高校に入って最初の中間試験のテストを改めて確認しながら、私は少し笑みを浮かべる。
「
そういう声が聞こえて返却された解答用紙から目を上げると、同級生である
「……なに?」
真山
「少し、話したいことがあって。和乃さんからは奇妙に思えるかもしれないけど」
「……うん」
なんだ?何かやらかしたか?英語の質問でもするのか?ともかくひょこひょこと真山くんの後ろをついていく。
「まず、ありがとう、和乃さん」
「何もした記憶、ないけど……」
「ええとこれ、ワンタイムパスワード」
「……何の、って質問するのはもう野暮だったりする?」
そう言いながら私はスマホを取り出してゲーム通販サイトのアプリを開く。文字列が切り替わって、真山くんが差し出した紙の通りのものが出てきた。
「ううん、僕はともかく、和乃さんはまだずっと最初のはずだから」
「……タイムリープ、でいい?」
「うん。以前の和乃さんが言うには不随意なものだって」
「……反復性、か」
繰り返し発生する、原因不明で終了条件が不明の意識のみの巻き戻し。もし私だったらタイムトラベルとタイムリープは使い分けるはずだ。
「そう。で、その中でタイムリープについて話をしたんだ」
「……早口になったりしてなかった?」
「楽しそうに話してたよ」
なんか一気に恥ずかしさが込み上げてくる。いやここにいる私自身は何もしてないはずなんだけど。なんて言えばいいのかなこれ。共感性羞恥とはまた違いそうだし。
「で、その私がどうしたの?」
「ああそうだった。僕にとって巻き戻っても、和乃さんをはじめとして他の人達はどうなるんだろうかって感じになって」
「存在しなくなるか、真山さんの消失になるか、あるいは何事もなかったかのようにその周の真山さんを継いでいくのか、かな」
「そこでさ、実は僕がループする度に僕以外が死んでいるじゃないかって話になって」
「その話をした私は碌でもないね。配慮ってものができていない。反省すべき」
思考実験はそれをちゃんと実験だと思っていないと意味がないのだ。それが与える影響を考えるのは倫理的なものとしてあるだろう。それを怠ったとしたら、言い方を適切にしなかった私が完全に悪い。
「でも、そういう見方もできるんだなって。その後和乃さんには慰めてもらって、他の人とも話して気分転換もできたし」
「……私が、ね」
どうだろう。上手くやったのかな。そういう経験があまりない。他人に感情的に頼られるのは正直怖い。
だから、もしそういう私がいたとしたらかなり頑張ったんだろう。偉い、って褒めてあげたいけどそれは私なんだよな。私が認識できない私がいっぱいいるというのは変な気分だ。
「だから、ありがとうって言いたくて」
「……どういたしまして。その私には直接伝えられないから、私がかわりに受け取っておくよ。とはいえループから抜け出した時の私はこれを受け取れないのか」
もし回せるならその人に回しておきたいよな。もしループで巻き戻るとしたら私が連続して存在できる保証はないわけだし。
「それで、あとどれぐらいで出れそうなの?」
「さあ。そろそろかもしれないし、まだ数割かもしれない」
けろっと言うけど、いつ終わるかわからない繰り返しって精神に変な影響与えないかな。スキナー箱っていう言葉が脳裏によぎったけどたぶん違う。ガチャではない。
「……出れる回数に、規則性は?」
「基本的にループが長いと周の数は少ない。今回は十五分ぐらいだから、たぶん多め」
「今が何周目か、覚えてる?」
「覚えないようにしている。でも、三十ぐらいだと思うよ」
ループ中の精神的負荷は、そりゃ少ないほうがいいか。
「ワンタイムパスワード覚えておくの、辛くない?」
「もう覚えちゃった。いくつか見たから、話すタイミングに合わせて使ってる」
「器用なやつ」
まあ、ちゃんと自分で回復できるのはいいことだ。どうせ私のことだし、大したことは言ってないでしょ。
「……私でよかったら、相談は聞くよ」
「何度も言われた。何度も言うけど、ありがとう。本当に感謝している」
そう言って、彼は深々と頭を下げた。遠慮することすら申し訳なくなりそうなほどだ。
「それと、ループが終わったら終ったで話をまたするつもり」
「……証拠は出せる?ワンタイムパスワードだけだとその時間じゃないと無理なはずだけど」
「和乃さんが他の人と話したことがないっていう秘密を聞いた。だから大丈夫」
「何番目か、聞いた?」
私がこういう時に使う秘密があるとすればあの三つだろう。
「三番目。本屋さんの話だった」
「……なら、いいか。楽しんでる?」
もし楽しめなかったら、何か出た時の希望になりそうなものでも出そうかな。出せるものはぱっと思いつかないけど。
「うん。だから、今の和乃さんに言うのも何だけれども楽しみにしてて」
「それを聞くのはたぶんこの私じゃないけど、きっと楽しむから安心し