今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 八回目 二周目 二

授業から逃げるほどの勇気も覚悟もなく、私は普通に体育館に戻って得点係をやったりたまにラケットを振るったりした。なんだよあのシャトルとかいう物体。軌道が無茶苦茶なことになるんだよな。いきなり宙返りとかしてもおかしくないんじゃないだろうか。

 

「おつかれ」

 

私は汗をかいている真山くんに言う。いやこのそれなりに冷えていて乾燥している時期にこれだけ動くのもすごいな。

 

「うん」

 

「お昼ご飯、飽きない?大丈夫?」

 

教室に帰る道すがら確認。二時間おきに同じ食事を三十回食べるのは運動後の空腹を加味しても普通に辛いと思います。

 

「今周ぐらいは大丈夫だと思う。次からはちょっとわからない……」

 

「そう。何かあったら私が食べるし奢るから」

 

「……いいの?」

 

「真山くんが精神病んだりしたら真っ先に困るのが私になってるからね」

 

本当はスクールカウンセラーさんみたいな専門家に繋ぎたいんですが、具体的になんて言えばいいんですかね。守秘義務があるとは言ってもそれがどこまで信用できるかはわからないし。タイミングが合えばループを使ってもいいのだが。

 

「わかった。お昼、一緒に食べない?」

 

「いいよ、っと、私は更衣室行かなくちゃいけないから」

 

そう言って私はジャージの襟元をつまんでパタパタとさせる。外の空気が入ってきて思った以上に胸が冷えた。

 

「そうだよね。ごめん、引き留めちゃって」

 

「いいのいいの、それじゃ」

 

というわけでくるっと引き返して、小走りで向かうは女子更衣室。男女平等だのなんだのが刷り込まれた現代でもなお分離すれども平等とかいう悪しき思想が残っているのである。まあ、ある程度は仕方がない部分もあると思うけどね。それでもあの狭い部屋で数クラス同時に着替えさせるのはどうにかならんものか。

 

「やっぱ混んでるよなぁ」

 

そう言ってため息を吐き、なんとか滑り込むようにして自分の制服が入ったロッカーまでたどり着く。なおここのロッカーに鍵とかはかかっていない。ただし鍵穴はあるのでたぶんいたずらとか鍵をみんな失くしてしまうとかで使われなくなったんだろうな。

 

聞き取れないぐらいに騒がしい同学年の皆様の会話を適当に聞き流しながら、ジャージを脱いで制服を着込む。制汗剤とか使っている人もいるけど持ってくるのが面倒なのでやっていない。そもそもあまり汗かいてなかったり香料の匂いがちょっと苦手なのもあるけど。

 

まあこんなガサツな人間でもどういうわけかキスできる相手ぐらいなら手に入るのですよ。世の中って不思議ですね。ちなみに向上心という単語は私の辞書では版が変わると乗ったり乗らなかったりする。今はちょっとやる気が出ているがループがなくてもこれはあと一時間も続かないだろうな。

 

それで早く着替えて更衣室を出ても教室に戻るのには少し待つ必要がある。男子の着替えを見るのは色々と面倒なのだ。いや別に今どき検索すれば異性だろうが同性だろうが裸なんていくらでもあるだろと思ったが高校生のものは少ないよな。なにせ未成年ですからね。

 

参考までに私の好きな年齢層は年相応です。ネット時代の知人には小学生の頃から高校生の年頃に焦がれていて、高校生の倍の年齢になっても趣味が変わらないという筋金入りもいたけど、あれはちょっと大変そうだなと同情したものだ。

 

そういうわけで昼休みの最初の時間を喰われたわけです。いつもならまあこれでもいいんだけれども、場合によっては真山くんと過ごす時間を考えるとジャージのまま食堂に行ったほうがいいかもしれないな。

 

「食べに行く?」

 

私はワイシャツの上から二番目のボタンを閉じている真山くんに言う。

 

「そうだね」

 

「今周はお弁当?」

 

「……そうする」

 

「次の周以降で話したい内容があったら直接行ったほうがいいかも、財布は椅子にかけてるコートの中だからね」

 

「……あのさ」

 

「ん?」

 

「さすがにそういう事やったら疑われるし場合によっては大問題になるよ?」

 

「……確かに」

 

真山くんが周囲からどう見られるかを計算に入れてなかったな。こういうところで真山くんから低評価をもらいたくはないのだが。

 

食堂は一番人がいるタイミングになっていた。もう少しすれば早く食べ終えた人が去るのだが、待ちすぎると食べる時間がなくなる。

 

「あれ、休み時間のうちに終わる?」

 

「五時間目の五分ぐらい前」

 

「微妙だなぁ」

 

授業に遅刻するのは前にやった。あの時は遅刻だったけど、私は結構さぼっていたらしい。私は真山くんと別れて定食を買いに行く。ちょうどよく端の方に二人向かい合う席が空いていてよかった。

 

「前の周もそれを食べたと思う?」

 

先に席についてお弁当を広げていた真山くんが言う。あ、おいしそう。一応食べられないものはないな。これなら他の周の私でも安心だ。

 

「どうだろう、たいてい日替わりだけどたまに別のを選んでいるからな……」

 

なんとなく定食の内容が気分じゃないときとかもあるのだ。そういうときは麺とかを選ぶこともある。

 

まあともかくご飯を食べよう。私にとっては最後の晩餐ではあるけどね。

 

[二周目終了]

 

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