今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 三回目 五十七周目

高校に入って最初の中間試験のテストを改めて確認しながら、私は少し笑みを浮かべる。

 

和乃(カズノ)さん、英語はどうだった?」

 

そういう声が聞こえて返却された解答用紙から目を上げると、同級生である真山(サナヤマ)くんがいた。

 

「……悪くはなかったよ」

 

嘘である。一位だ。やったぁ。本当は小一時間これについてクラス全員に自慢してやりたいが、慎み深い私はそのようなことをしない。

 

「いや、何点だったのかなって」

 

「何でそこまで気にするの?」

 

一瞬嫌な顔をしようと思ったが、その気が失せた。悪いやつじゃなさそうな気配を感じる。そもそも友人どころか休み時間に話す相手もいなくて本を読んでいるような私に声をかける珍しい人だ。

 

「……嫌だった?」

 

「別に。最高点だよ」

 

ドヤ顔をしたくなるのを頑張ってこらえながらすっと紙を見せる。

 

「おめでとう」

 

「……そういう真山さんも、悪くないんじゃないの?」

 

「どうしてそう思うの?」

 

「授業中、ちゃんと発言してるでしょ」

 

私は周りの目をあまり気にしないし、得られるものがあるなら行動すべきという人だ。いや、考え直すとこれ友達がいないのを上手くごまかそうとして論理組み立ててないか?

 

孤独でも大丈夫ですって顔をできなくはないけど、それはそれとして人付き合いが嫌いじゃないので。もちろんどういう付き合いかにもよるけどね。

 

「だからといって、そんな点数いいとは限らないよ?」

 

そう言いながら彼はちらりと解答用紙を見せてくる。91点。

 

「いい点数でしょ、やっぱり」

 

それでも私は勝ってるからな、という自負とやべえ私が唯一勝てそうな英語でこれかよという恐怖がある。理系知識は多いけれどもこれ全部SF由来なせいで計算とかはあまり良くないしな。

 

「……ありがとう」

 

「まだ褒めたつもりないけど。で、どういう感じだったか見せてもらっていい?」

 

「いいよ」

 

そう言って見せられたものと手元のやつとを比較する。うん、私の凡ミスに比べて真山くんは知らないというか覚えてなかったやつ、って感じかな。覚えていて間違うなよという話ではあるが。

 

「……待って、ここはっと」

 

雑多にプリントの詰まったファイルを鞄から取り出し、英語の中間試験の問題用紙を引っ張り出す。

 

「どうしたの?」

 

「私も真山さんも間違えている選択問題がある。どうだったかなこれって思って」

 

問題文を見ると、私もちょっと悩んで不正解になったやつだった。これどっちかって断定できるのか?検索エンジンを起動。完全一致で用例を探す。

 

「……あー、ある。少ないけど、使われてはいる。辞書にも乗ってる」

 

「本当?」

 

「うん。問題不備だって言えるかもしれない。って先生はもう帰っちゃったし、放課後に職員室行ってくる」

 

わちゃわちゃとする同級生越しに教卓を見る。

 

「一緒に行くよ」

 

「いいよ、真山さんの分も点数上げておくよう言っておくから」

 

どうせこの試験やった人全部を確認しなくちゃいけないのだ。いい出してきた人だけ加点、ということもあるかもしれないけどその時はその時で。

 

「和乃さんはいつもそうだよね」

 

「……そう、って?」

 

声からはなんとなく、わずかに軽蔑とか(あざけ)りとか、そういうものを感じ取れなくもない。いやこれは私の気分が悪くて相手の声を変に受け取っているだけかもしれないけど。

 

「いつも教室の鍵最後に閉めてくれるし、他人のために動ける人だし」

 

「……誰かがやらないといけないことで、私ができることだから。かわりにやってくれてもいいんだよ?」

 

ああ、彼も私を都合の良い扱いしたいのかな、と考えてしまう。楽だもんね何もしないで世界が回ってくれるの。私だって全部自分でやっているとは到底言えないけど、自分のできる部分に手を伸ばそうとはするよ。

 

「わかった。今度から率先してやるよ」

 

「……うん」

 

あの、そう元気に言い切られると私の心がちょっとあれなのでやめてほしいですね。ぎゅってするっていうか、罪悪感というか。

 

「……やっぱり、和乃さんと話してよかった」

 

「私と話して、そんな楽しいとは思えないけどなぁ」

 

精一杯の口角の上がらない笑顔を向けながら返す。

 

「ううん、いつも話の引き出しが多いし、何より飽きない」

 

「……誰?」

 

私は目の前の相手を知っていないか、頭の中で検索を始める。ネット上の知人か?もしそうだとしたら私とアカウントをどう結びつけた?もし結びつけられているとしたら面倒な、思い出したくないような秘密を知られている可能性もある。それも私の三つの秘密のうち、二つ目と一つ目。

 

「真山翔太(ショウタ)。っと、自己紹介してなかっけ」

 

「名前は知ってるしそこにもあるよ」

 

ローマ字で書かれた解答用紙の名前をシャープペンシルの頭で叩いて、くるりと手の中で回して先端を相手に向ける。

 

「……何か、やらかした?」

 

「いつもって聞いた」

 

「あー、タイムリープ」

 

「へぇ、私とそんなに話しているんだ」

 

「小学三年生の時の本屋の話も聞いた、あとワンタイムパスワードの証拠もある」

 

「……本物?」

 

だとしたら、悠長に私と話すことに何の意味があるのだろうか。息抜きとか?まさか。でも彼の言うことが本当なら、他の周の私とはそれなりに話しているようで。

 

「うん。今周は明かすつもりはなかった。ごめ

 

[五十七周目終了]

 

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