今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

155 / 200
高校一年生 第九幕間 八

「……まあ、今やっても無駄になるかもしれないけどさ」

 

私は開いた画面を確認して言う。今やっているのは伝える内容の選定と、その後の行動案の作成だ。

 

真山くんはここしばらくループを経験していない。私が五月に記録を取り始めてからの最長記録を更新中だ。

 

もちろん、それが直ちに長いループを意味するわけではない。今までの傾向を見るに、一週間ぐらいなら普通に前後しうるしループ間が長かったとしても全体の周の数が増える傾向とかもない。

 

計算上は周数に1を代入すれば二ヶ月を超えるループとかになるのだが、これはループと呼んでいいのだろうか?ただ時間が経過しているだけでは?

 

その場合、ループを活用できるいい方法は思いつかない。本当は三周が一番いいのかもしれない。ループであることを私が知って、情報収集ができる時間がある。

 

ただ、今の段階ではその好機が訪れても十分に活用できない。昔作ったコード作成用プログラムはたまに改造をしているが、未来がそう変わらないとわかってしまったのであまり使わなくなった。

 

「……三周以上なら、多少リスクのある行動を取って変化を見るべきか?」

 

世界全体とまでは行かなくとも、それなりの人に影響を与える手段はある。爆破予告とか、事故の誘発とか。

 

やること自体は難しくはない。今から匿名掲示板とかで爆弾を仕掛けたってやればいい。通報されて捕まる可能性は十分にあるが。

 

一応、色々通信を噛ませれば辿るのが困難になることはわかっている。しかし相手は国家権力だ。少女一人が立ち向かうには強すぎる。

 

というわけで、もう少し穏当な方向で考えよう。株価の操作とかも考えたが、どうやれば投資家を動かすことができるのかがさっぱり予想がつかない。

 

値動きが大きくなる株の銘柄を真山くんに伝えてもらうとかも考えたが、大抵の場合は競馬で済んでしまうんだよな。本気で投資家になるとか億万長者になるとかならもっと考える必要はあるだろうけど。

 

結局は使いにくいのだ。もちろん誰かを救うとか、そういういい方向に使える可能性はあるわけですよ。でも、残念ながら私は十六年生きてきて数えるほどしかあの時に手を動かしていたらって後悔がないのだ。

 

「……ここであの時に行かなきゃよかった、って言わなくなったのはいいことなのかな」

 

ああまったく、夜は面倒なことを考えてしまう。こういう時は真山くんの声で頭をリセットするに限る。まあ寝ているかもしれない時間だが。

 

『寝てる?』

 

送信。おしまい。もし寝ていたら返信がないのでそれでいい。真山くんって寝付きいいのかな。眠っている真山くんを見たことがないのでわからない。

 

そう考えて、私はなんか悔しくなってくる。真山くんの寝顔とか、寝息とか、そういうのを知っていて、私に伝えようとしなかった私がいたんだよな。まあ真山くんの睡眠中に巻き戻ったのかもしれないけど、それはそれとして。

 

少し早いが眠ることにしよう、と思って布団に潜ると通知音。

 

『少しだけなら話せるよ』

 

『ありがとう』

 

少し過去のやり取りを遡る。二週間に一回ぐらい、か。もっとやったほうがいいのかな。それとも少ないほうがいいのかな。もっと真山くんからかけてくれるようにお願いするべきだろうか。

 

どれを選んでも今の関係と何か変わってしまいそうで、でも言わないと何かが消えてしまいそうな気がする。どうせこういうのは疲れと眠気から来る幻覚だろうけどさ。

 

着信音。受信。スピーカーモードに切り替え。

 

「どうしたの?」

 

「いや、少し変なことを考えちゃったから真山くんの声が聞きたくて」

 

思わせぶりな事を言ってしまっていないかな。もし何かあったら、真山くんはここに駆けつけてきかねない。まあ本当に何かあったときにはそうしてもらえるとたぶん助かるんだけど。

 

「……わかった。ええと、何か話したほうがいいよね」

 

「そうだね、でも私の方からはあまり話せることがなくて」

 

「……少し愚痴を言ってもいい?」

 

「いいよ?」

 

まあ電話をかけたのはこっちだ。そのぐらいは聞きますとも。

 

「好きな人が面白い話ができないからって謙遜してくるんだよ」

 

「……それは、まあその好きな人ってやつがまず間違いなく悪いよ、真山くんは悪くない」

 

「そう言って欲しくないんだけどな……」

 

なんてことだ、恋に悩む少年少女にはひとまず肯定の言葉を返して今付き合っている人を否定して慰めればいいって何かで読んだぞ。脳を破壊する系の本の導入だったかもしれないな。なら参考にするべきではなかったかもしれない。

 

「……私だって、せめて時間を奪うなら楽しい話を聞かせたいって思うんだよ」

 

「僕は和乃さんと話しているだけで結構幸せになるから大丈夫だよ」

 

「……ちょっとしばらく物音がするかもしれないけど気にしないで」

 

「……うん?いいけど」

 

息を吐いて、私はベッドの上をごろごろと転げ回る。いや転げすぎると落ちるから限定的だけどね。ここまでの言葉を言われるとは思っていなかった。特に今は学校と違って私的な空間で油断してたから威力が強い。

 

「大丈夫?」

 

「……気にしないで」

 

してやったり、とか真山くんに思われていたらちょっと嫌だな。今度何かで復讐してやろう。首筋へのキスとかなら無宣言でやってもセーフな範囲かな?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。