今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 八回目
高校一年生 八回目 二周目 一


「……始まった」

 

私のそばを通りかかる時に、真山くんが耳元で囁いた。何が、なんて言わないよ。

 

「このタイミングで?」

 

さて、改めて現状確認。場所は体育館。バドミントンの授業中。壁の時計を確認したが、授業が終わるまであと一時間はあるぞ。週に一度の連続授業にループが当たってしまった不運というやつだ。

 

「みたい」

 

「面倒だ……」

 

「たぶん二時間ぐらいで終わる」

 

「ちょっと待って」

 

スマートフォンの中に入れてある計算用のツールを使えれば便利なのだが、そうじゃないと暗算で出すしかない。ええと、前のやつが六時間で十七周。その三分の一の時間だから、周の数は二倍弱になるのか?

 

「たぶん全部で三十ってところ。ちゃんとした計算が必要?」

 

「……今はいらない」

 

「わかった。それにしても面倒な時になったね……」

 

生徒が多かった時代に作られた体育館では複数クラス合同で体育の授業が行われている。ちなみに私は得点係をやっている。何かをやっているフリができるからね。

 

「……他の人と話してきて、いい?」

 

「許可取らなくていいよ、好きに過ごしな」

 

そう言って去っていく真山くんを見て視線をコートに戻すとシャトルが線内に落ちていたので点を入れておく。まああまり真山くんとこの状態で話し続けてもあれだしね。

 

別にやることができたわけでもない。必要であれば真山くんと一緒に授業を抜け出すことぐらいはできるが、その必要がどこまであるかも疑問だ。

 

例えば私がちょっと熱と吐き気を出して保健室に行く、みたいなシナリオはできる。真山くんは真面目なやつだ。私の嘘を補強することぐらいは問題ないだろう。っと、今回のはたぶん出たので得点はあっち側。

 

あとはこの授業が終わった昼休みに何かするのもありだよな。そうだ、真山くんのお弁当食べてみたいんですよね。私は学食のつもりだったのでどうにかなる。そして真山くんに学食を奢るのだ。

 

学食の話って真山くんにしたことあったかな。どこかの周の私がしているかもしれない。前の自動販売機で回数を覚えておくやつがあったじゃないですか、その亜種ですよ。

 

真山くんの方を見るとなんか結構真剣にバドミントンをしている。大丈夫か?タイムリープで体力がある程度回復するとは言え、飽きはしないか?まあある程度はそういうのに慣れているかもしれないな。特にスポーツは行動変えたら対応が変わってくるだろうし。

 

とはいえある意味では計算が正しければ二日半のうち一日ぐらいずっとバドミントンを、疲労の影響も少なくできるわけだ。部活動とかなら下手すると一ヶ月ぐらいの練習量に匹敵するんじゃないだろうか。

 

まあ一ヶ月やったところでどのくらい上手になるのかは知らない。私はそもそも部活に入ったことないしな。もしかしたらそういうのをやっていたら今とは何か違う私がいたのかもしれないけど、そういう可能性を考えるのは真山くんみたいに過去に戻れでもしない限りはあまり意味がない。

 

「終わったとこごめん、トイレ行きたいからちょっと代わってもらえる?」

 

顔見知りぐらいではある、ついさっきまで試合をしていた同じクラスの人に私は声をかける。

 

「いいよ、けど和乃さんはやらないの?」

 

いい人だなぁ。そういう人を結果として裏切ることになるのはちょっと心の中のどこかが痛む。まだこういう痛みがあるだけ、わたしはまだまともなのだろうか。そもそもこういうふうにメタ的に考える時点で誠意とかそういうのがないのかもしれないが。

 

「あんまり得意じゃなくてね……」

 

「ふうん」

 

あまり興味がないようだ。まあそうだよな。私がこの人のことを知らないぐらい、この人も私のことを知らないんだから。そう考えると真山くんって怖いよな。いつ私が言ったのかわからないようなことをもとに行動してくるのだ。普通のコミュニケーションでも決して無駄にはならない。

 

というわけでトイレ。いやちょっと見たところ近くに先生もいなかったしわざわざ行くために断る必要もないでしょう。何かあったら後で謝ればいいんです。ちなみに暖房が入っていないので冷たい。

 

持ち物を改めて確認。なにもない。学校指定のジャージだけ。だって別に教科書持ってくるとかないですし。教室に何かを取りに行くとかなら職員室まで行かなくちゃいけない。いやたぶん問題なく借りれはするけどさ。

 

別にあと三十分強の間待って、その後行動しても遅いってことはないはずだ。さすがに校外に行くのは面倒になる可能性があるが、事情を知らない人相手で一人だけであれば早退ということにはできるだろう。

 

病気でなくとも家族の事情だとか午後から病院があるとかで色々と言い訳はできる。真山くんがどこまでそういうのができるかはともかくとしてだけど。まあでも、今周は真山くんの行動の自由度が高い。私以外と色々できるだろう。そういうところをちゃんと活かせば、たぶん有意義なものになるんじゃないかな。

 

ええ、独占できないことにちょっと心はざわつきますけどね、別にこの私はあと数時間で消えるんだから我慢ぐらいしますとも。

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