今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 九回目 二周目 二

ぼんやりと頭の中で私の弱点を考えていく。基本的に私は真山くんのことが好きだし、真山くんがしたいようなことは大抵は受け入れるはずだ。

 

なので問題は、何をするかである。クリスマスの逢引というのは恋人とかにとってのイベントである。儀式はそれ自体に意味がなくてもいい、だっけな。昔ホラーTRPGをやった時にオカルト好きの人が言ってた。

 

問題はそれを二人がどういうふうに意味づけるか。まあオーソドックスには告白。でもさ、クリスマスに一緒に二人で出かけるような仲の人間って告白しなくてもそういう関係じゃないか?

 

いや待て、そういう決めつけは恋愛至上主義的でよくないぞ。そういうのを互いに向けてないバディものとかもいいじゃないですか。

 

でも今回の事例では互いに事実上の告白もしてますしその指摘は当たらないのでは?それもそうか。

 

「……っと」

 

そういう自問自答をしていたので周囲の人たちからワンテンポ遅れて席から立つことになった。終業式。まったく、昨日の夜から考え事をしていたせいで眠い。冬休みは気をつけようねって話だった。毎回学期末に聞かされる話とそう違いはないよな。

 

「大丈夫?」

 

大あくびをしていたところを真山くんに見られてしまう。これだけでも私はちょっと嬉しくなってしまうのだ。なんとも単純なやつである。

 

「まぁ、ね」

 

にじみ出た涙を指で拭いながら、教室に戻る真山くんの隣をのんびり歩く。やっぱり楽しく話せる相手だってわかっている人がそばにいると気が楽だ。真山くんにとって私がそうであってくれたらもっと嬉しいけど。

 

「……その、難しいなら」

 

「簡単すぎるのが問題なんだよ、真山くんは知らないかもしれないけど、私って結構好きな人からされたことは好意的に捉えるようでさ」

 

「……どういうこと?」

 

「何をされても喜んじゃうってこと。たぶん自習室で過ごしたクリスマスも私はそれなり以上に日常として楽しんでいたと思う」

 

まあ前の周のことだからあくまで予測に過ぎないけどね。でも普段の私がどういうふうに過ごすかぐらいは想定できますよ。

 

「そっか」

 

「なのであまり無駄にデートプラン練っても無駄だよ、まあとっておきの方法はあるけど真山くんは実行しないだろうし」

 

「何その言い方」

 

「部屋の電気を暗くして私の部屋のベッドに押し倒すだけだよ」

 

私のスイッチが入る条件、と言えばいいのかな。切れるかもしれない。身体から緊張を抜いて、とりとめもない思考に身を委ねたりするような条件。油断するタイミングだし、この状態になると半ば自動的に身体から力が抜けてしまう。

 

なので昼間でもカーテンを閉じて部屋の電気消してスマホを見ていたりするんですね。明らかに不健康な行為である。まだ矯正が必要なほど視力が下がっていないのは奇跡かもしれない。そろそろ眼鏡かコンタクトレンズ作ったほうがいいかな。

 

「……ちょっと難しいかも」

 

「でしょ、あと年末の私の家族の予定って聞いた?」

 

真山くんは首を振る。そっか、話のネタにも出さなかったとすると今の私の想定通りの年末だったってことになるのかな。

 

「父はクリスマス休暇でたぶん二十三日ぐらいから家でダラダラしているかな。母は……どうだろ。いつ帰ってくるのかはちょっとわからない。年末はいるはず。年始には出かけてると思うけど」

 

人が集まる忘年会とか新年会とかは仕事のメインとはいえ、一応帰ってくる程度には家庭のことを考えているのだ。まあ月に何回か帰ってくることもあるけどね。そういう時はご飯作ってくれるので助かっています。でもちょっと話すのは苦手です。

 

「……それって、押し倒しても何もできないのでは?」

 

「まあ場合によっては真山くんの実家の方にも影響が及ぶ可能性があるな……」

 

「……結局ダメでは?」

 

「だから実行しないだろうしって言ったでしょ」

 

まあその場合は私が正直どう動くかがわからなさすぎる。前にされたときと場所とかシチュエーションとかが大きく異なるしね。まあ調子の乗っている今周の私なら押し倒し返すかな。いや押し返せるかな。ちょっとわからない。試してみてくれとも言えないし。

 

「あとは普通に街を回るとか?それはそれでいつもと違ったものが見れて楽しいと思うけど」

 

祭を回るようなものだ。まあこれをするための前提知識である普段の街の様子を知らないからそこまで楽しめるかはわからないけど。

 

「……それは、たぶん楽しい」

 

「真山くんは歩いている最中に手を繋がられたら歩けなくなりそうだけど」

 

「……そうかも」

 

まあ私だって真山くんのほうからそういう話を振られたならともかく、自分からは手を伸ばさないと思う。いやでも周囲の目がなくて寒かったら熱を奪うためにやるかもしれないな。

 

「だからさ、クリスマスのデートっていうのを一定以上の満足度で行うのが難しいんだよ……」

 

正直、真山くんと過ごす自習室以上の楽しさをちゃんと作れるかどうかがわからない。自分の底の浅さみたいなものを突きつけられているようで、あまりいい気分ではないな。ただまあ、やってやりますとも。

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