今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 九回目 二周目 三

「それでは資料をご覧下さい」

 

真山くんは学校支給のタブレット端末で私が作ったファイルを開く。

 

「……これを作ったの?」

 

「なんか深夜テンションで……」

 

三十枚ぐらいになった。まあ地図とか写真とかが多いのでそこまで書いた分量は多くないのだけれどもね。

 

「予定日は十二月二十四日。厳密にはクリスマスの前日になります。全体のプランですが、午前、午後、夕方、夜に四分割して考えます」

 

「はい」

 

「当日の気温を考えると、移動はそこまで多くないほうがいいでしょう。いわゆるデートスポットですが、次のページを確認してください」

 

私も手元のファイルを操作する。

 

「……多くない?」

 

「ひとまず挙げただけです。移動時間を考えるとある程度絞られますね。基本的に、私はおそらくどれでも楽しむ事ができます」

 

こういう口調を保っておかないと、自分が相当な惚気を吐いていることから思考をそらすことができない。

 

「……そう」

 

「喫茶店や水族館といった、すでに楽しんだ実績がある場所であっても悪くない選択となりえます。ただ、考慮すべきはその混雑ですね」

 

去年のクリスマスに日程を合わせてSNSを検索して出てきた写真と、その構図から推定される撮影場所。こんな分析のために徹夜をしたとかちょっと失敗だったかもしれない。楽しかったけど。

 

「私達はこういう明らかに明るいカップルに対して劣等感を持つ可能性があります。なのでいっそのこと、こういうものから距離を置いた達観的プランもあります」

 

試案として示しているのは古本屋とか文房具店とかを回るやつ。正直普段は入るのが怖いお店とかもあるので失敗前提で動くやつです。明らかなハズレは次の周で避ければいい。

 

「質問をいいですか?」

 

「どうぞ」

 

「……こういうことするんだったら、知らないお店とかを事前に色々調べておいたほうが良かった?」

 

「二人で失敗するのはたぶん楽しいけど、案内してもらっても嬉しいから、ここらへんは真山くんが準備しているかどうかはあまり関係ないと思う」

 

「そう……」

 

「……あとはまあ、必要に応じては私の嫉妬心を煽ったほうがいいかと思います。書いてないですけど」

 

「……いいの?」

 

「あまり煽りすぎるとちょっと怪我するかもしれないから気をつけて、としか言えないけど」

 

まあ偽装ラブホテルに連れ込むとかはお金の関係からないだろう。今周であれば結構糸目をつけず使うつもりであるが、次の周ではそこまで使えるわけではない。まあ両親に言えば追加出資ぐらいは期待できるが計画提出と結果報告は求められるだろう。

 

「……和乃さんは、さ」

 

「何でしょうか」

 

「僕と、その……そういうこと、したいの?」

 

「……キスとかハグとかなら、されたいって考えるだろうね。もっと先でもいいけど、そこらへんは雰囲気を考える必要が出てくる」

 

「……うん」

 

一応これでも知識についてはたまに紹介しているのでなんとかなっているといいのだが。いえ一応全年齢のサイトですよ?内容も私が確認して誤りが無いかどうかも確認しています。

 

いやね、物語としての関係性の中には読んだり演じたり演じられたりする分には好きだしよくやったけど、現実に持ってくると問題が多いものだってあるじゃないですか。首絞めは脳障害の可能性があるので普通はやめようね。

 

「そうなると二人きりになれる空間が欲しい。まあいろいろ考えてはいるけど自習室が強すぎるんだよね……」

 

候補のリストをまとめた個人用ファイルのページを見る。私か真山くんの家は誰かがいるだろうし、出かけてもらうのもちょっとあれだ。どこかに泊まりに行くのも年齢とお金から難しい。

 

となると、この部屋で鍵を締めて廊下から見えない死角で何かをするのが最適解になりかねないのだ。もちろんデメリットも大きいけどね。

 

「……ここ?」

 

「そう。でも放課後に毎回そういう雰囲気になっちゃうのは嫌でしょ?」

 

「……そう、かも」

 

「なので互いの私的な空間に留めるべき、だと思うな。別にデートして告白するだけならそういうことを今回のループに相当する時間にする必要もないし」

 

そう、今回のクリスマスの諸々をクライマックスとして位置づけるにあたって私は告白を選んだ。

 

もちろん、既に互いに好意は伝えている。でも、恋人としての関係になるという同意はしていない。もちろんそういう行為は必須ではないし、それに特別な意味を持たせ過ぎるのも問題ですが。

 

でも、私の中の作家性みたいなものが言うのですよ。クリスマスにデートして告白みたいな物語じみたこと、一回ぐらいはやってみたいじゃないですか。

 

そして、次の周にとっての私にとってはそれがサプライズとは言わなくとも十分な贈り物になるだろうことは今周の私が保証する。

 

「……怖い」

 

「知ってる。私だって怖いよ」

 

まあ、勇気を出さなくちゃいけないのは真山くんなのだ。その背をできるだけ押してあげる事ができればいいのだが。まあ崖の下に無責任に蹴り落とすみたいな事になっているかもしれないけど。

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