今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 八回目 二十九周目 二

「私ってさ、何回ぐらいそのお弁当を食べたの?」

 

食堂の机の向かいで箸を動かす真山くんに私は聞く。

 

「……ええと、二十回以上だとは思う」

 

「半分以上で食べているのか……」

 

まあ真山くんからすれば二時間おきに同じものを食べることになりかねないのだ。それでもちゃんと数回は食べているんだな。

 

「……食べる?」

 

「いいの?」

 

「……毎周、和乃さんがおいしいって言ってたから」

 

「……いただく」

 

もちろんそれが私が今後の周へのメッセージとしてある程度言った可能性はある。ただ、十中八九普通の感想だろうな。苦手なものがあったとかならストレートにそう言うだろうし。

 

改めて真山くんのお弁当箱を覗き込む。二段重ねで、ご飯の詰まった段とおかずの詰まった段。おかずからもらうのがいいだろうな。かつ切り分けられていて一つもらっても問題ないもの。まあ真山くんはすでに全部食べてるから何をもらっても問題はないだろうけど。

 

「じゃあ、卵焼きを一つもらってもいい?」

 

「いいよ」

 

真山くんが嬉しそうに言う。そんなもんかね。別に真山くんが作ったわけではなかろうに、とは思ってしまう。まああのお母様なら息子が同級生にお弁当のおかずを分けたぐらいで怒りそうにはないか。むしろ後でちゃんとお礼を言うべきかもしれない。

 

「……おいしい」

 

どんな味かと思ったらコンソメ風味だった。ああなるほど、もしや真山くんが嬉しそうだったっていうのは私のちょっとした読み違いで、実際は私が驚くのを楽しんでいるのがこぼれてしまっただけだな?

 

「よかった」

 

性格が悪いとは思わない。サプライズを楽しんでくれたのが嬉しいってことなのか。まあサプライズされた側からすればちょっと不満なところはあるけど。でもいいなこれ。今度作ってみるのもいいかもしれない。

 

「かわりに真山くんに私の定食分けようにも、何度も食べたことになるわけか」

 

「……そうだね、だから大丈夫」

 

「飽きなかった?」

 

「……しばらく食堂でお昼食べるのはいいかな、ってなった」

 

「そう」

 

なら食べなきゃいいのに、と思ったがもしかしたら私に合わせて毎周食べていたなんて可能性もあるな。なんか満腹感がバグったりしないか心配になってしまう。

 

そう考えると、この少年はじつにいいやつなのである。私が真山くんに割いた時間はプログラム作ったり勉強教えたりとかあるけど、勉強のほうは教えあってるから相殺されて、真山くんのほうはループごとに私のために動いているのでそれを掛け算する必要があって。

 

まあともかく、真山くんは私のためにそうとう色々なものを割いてくれたのだ。直接は言わないけど、間接的にある程度は読み取れる。

 

「……最終周だって、いつわかる?」

 

「あと十五分ぐらいかな」

 

真山くんは腕時計を見て言う。

 

「……ありがとう、ね」

 

もし私の計算が間違っていたり、真山くんの係数が誤っていたら迷惑になるんじゃないかという頭の中の迷いを振り切って私は口を開く。

 

「……どういたしまして」

 

「おかげで今周は楽しかったよ、短い時間だったけれども」

 

「……これからのほうが大変だよ、僕なんて久々の体育以外の授業だから」

 

「それはそれで辛そうだ……」

 

ループは全体で二日半。そのどれぐらいの割合を真山くんは私に割いたんだか。

 

「真山くんはさ、ループ中なら私にどれだけ時間かけても気がつかれないからいいやって思ってない?」

 

普通は逆であってほしいんだよな。もっと私に頼ったり負荷をかけるようなことをするべきじゃないのか?

 

「……否定はしないけど」

 

「わかった」

 

そうすると、私には真山くんに感情をぶつける正当な権利があるのではないか?真山くん視点では私に渡した分の感情を返しているだけだしな。ちょっとぐらい私視点でオーバーしてもいいだろ。知らんけど。

 

「……嫌?」

 

「……嫉妬は自分の中でするけど、それを真山くんにぶつけるほど不合理なことはしないよ」

 

あくまでこれは自分の問題。真山くんがループの間をどう過ごすかは自由だし、それはもちろんループ外だってそうだ。

 

独占欲はある。今連続した意識を持つ私以外の人間と楽しんでいる真山くんを想像すると胸が変な感じに苦しくなる。とはいえ、それで真山くんを縛るのはろくでもないやつのやることだ。

 

罪悪感とかで相手の行動を抑制するのは、純粋に色々と可能性を潰すことになるという点でもよくない。

 

そこまで考えて、私は他の周の私達が羨ましくなる。他の私達はこの嫉妬を一時間すこし隠すだけで良かったのに、私はこれからずっと抑制し続けなくちゃいけないのか。

 

「……ごちそうさま」

 

「あっまだ私食べ終わってない、時間大丈夫?」

 

「あと二分でループが終わって、その三分後にお昼休みが終わる」

 

「やっべ急がなきゃ」

 

会話が楽しかったが、今周はちゃんと続きをやらなければいけないのだ。私は急いで味噌汁をかきこむ。

 

[二十九周目終了]

 

「……ごちそうさまっ!」

 

私が手を合わせると同時にチャイムが鳴った。ちょっと遅刻になってしまったな。

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