今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第九幕間
高校一年生 第九幕間 一


「……やっぱり法則性はかなり正確に割り出せたね」

 

放課後の自習室。私は真山くんに対するインタビューを終える。手元のスマートフォンにまとめた情報をパスワード付きのフォルダに保存。よし。

 

「今までいつループが終わるのかわからなかったけど、動きやすくなったと思う」

 

「それは何より、まあその間に色々していたようだけど」

 

私は椅子を立ち、長机をぐるりと回って真山くんの方に行く。

 

「……和乃さん?」

 

「ループ中に真山くんはそれなりに色々してくれたようだからね、お礼だよ」

 

そう言って私は真山くんのそばに立ち、腕を広げる。

 

「……僕はしたいことを、しただけだから」

 

「ならそういうことをさせてくれた相手にお返しぐらいはしたほうがいいんじゃない?」

 

真山くんは私の言葉に色々と悩んだあげく、しばらくして意を決したように立ち上がる。

 

「……和乃さんが、先に誘ったんだからね」

 

私の肩の上から腕が回される。体重がかけられる。

 

「……もう少し強く抱きしめても構わないよ?」

 

「……いいの?」

 

「いいよ?」

 

まあ真山くんが動かないなら私から動いてあげるか。私も真山くんの腋の下を抱きしめる。やっぱり体格がしっかりしているんだな。まあハグしたことのある人間なんて数えるほどしかないのだが。

 

呼吸のたびに胸が動いているのがわかる。緊張とか興奮とかはしていないようだな。ちゃんと落ち着かせたりするスキンシップとしてハグが機能していようでなによりだ。

 

「好きなだけくっついていていいからね」

 

「……うん」

 

今回のループで体感的に二日半にわたって色々とやった疲れはそれなり以上のものだろう。真山くんはいいやつだから私に色々やってくれるが、そのぶん向こう見ずで自分自身の面倒は忘れがちな気がする。

 

それならまあ、隣によくいる私が多少は色々配慮してあげる必要があるだろう。衝動的なものならループ中になら受け入れるだろうけど、こういうものはたぶん真山くんはループ外でやりたがるよな。

 

「……和乃さんって、いい人だよね」

 

「私にバドミントンを楽しませるために相当練習した真山くんに比べれば、たぶん悪人だよ」

 

「……そんなこと、ないからね」

 

一線を越えた自己嫌悪にならないように露悪的にしているところに、そういうことを言われると私は弱い。まだ私は臆病というか、前に傷ついたときの事を忘れられない。

 

そもそも、安易に他人に自分の弱点を晒しだすものではない。それがたとえ気心の知られている、互いに好意を伝えあっている、ある程度信用できる相手であっても。

 

まあそういう面倒なことを考えるのは私だけでいい。真山くんのほうにはしっかり休んでもらわないとな。

 

「ちょっと落ち着いた」

 

「離れる?」

 

「離して」

 

「はい」

 

胸に当たっていた熱がなくなって、暖房混じりの初冬の空気がかわりに入ってくる。喪失感みたいなものは、まあさっきまで満たされた時間だったことの裏返しだと考えるとしよう。

 

「あと、決めたことがある」

 

さっきまで座っていたのにもう冷めてしまった椅子に戻った私を真山くんは見つめる。

 

「……なに?」

 

「……和乃さんに、積極的に頼ろうかと思って」

 

「それはいいことだよ、もちろん私側の方で無理だって思ったらちゃんと言うからね」

 

共依存で破滅、というのは十分に有り得ることだ。とりわけ、恋みたいなものを始めて知った知った少年少女にはありがちである。

 

「和乃さんって、そこらへんがしっかりしているよね」

 

「結果としてどこか正気の部分が残っちゃって、楽しみきれていないかもしれないけどね」

 

正気で恋はできないのだ。まあ狂気で恋をやると破滅まっしぐらなのだが。

 

「……僕はさ、たぶん自分が満足するまで色々なことをしようとする性格なんだと思う」

 

「うん」

 

私はどうだろうな。ここで満足しようと思ったら無理にそう思い込んだりするのかな。我ながら青春的ではないな。

 

「……だから、たぶん色々迷惑をかけると思う」

 

「それはお互い様だよ」

 

「……そう、かも」

 

「今までのループで私にそれなりに迷惑をかけられなかった?」

 

「……結果として楽しかったり満足できたから、迷惑じゃないよ」

 

「……真山くんがお人好しなだけだと思うけどな」

 

まあ実際のところ、ループ中で後がない私であってもそこまで無茶はしないのかもしれない。聞いたところによると、一線を越えようとしてきた私はそんなにいなかったらしいし。

 

いや外泊したり偽装ラブホテルに連れて行ったのはちょっとまずかった気もするな。よくまあその時の私は行動しようと思ったものだ。その勇気というか向こう見ずなところがループしていない私にあれば、色々進展させられるかもしれないのに。

 

「……ともかく、今周はありがとうございました」

 

「……どういたしまして」

 

それは本来私が受け取るべき言葉じゃないのかもしれない。ただ、ここで受け取っておかないと真山くんが色々と変なことを考えてしまいそうだ。そういうのは面倒なことを考えても結構ぐっすり眠れる、思考実験とかSFに慣れた少女にまかせておけばいいのですよ。

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