地下を出ると通知がまとめて来た。はいはい、ちゃんと見ますって。どうやら会場が決まったらしい。私と一緒に打ち上げに行く同級生たちは会場としてちょっと歩くが線路の向こうのファミレスを選んだようだ。
「どこだって?」
「ここ」
私は真山くんに画面を向けて隠れ金髪の人から送られた地図を見せる。
「わかった」
というわけで、ここからは少し急ぎである。先行組はもう駅の方まで行ってるらしいので、場合によっては先に注文をしてもらうことになる。どのくらい空いているかにもよるか。まあ急ぐに越したことはないな。
きちんと電気を消して施錠。暗い中、階段を一つ飛ばしに心臓を高鳴らせながら職員室に行って教室と地下室の鍵を返す。さっきより心拍数が高いことは気にしないほうがいいやつかな。
降りる時は足元に注意しながらゆっくりと。もう学校からは人気がなくなっている。つい数時間前までは活気でいっぱいだったのに。
というわけで校門を抜け、転ばない程度に走る。私はそこまで運動が得意な方ではないので真山くんからすれば隣に追いつくのはそう難しいことではないだろう。
駅の構内を抜けて、ちょっと通りを抜けて、信号を待って、地図とにらめっこしてちゃんと目的地に到着できた。さっき地図アプリが示していた時間の半分とは行かないがかなり頑張った時間である。
「こっちこっち」
見慣れたクラスメイトたちが手招きする場所にちょっと息切れ気味の私たちは座ろうとする。ええと、私達含めて全部で七人かな?一応全員知っている。
「あっ、じゃあ、場所動くね」
私達が状況を飲み込めていない間に素早く席の移動が行われて、私と真山くんはソファーの奥側に隣りあって押し込まれる。
「まず注文しちゃう?」
「そうだね、なに頼む?」
「あっユイちゃんと翔太くんも好きなの選んでね、どうせ割り勘だからいっぱい食べたほうがいいよ」
まあそういうわけで、あたふたしてなんとなく選んでいるうちに注文は終わってしまった。というわけで各自ドリンクバーへ。
「……和乃さんとつながりある人?」
「いや、私はなんか打ち上げあるからって呼ばれただけで……」
「僕が来てよかったのかな」
「二人を呼んだのはあたしだから大丈夫だよ、あのファイル作ってくれたお礼もあるし」
そう右の方からにゅっと出てきて言うのは隠れ金髪の女子。おや、変わった場所にピアスしてるんですね。いやでも前見た時穴空いてたっけ、イヤリングみたいなものかもしれないな。
「別に私がいなくてもできたでしょ」
「かもね、でも今回ユイちゃんが手伝ってくれたから私だけよりもたぶんいいものができたよ」
なんていうかこの明るさっぽいのは嫌いにはなれない。というわけでオレンジジュースを手に元の場所へ。
「それじゃ、えー、文化祭の成功のお祝いと、今後の学校生活のますますのご発展を祈って?」
そう言ってコップを掲げる男子が幹事らしい。文化祭実行委員でもある。確か。違ったら気まずいので言わないけど。
「乾杯」
「かんぱーい」
そういうわけで、今回の色々な話がされる。さっき私達がどうにか解決した計算ミスの話とかも話題になる。
「でさ、結局ユイちゃんと翔太くんってどうなの?勉強友達って言うには距離が近くない?」
話題が変わって、私を誘ってくれた彼女が話題を握る。おいまさかこのために呼んだとかそういう事ないよな。
「聞きたい?」
私はちょっと挑発的な空気を混ぜて言う。
「もし言いたくないなら黙ってるし、場合によっては謝るけど……」
しゅんとする彼女。あっこれ意図がちゃんと伝わってないわけだな。あとそういう形で謝ることになった場合って謝罪としてどこまで意味があるんだろうか。謝れば何してもいいわけじゃないぞ。私はあまり気にしないけど真山くんがどうかは知らない。
「真山くんに聞いて」
「和乃さんが言ってよ……」
投げたパスは綺麗に打ち返されてしまった。
「んー、仲の良い友達以上ではあると思うよ」
「以上、ね」
「もちろんその数自身も含むよ」
このちょっとパンクな人は数学とかもちゃんとできるのでこんな事は言うまでもないだろうけどね。ちなみに確認したら総合点では私や真山くんと同じぐらいだった。なんだ上位陣かよ。
「恋人なの?」
おや、思いっきり来ましたね。どう答えるのがいいかな。一応私から真山くんへの好意はあるし、真山くんも私に好意はあるだろう。
「勝手にそう捉える分には、私は否定しないよ?」
「翔太くんは?」
なんか気軽な感じで名前呼びしている関係だって見せつけられているようで少し腹が立つな。いや別に関係性が呼び方で決まるなら私と真山くんは一段階しか進んでいないことになるわけですが。
「……和乃さんは、特別な人だよ」
「あーやめやめ、ごめんあたしが悪かった。なんかこう、あまり良くない感じになっちゃった。食べようよ」
彼女が言ったタイミングで、ちょうどよく食事が運ばれてきた。狙ったとかじゃないよな。偶然であってほしい。取り分けていく間に空気も変わって、結局その後は私と真山くんの話題がメインに上ることはなかった。