今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第八幕間 五

「鍵です。ありがとうございました」

 

「あいよ」

 

職員室の椅子で何か小冊子を読んでいた馴染みの先生に鍵を返す。いつもここにいるってわけじゃないけどね。

 

「で、何か面白いものでもあったか?」

 

「暗幕と、それと大量のペンライトがありました。使わせてもらいますね」

 

「まあ他の人は使わんだろうがね、一応文化祭終わったら戻しておけよ」

 

「もちろんです」

 

そういうやり取りをして、私は教室へと戻る。

 

ため息を一つ。何もなかった。いや別に、真山くんが私を誰もいないところで無理矢理襲うような人じゃないってわかったのはいいんですけどね、それでもこう、関係を持った人と二人きりの閉鎖空間にいたら少しはそういう気配が否定しようにも出るんじゃないですかね。

 

とかなんとか考えているが、実際のところはどうなのかは何も知らない。真山くんが自制心が強いのかもしれないし、私が意識し過ぎなだけなのかもしれない。

 

私の脳がはじき出した完璧な推測的概算はおそらく後者であると断言している。なんでこいつこんな雑に断言できるんだろうな。とはいえそう言ってしまうと真山くんの人間性を無視しているような感じになるじゃないですか。それはよくない。

 

そんなことをぼんやりと考えながら教室へ戻る。どこかで時間を潰してもいいのだけれども、どこで時間を潰すかが悩ましい。人手が必要な状況じゃないだろうしね。とはいえ手伝いが必要なら断るつもりはないけどさ。

 

「ユイちゃんはなーんかシフトどこがいいとかある?」

 

教室につくと作業している横でタブレットと色々と書かれたルーズリーフを手にしている同級生から声をかけられた。彼女の手元の画面を見るにあれか、お化け屋敷の受付とかをやる人の予定決めってところか。

 

「私はあんまり希望ないよ」

 

「んじゃあ翔太くんと一緒にしとくね」

 

そう言って彼女はたぶん名簿だろう紙にチェックマークをつけてタブレットを叩く。

 

「……理由を聞いてもいい?」

 

「そういう関係じゃないの?あっごめん、もしそうじゃなかったらあれだけど……」

 

なんていうか謝られてしまったので否定するのも肯定するのも難しくなってしまった。というかこれなんて言うのが正解なんですかね。

 

「誰から聞いたの?」

 

「いや、なんか見てたらわかんない?」

 

「そういうもの?」

 

ちなみに私は全くわかりません。

 

「じゃないかなぁ?」

 

なんていうか間が抜けているというか、たぶん感覚的に人間関係を把握しているんだな。私みたいな人はきちんと定義された関係じゃないと宣言したくなかったりするのに。なおまだ定義されてないはずです。したほうがいいかな。

 

「ところでそれ、どういうふうに決めているの?」

 

「ええと、こっちにそれぞれの人の候補入れといて、もしダブっちゃったらこんな感じで光るようになってて……」

 

かなりよくできたファイルだ。いややってる内容自体はそう難しい場合分けじゃないんだけど、見やすいな。私が真山くんのループについての情報をまとめているやつはもう少し無機質なのに、デザインもいい。

 

「上手だね」

 

「ユイちゃんだって情報得意でしょ?」

 

「これは情報できるかどうかじゃないから……」

 

もちろん基礎力みたいなものはあるんだろうけどね、使いやすいとか見た目が綺麗とかはまた別な気がする。というかこういうのできる人はちゃんといるんだな。前のTシャツのときのゴタゴタは何だったんだよ。今度からは彼女にも相談することにしよう。

 

「……なんか、さ」

 

「何?」

 

「ユイちゃんってなんていうか、他人を褒めないタイプだと思ってたから嬉しい」

 

にこっとする彼女の笑顔に少しびっくりしてしまう。人間ってこういう顔できるんだな。

 

「……もう少し、明るくなったほうがいいかな」

 

「まあ無理しなくてもいいんじゃない?」

 

「私もちょっと、なんか話しかけづらいなって思っていたのはある。ごめん」

 

「まーねー、髪染めてるのは面倒な人に話しかけられないようにっていうのがないわけじゃないけど」

 

そう言って彼女は耳の上の髪を指でひょいとかき上げる。内側の毛が金色になっていた。まあ染髪禁止なんて今どきは流行らないけど珍しくはある。

 

「でさ、ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

 

なんか彼女は思ったよりグイグイ来る人のようだ。たぶん同類だと思われたのだろう。まあ慣れればなんとかなるか。あまり嫌な感じとかもないし。

 

「……来場者の管理システム?」

 

「そう。でももし予約が必要なぐらいに人が集まったらどうしようかなって……」

 

文字列を作ってQRコードを生成するサイトに行って読み取れる形で出す、というのを自動的にやっているわけか。賢いな。

 

「過去にそういう事があったの?」

 

「私のお姉ちゃんが言ってた。もう卒業しちゃったんだけど」

 

「そうか……」

 

アイデアはいい気がするのだが実際の運用を考えたらあまり難しいことをせずにどうにかしたい。

 

「見ていい?」

 

「お願い」

 

私は彼女が差し出したタブレットをちょっと弄ってみた。解読はそう難しくはないだろうな。

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