今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第九幕間 二

少しだけ、真山くんと触れ合う機会が増えた、気がする。

 

「……なに考えているの?」

 

「眼の前の問題以外にあると思う?」

 

「手を動かさないと解けないような計算問題でぼんやり窓の外見ても意味ないんじゃないかな……」

 

ええそうですよ、飽きて計算を止めて机の向かいの少年の事を色々考えていたんです。なので真実を突きつけないでください。

 

「……真山くんのこと考えてた」

 

「……そう」

 

ふっふー私の勝ち。安易に人の心にストレートを入れるとこういうふうにカウンターが返ってくるのだぞ。そして私も自分で言って恥ずかしくなったのでうつ伏せになる。おい問題解けよ。

 

今解いているのは共通テスト。予習でやるべき範囲が終わったので実際にやってみて、速度が全然足りなくて落ち込んでいます。よくない。

 

「やっぱり練習しないとよくないな……」

 

「和乃さんは練習すれば上達するよ」

 

「ただし教えている側がタイムリープを重ねて教え方をきちんと学んでいる場合に限る」

 

「……そうだけど」

 

「教え方とかどうやったら学べるのかな……どこかで先生に相談したほうがいいかな……」

 

学校の先生はあれでも国家資格を持って金をもらって教えているプロなのである。教科によっては私や真山くん以上に教えるのが上手い人もいるし。

 

「学校の先生向けの教材を借りるとか?」

 

「ああ、あの教卓に置かれているやつ」

 

ただ、そこらへんを頼んで見せてもらえるかはまた別の話だ。私達は先生にはおそらく真面目に勉強している成績優秀な二人、ぐらいに扱われていてそうだが抜群に試験の点数がいいわけではないんだよな。

 

つまりはあれだ、ちょっとやそっとの努力で才能に勝とうというのは無理なのである。いや私達だって才能はないわけじゃないですけどね。

 

「……あと二年、だね」

 

「真山くんにとっては三年ぐらいじゃない?」

 

「……そう考えると、ズルしているみたいだな」

 

「文字通りのチートでしょ、ただでさえ物理法則とかを破っているんだから人間の作った規則なんてそこまで気にしなくていいよ」

 

それはそうと試験とかにループがかぶると大変だと思うので、どこくらいの間隔でどのくらいの長さのループが起こるのかは特定しておきたいんだよな。でもまだ上手く行かない。

 

「……和乃さんに使うなら、不公平にならないですむかな」

 

「そうだね、真山くんとその他全員の問題を真山くんと私だけの問題にできる。おかげで私への負担は大きくなるけど……」

 

重いわけじゃないですよ、それぐらいの執着とかは受け入れる覚悟はできてます。ただ、それに見合った物を私が返せていないんじゃないかって自己嫌悪みたいなもののほうが辛いだけです。

 

「……和乃さんに追いつこうとするとそうなるんだけど」

 

「私は真山くんに追いつこうとしているんだよね」

 

「和乃さんのほうが経験とか……ある、し」

 

真山くんの言葉が後半弱くなったのは私への配慮かな。いや別にそこまで気にしてもらわなくても構わないけれども。

 

「ループしているんだから経験なら追い越せるでしょ、実践してもいいし」

 

まあそりゃ知らないところで真山くんが上手になっていたらちょっと腹が立つけど、それはそれでまあそういうものだと切り替えれば受け入れられるし多分楽しめるわけで。

 

「……そういうことはループしてないときにしたい」

 

「まあどこに一線引くかは真山くんに任せるよ」

 

私からすれば手をつなぐこととハグとキスとその先とのどこかにちゃんと区分けをつけることは難しいわけで、真山くんにとってどこまでが許容範囲かを私がとやかく言うのは難しいのだ。

 

まあ隠しているだけで私に襲われているかもしれないと考えるとなんか心のざわつきが大きくなるのでこの方面の思考は一旦やめておこう。よくない。深呼吸。

 

「それにしても点数伸びないね……」

 

「やっぱ基礎とか練習量とかの問題かな」

 

共通テストの過去問をやっているのだが、解けはするが時間が足りない。何回かやってもそこまで速度や正答率が上がるわけではない。まあ数学IIとか数学Bとかをしっかりやればやりやすくなるのだろうか。

 

「……過去問が早すぎた、とか?」

 

「かもしれないね」

 

そもそもちゃんと授業でやっていないのだ。やっていて思い出せない場所とかもあったし、やはりきちんと問題の数をやっておいたほうがいいのかもしれない。

 

「和乃さんは、志望校とか決まってるの?」

 

「なにも決まってないけどあまり遠くには行きたくないな……」

 

「どうして?」

 

「大学生ってうまくやれば高校生より暇になるし、何かあった時に動ける余裕を増やしておきたいから」

 

「……僕のために?」

 

「まあもし関係が切れても無駄にはならないでしょ」

 

そう言ってから言い方が悪すぎたなって思う。いやその、無言で悲しそうな顔をしないでほしい。

 

「……その」

 

「……ごめん」

 

「別れたいって時は、できたら早めに言って」

 

「約束はできないけど努力する。言わなくていいならそれに越したことはないけど」

 

私だって今みたいな関係がいいとは思っていますよ。それがいつまで続くかは私にも真山くんにもわからないだけで。

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