベツとお肉をざく切り。人参は固めなので火が通るように薄めの短冊切りで。ちょっと焦げそうだったので火を止めておく。ああそうだ、ご飯も温めておかないと。

 

真山くんがちょっと食べるかもしれないので、大きめのラップに包まれた塊を取り出して電子レンジへ。加熱は二分間ぐらいでいいか。適当だよこんなものは。

 

具材を投入。火を強める。あまり強くない腕力でなんとか深めのフライパンを振るいながら、全体に火を通していく。

 

普段だったら味見とかしないのだが、一応ちゃんと確認する。うん、オイスターソースベースってことしかわからないな。隠し味の顆粒鶏ガラスープの存在もわからないぐらいに私の舌はだめなのだ。

 

「買ってきたよ」

 

真山くんが卵のパックを調理台に置いてくれる。

 

「忘れてた」

 

鶏ガラスープの元がだぶってしまったな。まあでも炒め物の方は隠し味だし、いいでしょ。たぶん大丈夫。

 

鍋にお椀一杯半分のお湯を沸かして、顆粒を入れて混ぜる。卵は一個でいいか。ああ片栗粉入れないと。っと、炒め物の火も消す。

 

「上手だね」

 

「いやこのあたふたしているのは手際が悪いだけだよ、本当はもっとちゃんと計画的にやる」

 

やっぱり見られて緊張とかしているのかな。まあいいや。ああそうだお風呂も沸かさないと。考えることが多すぎてパニックになりそうだ。まずは一つ一つ片付けていこう。

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