高校に入って最初の中間試験のテストを改めて確認しながら、私は少し笑みを浮かべる。
「
そういう声が聞こえて返却された解答用紙から目を上げると、同級生である
「……いいよ」
友達はおろか休み時間に話す相手もいない私に何の用だろう。彼の後ろをついていって廊下まで行く時にふと横目で教室を見ると、それなりにグループみたいなものができていた。
まあ、最初の試験が終わったわけだからね。ちょっとは息抜きもしたくなるか。
「和乃さんは、僕が同じ時間を繰り返していると言ったら信じる?」
「信じないね。まずは証拠を出してほしい」
そりゃ気心知れて相手が嘘をまずつかないとかならまだしも、タイムリープだって?
「ワンタイムパスワード。今から入れればこれが出るはず」
そう言って彼が見せる文字列は英数字混じりで五文字。ああ、ってことはあれだな、ゲーム通販サイトか。
「……準備がいいね」
一応開いておく。まだ半信半疑ではある。
「それと、以前の周のあなたから小学三年生の時の話を聞いた」
「……私が、話したんだ」
第三級の秘密。相手を信用しろ、という別の私からのメッセージ。これを本当に使ってることになるとは。
「続きを話した方がいい?」
「いや、結構。確認も取れた」
画面の文字列を確認し、スマホをスカートのポケットに入れる。男子はいいよな、スカートにはねじれがあるせいでポケットが一ヶ所しか無い。いやべつに禁止されてるわけでもないしスラックス履いてもいいんだけどね。冬にはありかも。
「よかった」
「それで、私に何の用?」
「暇になった」
「はぁ」
なんだ、Speedrunめいた無茶をする必要はない、と。
「だから、和乃さんと話したくて」
「……私のほうは、ほとんど話した記憶がないんだけどねぇ」
そう言って苦笑するが、直後にしまったなと思う。向こうはこういう私の会話を何度も聞かされているのかもな。
「大丈夫。いつも和乃さんとは楽しくやってる」
「いつも私がお世話になっております」
というか考えてみれば私が彼との会話でなにかやらかした可能性のほうが高いな。感謝と謝罪はコストゼロで制限なしに使える手札なので気軽に切っていこう。
「ええと、そう言われたのは初めてかも」
「……他の人と、やっぱり違う?」
私を彼が一発で見つけられるとは思えない。秘密を教えるまでにはそれなりの時間がかかっただろう。その間に他の人と話している可能性も高い。
「なんていうか、話が全部同じ方向に進んでいく感じがして」
「私は違うのか、まああまり碌でもない理由しか思いつかないな」
原因はmind-wandering癖かな。これなんて和訳するのが適切なんだろう。注意欠如ってのも違うし、不注意とか?
「でも、そのおかげで僕は助かってる」
「なによりで。ところで、いくつか確認していい?」
「ん?」
不思議そうに首を傾げる真山くん。
「ループについて、ざっくりでいいから教えて」
「ええと、不随意のタイムリープ。出る条件は回数らしいけど、具体的に何回やれば出れるのかはわからない。経験からしてそろそろだと思うけど」
「……最終周に私と話さないと、ループの証拠を伝えるのは難しいかな?」
「あ、それは以前試したけど大丈夫だった」
「ループできるのをいいことに好き勝手しやがって」
まあ、軽口である。どうせ記憶にないんだから嫌なふうに感じるのはあくまで感情的なものだ。理性的であれ。
「でも、そうした方がいいって言ったのは和乃さんなんだけど」
「以前の私が大変失礼なことをいたしました」
いや普通に失礼だろ、自分を騙せって指示するの。私にとってはともかく、彼にとっては別人だって割り切るのは難しいかもしれないし。
「今回の和乃さん、なんかいつもよりこう……物腰が柔らかい、かな。そういう気がする」
「なんだろうね、もっと傍若無人な感じだった?」
自分の行動と思考を遡って考えると、たぶん最初の方でやらかした罪悪感とかかな。
「いや、そういう意味じゃないけど……」
「冗談だよ。ちょっと意地の悪い対応をしちゃったお詫びだと思って」
というか自分でも自分の感情とかちゃんと把握できてないからね。
「そうする」
そう言って、彼はメタルバンドの腕時計を見る。
「……あとどれぐらいあるの?」
ループはかなり短いのかもしれない。数時間じゃないな。それなら放課後にゆっくり声をかければいい。私はこの後予定がないし、どこか誘えばついていくかも。
「一分ぐらい?」
「短っ」
「全部で十五分ぐらいだよ、それも英語の試験の解説があるから」
「ああ、十四分前って言うとそうだね」
短い期間だ。さて、この直後彼はどうなるのかな。いきなり気を失って倒れるとかされると面倒なんだが。意識が時間を超えて移動するならそういうこともありそうだし。おまけで肉体も消えてくれ。
「じゃあ、終わるまで他の子と話してくる」
「浮気者め」
ちょっと妬いている私がいる。まあこれは世界の中心に自分がいたいみたいなあれだ。嫌だねこういう幼稚なやつ。
「ま、終わったら私になにか奢ってもいいよ」
「そうさせてもら