今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 八回目 三周目 一

体育の時間というのは私にとってはあまり嬉しくないものだ。暑い時にやるのに比べればマシではあるが、今日みたいなそれなりに冷える日ならさらにだ。体育館は暖房が効きにくいものあって、タイツとかで防寒しても冷えるものは冷える。

 

というわけで今日も今日とて得点係。十一点先取りで十対十になったら二点差がつくかどっちかが十五点になるまで続く。まあ普通のバドミントンの一ゲームを半分ぐらいにしてやるわけだ。慣れているのでのんびりと他の人達に視線を向けていく。

 

知らない人。知らない人。顔見知り。知らない人。真山くんと話している人。深呼吸。得点を増やす。そろそろこの試合も終わりだな。

 

真山くんが別に他の人と話すことが嫌だってわけではないですよ。独占欲を否定するわけではないですが、それが普通の高校生としての生活を邪魔するようなら私が悪いわけですし。

 

ただまあ、それでも心がざわつくみたいなものはあるのよ。特に楽しそうに話されていたりすると。こういうの、早くなくなって欲しいものだ。

 

「和乃さん!」

 

「へぁっ」

 

「得点!」

 

「すみません!」

 

というわけでまた一枚めくる。集中しないとよくない。改めて意識をコートの方に集中させようとするが視界に入った真山くんのせいで乱されてしまう。

 

まあこういう嫉妬にエネルギー使えるのも今のうちだろうな。どうせすぐ飽きるだろうし。飽きるって言っても真山くんが嫌いになるわけじゃないですよ。落ち着くってだけ。まあそれがあとどれぐらい続くかはわからないけど。ただ、しばらくは終わりそうにない。

 

まあそういうことをやっていると授業の間の休みになる。まだこれからも体育はあるわけだ。休み時間と片付けとかの時間を抜いても、あと一時間弱はやらなくちゃいけないわけだ。そう考えると憂鬱になってくる。

 

そのくらいの時間は放課後に真山くんとわいわいやっていれば一瞬で過ぎてしまうのに、こういう時にはじりじりと長く感じられる。そのくせその間の休み時間は体感的にはやけに短いのだ。逆であってほしい。

 

「どう?」

 

水筒から水を飲む真山くんに私は声をかける。私は水筒とか持ってきても大抵忘れるし洗うのが面倒なので冷水機のほうに行っちゃうけどな。

 

「ループ中」

 

「ふうん」

 

適当な相槌を返した後で言葉の意味に気がついて、私は驚かないように自分を落ち着かせる。まあすぐに言わなかったってことは緊急の用事があるわけでもないのでしょう。

 

「……お昼休みの終わる直前まで続く」

 

「短いね、二時間ぐらい?」

 

「ちょうどそのぐらい、二十九周だって」

 

「へえ」

 

「それと三周目」

 

「……わかった」

 

現状はだいたい理解できた。まあ、それなら私にあまり構わないほうがいいな。まだ最初も最初だし、今は他のクラスの人とも一緒にいるわけだから色々交流できる機会もあるはずだしね。

 

「それじゃ頑張って、あとお昼については必要なら言ってね」

 

「……うん」

 

「それにしてもバドミントンってやりにくくない?」

 

「そうなのかな……」

 

真山くんは不思議そうだ。そうかこいつ運動ができるのだ。私の方は綺麗に飛んできたシャトルにラケットを当てられるのが七割、そこから更に大まかに狙った方向に飛んでいくのが七割。結果として返せる確率が半分ってところだ。調子がいいときでこれである。なのでまあ、ゲームが成り立たないのだ。

 

こっちが一点も入れられない間に向こうが十点ぐらい入れてくるのはちょっと精神的に辛いものがあるのですよ。なのであまりしたくない。ただまあ、真山くんだってたぶん他人に話しかけるのは怖いだろうからな。

 

「まあ頑張ってよ、私も一回ぐらいは試合やってみるから」

 

「応援しようか?」

 

「無意味だからやめて」

 

実力が拮抗している時とかなら応援に意味があるっていうのはわかりますけどね、明らかに負けが決まっている方に声援を向けるのはもはや暴力ですよ。そういう人相手には終わった後の慰めとか、それができないなら無関心でお願いします。

 

「そっか……」

 

「あとまあ真山くんはこの時間に色々できるでしょ?私と話す以外にも」

 

というか今更になってループだと伝えられたことに対する不満みたいなものが自分の中にあることに気がついた。いや、別に伝えるなって真山くんに言うわけじゃないですよ。それぐらいで文句は言いません。ただ、顔に出さない範囲で何を思うかは自由じゃないですか。

 

でもこれが理不尽どころか逆恨みとかに近いものだってことも理解している。ちゃんと伝えるっていうのは真山くんの誠意なのだ。それを無下にするのはよくないことだ。少なくともキスを許すような相手にするべきことではない。

 

「……うん」

 

「だからさ、適度に私を無視して頑張りな」

 

「……頑張る」

 

まあそういう会話を終えて、チャイムとともに私は定位置である得点板の隣に戻る。試合ができるのはあと三十分ちょっととかかな。それまで頑張るとしよう。タイミングが良ければ一回ぐらい挑戦してみるとしよう。

 

なに、色々と集中すれば多少は気も紛れるでしょう。あと二時間弱、自分の中にある面倒なものを表に出さなければいいだけだ。

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