今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第八幕間 十二

「うーん」

 

私は画面を見つめて表計算ソフトの数値を弄っていく。

 

ループ一周の時間と繰り返しの回数には規則性があった。それもかなり綺麗なやつ。ということは他の部分にもなにかあるんじゃないかと考えるのは当然というものだろう。

 

というわけでまだ未知の部分になにかないか少しいろいろ試していた。結果として規則性を再現できた式というか法則みたいなものは汚すぎた。そりゃ式を複雑にすれば一致させることはできますけどね。

 

諦めが肝心、ということで作業はこのへんにする。ただ、いつ頃ループの期間になるかはある程度予想はできる。多少ズレはあるものの、一ヶ月強。つまりは今週ってところだ。

 

正直やることはあまりない。真山くんに合わせる事があるとすればその周の時の私だしね。事前準備としてできそうなものはもうそれなりに前に一通り揃えてしまっているし。

 

別に日常が退屈な訳ではない。自習室での逢瀬は続いているし、今度試験前に勉強会をしようという話にもなっている。ちゃんと楽しいし、色々とやることも多い。

 

ただ、真山くんが私に与えてくれたインパクトみたいなものはそろそろ落ち着いてきてしまった。そりゃそうだ。来週には十二月ってことは、もう半年以上付き合っているわけである。そして真山くんが過ごしたループは五回。

 

なのでもう、私がループに対して積極的に絡んでいく必要はないんじゃないかなと思い始めている。ネタ切れというやつだ。

 

もちろん、利用しようと思えば色々とできますよ。ただ、それをやるのは大人になってからでも遅くはない。未成年という縛りはどうしても大きいわけで。まあ面倒な悩み事をしても詰まるだけだ。何か食べよう。

 

コンロに火を入れる。ひき肉とみじん切りにしておいたにんにくとネギと生姜とを炒めつつ、パウチの麻婆豆腐の素を入れる。面倒なので豆腐を一丁そのまま入れて、一口大になるようお玉で潰しながら炒めていく。こういう雑なのが許されるのはありがたい。

 

そして作っている最中で昨日冷凍ご飯を切らしていた事に気がついたので、フライパンの火を消しておいて炊飯器の方を準備。ちょっと寒い時期であり、浸漬時間を長くする必要があることを踏まえると私の前には重要な選択がある。

 

ちょっと辛めの麻婆豆腐をそのまま食べるか、棚のどこかにあるパック入りのご飯を発掘するか、しばらくひもじいまま待機するか。そこまで考えてパック入りのご飯は最近父が食べたのか抜け殻がゴミ箱に捨てられていたことを思い出す。

 

まあ別に炊いて食べなくても冷凍庫に入れるのでいいのでいいか、と流れ作業はしてしまう。タイマーもセット。水に浸す時間が短いと美味しさが下がってしまうのでそれなりに待つことになる。

 

「……暇だ」

 

お風呂は沸かすとして、入ってもまだしばらく時間がある。どうしよう。こういう時には、ということでスマホを取り出す。

 

『何してる?』

 

既読がすぐにはつかなかったので、部屋に戻って適当な本を手に取る。今はちょっと集中して読むよりも面白いってわかっている作品のいいシーンを読み返したい気分だ。

 

『ゲームやってた』

 

通知音が来たのでスマホを手に取る。毎日とはいかないけどちょくちょくこういう連絡を取っているので、会話を新着順で並べ替えればたいてい真山くんが一番上だ。

 

『邪魔しちゃった?』

 

『そんなことはないよ、ちょうど終わったところだったし』

 

『よかった』

 

『かけていい?』

 

『いいよ』

 

まあこうやって通話が始まるのも珍しくない。いやぁ昔は電話代とか色々あったらしいですが今どきはほとんど気にしなくていいのいいですよね。昔と言っても生まれる前ぐらいの話か?ここらへんの時代の知識はないのでよくわからない。

 

「和乃さんは何してるの?」

 

「ご飯炊き忘れて麻婆豆腐作っちゃったから暇になって」

 

「……わけようか?」

 

「ご飯を?」

 

「うん」

 

頭の中で少し移動距離とかを計算する。ええと、場合によってはなんか入れる用の容器持っていけばいいのか?まあ問題はなさそうだ。本当か?

 

「いいの?」

 

「いいよ?」

 

「いやその、真山くんの家族とか……」

 

「……大丈夫じゃないかな?」

 

「一応確認しておいてよ」

 

「わかった。切るね」

 

という感じで通話が終わる。うーんと、真山くんは自分が何をしようとしているか気がついているのか?いや別に私は構わないけどさ。うん、ただ友達に冷凍ご飯をもらうだけである。何もおかしなことはないな。

 

空腹で計算がおかしくなっている可能性は無視しよう。というわけで通知音。

 

『いいって』

 

『いいんだ……』

 

まあ女子高生一人分のご飯なら余ってたりするだろうしね。それなら息子の友人にあげるぐらいならいいや、という事になっているのかもしれない。まあ向こうの親御さんに顔を合わせる機会だと思えばいいか。

 

『冷凍だけど大丈夫?』

 

『いいよ、じゃあ今から向かうね』

 

『うん』

 

私はスマートフォンをポケットにしまって、さすがにこの部屋着だと良くないよなと外行き用にスカートを変えて上着を羽織ることにした。そろそろ冬がやってくるんだよな。

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