今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 八回目 十八周目 二

「……大丈夫?」

 

真山くんが箸を止め、私を見て言う。向こうのお皿のカレーは半分以上なくなっているのに、私の手前にある真山くんのお弁当箱はまだそれなりに色々と詰まっている。

 

「……動きすぎたのかも」

 

食欲がないわけじゃない。それ以上に疲れとか、よくわからない胸の感覚とか、そういうもののせいで箸が進まないのだ。飲み込むのも億劫な感じ。吐き気とかは今はないけど、無理に食べたら起こるかもしれないなという予感がある。

 

「……ごめん」

 

「私が調子乗ってやりすぎただけ。次はもう少し調整して……」

 

「……わかった」

 

なんていうか、多分体力とかの上限に引っかかったんだな。これ以上は多分楽しんでバドミントンができない。これでループじゃなかったら、多分来週には私の中にある記憶は楽しかったものよりも疲れと面倒さのほうが上回ってしまうだろう。それでは意味がない。せっかく打てるという経験ができたのに。

 

「真山くんはさ、なんでそんなに私に構ってられるの?」

 

ちょっと気分が荒くなっていたので、変な質問をしてしまう。私でもできる限界というものがある。例え体力とか能力があったところで、それを実行するかどうかはさらにまた別の問題だし。それなのに真山くんは行動してる。前の自販機の時よりも負担は大きいだろう。

 

「なんで、だろう……」

 

「そこまでしなくてもさ、求めるものがあるなら提供するよ?」

 

真山くんが見返りをそこまで求めて動いていないってぐらい察しはつくが、それは破滅的なまでの行動だってことの裏返しだ。それがあまり良くないのはさすがにわかっているだろうし、たぶん私も何回か忠告している。

 

無計画に、一時の感情に身を任せて色々投げ打つのは長期的に見れば碌なことにならない。どうせ残り時間も少ないからといった私ですら、思ったより早いしっぺ返しに苦しんでいるのだ。

 

だから、それをちょっと意識させる。まあ真山くんが対価のために動くようなことがあったとしても、それを払うぐらいはなんとでもなるだろう。

 

「……今は大丈夫」

 

「終わった後は?」

 

「……ちょっとして欲しいことがある」

 

まあ、多少のことなら受け入れるだろうな。内容についてはあまりわからないけど、さすがに無茶なことは言わないはずだ。手をつなぐとかハグをするとかもう一度キスして欲しいとかどうせそのあたりだろ。そこから二、三歩踏み出されてもまだ私は対応できる。主導権を握り続けられるかは別としてだけど。

 

「ならもう十分じゃない?もちろん覚えた勘を忘れないようにする必要はあると思うけど」

 

これ以上やったところで、私が成長することは難しいと思う。少なくとも今の時点で体力的には限界だ。もっと効率的に私が学べるかというのも難しい気がする。

 

「……うん」

 

「でもありがとうね、まあどうせ私は疲れてもあまり問題ないからいいよ」

 

「……そうじゃなくてもさ、あまりいいことではなかったでしょ」

 

「失敗から真山くんが学べればいいよ」

 

そう言って、どうやら色々と食い違いが起きているなぁという気がする。互いに相手の立場に寄り過ぎ、というか。まあ一方だけが歩み寄るよりかは健全かもしれない。

 

とはいえ逆に言えば互いに相手の言うことを信用していないってことだけどね。それでも信頼されないことに対する悲しみとかそういうのはないな。配慮ではあるのだろうと理解できるので。

 

「……ちょっとしばらく休んでみる」

 

もう少し強情というか、信念にも似た何かがあるんじゃないかと思っていたので真山くんからこういう事を言い出すのは少し意外だった。まあでも、私が折れてもここで意味はないんだよな。最終的にループで戻るのは真山くんだけなのだし。

 

「それがいいよ、のんびり体育やって、お昼ごはん食べて……」

 

「……あのさ」

 

「なに?」

 

「何も聞かないでお弁当を食べて、って言ったら和乃さんはどうすると思う?」

 

「うーん」

 

問題はそこから私がループの可能性をどれぐらいの時間で割り出すかどうかだ。まあでも真山くんが変なこと言う時は私に唆されている可能性が高いな、とは考えるだろう。

 

ってことは純粋に飽きだろうな、というところまでは導ける。うん、その場合なら明らかに真山くんの助けになれるので同意する以外の選択肢があまりないな。なんだかんだで私も見返りとかをあまり考えないで行動しがちな気がする。私はループしていないからいいんだよ。

 

「……わからなかったら、試すけど」

 

「たぶんお昼ご飯代を払うと思うよ」

 

「……僕に?」

 

「真山くんに」

 

私はそれぐらいの理解力があるのだ。たぶん。もしわからなかったら恥ずかしいが恥ずかしくなる私はもういなくなるから適当言ってもいいだろう。

 

「……わかった。ちょっと和乃さんに体育の授業の間は関わらないようにする」

 

「それがいいよ。……あ、おいしい」

 

少し食べたい気分が出たので口に入れてゆっくり噛むと、味わいがじんわりと広がってきた。やっとお腹が空いてきたな。身体に変な力を入れていたのがやっと取れたのかもしれない。

 

[十八周目終了]

 

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