今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第八幕間 四

お化け屋敷の図面が作られて、空き教室から通路のために持ってこられた椅子や机が置かれ、窓には黒く塗られた段ボール箱と隙間を埋めるアルミホイルが貼られていく。

 

「……まったく、下手なことを言うものじゃないね」

 

そんな頑張る同級生たちを背に私と真山くんが向かうは地下倉庫。

 

「和乃さんだから信頼されているんだと思うよ」

 

「まあそうかもしれないけどさ」

 

今までの流れはこう。先日、かつてのクラスが使ったものが倉庫に眠っているんじゃないかということを考えた。真山くんに言った。真山くんは文化祭委員かなんかに言って、それを聞いた担任の先生はベテランの先輩に聞いた。

 

そしてそのベテランの先生は私の人となりをそれなりに知る人だった。別に授業を持ってもらっていたというわけじゃない。ただ一番職員室の扉から近い場所に座っている先生というだけだ。なので鍵を借りたり返したりする時にお世話になってます。

 

まあそういうわけで、私たちはこの学校の地下にある倉庫に足を踏み入れることになったのである。どうしてこうなった。ちなみに真山くんと一緒に来てもらったのはそこにいたからです。ええ。決してなにか変な意図があったとか、そういうわけではないですよ。もし帰ってこなかったら探しに来るよう頼んでおきましたし。

 

「ここでいいんだっけ?」

 

真山くんが見つめるのは昇降口の階段の終わりの隣りにある奇妙な扉。存在に気がついたとしてもせいぜい掃除用具とか入れているのかな、と思う程度だろう。

 

しかしあの先生が言うにはこの地下にはこの高校における様々な余り物が詰め込まれているそうだ。そして一度入ったものはほぼ二度と日の目を見ることはないという。怖いなぁ。

 

「そのはず」

 

私はポケットから鍵の束を出す。束と言ってもついているのは五、六個だけだけど。そのうちの一つ、少し色褪せたような赤いプラスチックのタグがついた鍵を選び、鍵穴へ。

 

思っていたよりすんなり開いた扉を開くと、そこにはさっき降りた階段と同じようなデザインの、それでいて底が見えないほど暗い下に向かう通路が出てきた。

 

「あ、電気がある」

 

真山くんが私の隣から手を伸ばして壁のスイッチを押す。ぱっとついた光は魔力的な黒を消し去って味気ないリノリウムの階段を照らした。いや窓がないからちょっと閉鎖感みたいなものはあるけど。

 

「……行く?」

 

「うん」

 

私の質問に真山くんはうなずく。ちょっとした探検みたいなものだ。少しだけ緊張しながら、転ばないように手すりを掴んでゆっくりと下っていく。

 

とはいえそれもすぐに終わる。電気を片端からつけていけば、一つ上の階の廊下と対応したような、それでいてもっと短い廊下とその左右に並ぶ三つぐらいの扉が出てきた。一番近くの扉には「倉庫 地下 1」の文字。

 

なんていうかもっとかっこいい名前があったほうがいいんじゃないかな、とか考えながら対応する鍵を探す。

 

「その緑色のやつじゃない?」

 

「これか」

 

というわけで開ける。換気があまりされていないのか、なんか埃っぽい匂いがする。あいかわらず真っ暗なので電気を入れる。

 

「……これは」

 

「なんだろうね」

 

机と椅子。段ボール箱。なにかの衣装。木の箱。丸められたポスターみたいなもの。折りたたまれたテントかなこれは。気の抜けてるサッカーボール。角材。ペンキ。ここらへんは文化祭で使ったものっぽいな、いつのものかわからないけど。

 

「……使えそうなもの、あるかな」

 

「ひとまず色々見てみようよ」

 

というわけで手当たり次第とまでは行かないが確認していく。例えば適当に開いた段ボール箱の中にはなんかノートがいっぱいあった。ペラペラとめくるとたぶん数学の宿題提出用のやつだな。デジタル化されていない時代のやつ。

 

「何見ているの?」

 

真山くんが横から声をかけてくる。手にはなんだろうこれ、暗幕かな。

 

「いや、これがいつのものかなって……」

 

「名前書いてない?」

 

「書いてあるけど、それでわかるかな……いや、あの先生ならわかるかも」

 

とはいえわざわざ聞くほどのものでもないな、と私は頭を切り替える。それにこういうものに時間を取られるとすぐに一日が終わってしまう。いや別に私は今回の学園祭であまり活躍できる感じがしないのでいいのだけれども。

 

「……でも、こういう場所があるなんて知らなかったよ」

 

真山くんが広げていた暗幕を畳みながら言う。大変そうだったので私も手伝う。

 

「まあ私も通ってた中学校で行ったことない場所とかもあったわけだし」

 

端同士を握る互いの手が触れ合う。真山くんがつまんでくれたほうと反対側を私がつまんで、折り目の部分に手を伸ばす。そうしていくと持てるぐらいのサイズになった。机とか椅子とかにかけたらいい感じにカバーにならないかな。

 

「それに、自習室だって普通の生徒は知らないよ?」

 

「……そうかも」

 

まあこういう地下のほうが人目を避けて何かをするには向いているかもしれませんけどね、さすがにもう一回鍵を借りる理由を作るのは辛いんじゃないかな。

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