今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 九回目 二周目 六

時計は夕方五時半過ぎを指す。黒い窓の外。この自習室にわざわざ十二月二十五日の夜に通うのは私と真山くんぐらいのものだ。もうコードは共有してあるので、終わるのを待つぐらいしかやることはない。

 

「……そろそろ?」

 

「……そう。前の周でもここだった」

 

「何か話したの?数十分で私にデートを切り出せるほど悩んでいたなら話は別だけど」

 

今周の初め、私視点ではさっき送ってもらった真山くんがいきなり戻ってきてチャイムを鳴らしたわけだ。その移動時間で告白を決心するというよりは、そういう与太話を前の周の今ごろしていた可能性のほうがありそうなものだが。

 

「……話せなかった」

 

「そっか、次はできるといいね」

 

予想が外れた。言った言わないではなくて、言いたかったけど言えなかったのほうか。となるとループの使い方としては適切なのかもしれないな。できなかったこととか勇気が足りなかったことを、やり直すことができるというもの。

 

「……やるよ」

 

「いい意気込みだ。……こういうふうにさ、できなかったことをループで実行したことってどれぐらいある?」

 

「……そういう事がないようにループを過ごしてきたから、あまりわからない」

 

「まあそうだよね、やり直したいことなんて普通はあまりないし」

 

あるいは何かをやり直すことができるかもしれないと知って、その何かを考え始めるとかかもしれない。私ですらそうだ。他の人だったら、そもそも考えたことすらないかもしれない。

 

「……和乃さんは、そういう事ってある?」

 

「ないよ、少なくとも今は」

 

そりゃ目の前で真山くんがトラックに跳ねられて死んだとかならともかく、そうじゃなければ私は運命を受け入れるだろう。後悔はするだろうけどさ。

 

もちろん、小さい失敗を直したいとかはあるはず。でもループできる程度でなんとかなるものは、ループしなくてもなんとかなりそうなんだよな。

 

「……そうなんだ」

 

「あとは狙って戻れたとして、同じ期間をやり直したくはない」

 

真山くんがどうやって耐えているのか、あるいは耐えられていないのかは知らないが今までやってきたことがリセットされて関係性が戻るなんていうのは嫌だ。だから真山くんはループ中は戻ること前提の人間関係をやってきたわけだ。私以外は。

 

「……それって、和乃さんから見たらどうなの?」

 

「気がついたら好きな人が成長したような行動を取られるのは、ちょっと怖くはあるよね」

 

もちろん真山くんが成長しないって考えるのは良くないことだ。人間は変化するし、その過程で価値観が食い違ってしまうことはあるだろう。

 

三日間会わなかったら変わってしまう、みたいなのもあるし真山くんが過ごすループの長さはだいたいそのくらいだったりする。今回は長いので私の主観だと二週間強飛んでいるわけだけど。

 

「……そうだよね」

 

「でも、私はそれを理解した上で行動しているつもりだよ」

 

「……ありがとう」

 

「いいのいいの、真山くんもそれを受け入れてくれないと辛いでしょ?」

 

「……うん」

 

真山くんが持つ私への好意は、秘密を共有した相手に抱くものも混じっているだろう。それが別に不純だとは思わない。それを言ったらその関係が他の人の間に生まれないように罪悪感で縛ったどこかの周の私のほうがよっぽど酷い。

 

「まあ、そう考えると告白っていうのはループでの関係というもの以上の仲になろう、って意味になるかもね」

 

ループ中だけ協力するような関係もいいなって思うけど、いつもの関係がループの時も続くというのもそれはそれで良さそうだ。まあこれは私の趣味。

 

「……そういうのは、重くない?」

 

「どうせもう終わるからってズバスバ聞いてくるね、最初っからそれでも私はいいけど」

 

ちょっとだけ笑って気分を落ち着けて、私は思考を回す。重い、か。別に私は真山くんにそこまで負荷をかけられている印象はないんだよな。

 

「私は、頼まれたことはするし、頼まれてなくてもある程度はしようとするよ。それで壊れそうになったら止めてくれるぐらいの友達は、たぶん真山くん以外にもいるし」

 

「……ちょっとだけ複雑な気分」

 

「なに、クラスの隅の地味な子のいいところを知っているのは自分だけのつもりだったのに、その相手には実はちゃんと友人関係があって裏切られた気分?」

 

「そういう設定の物語とかあるの?」

 

「たぶんある、ぱっとは出てこないけど」

 

その場合の主人公はたぶん真山くんみたいな人ではないけどね。いやでもタイムリープものとしては有りか。でもヒロインの属性から文句が出てもおかしくないな。

 

うるさい。現実を物語として楽しむのは時々倫理的にまずいってことをちゃんと理解してればそこらへんはいいんだよ。私は誰に文句を言っているんだ。タイムリープ能力を真山くんに持たせたどこかの作者か?

 

「……そこまでじゃないよ、あと和乃さんって最初は本当に友達いなかったでしょ」

 

「それは次の周で言ったら普通に告白を蹴るぞ」

 

まあ、もう少しオブラートに包んでくれれば問題ないけどね。実際、高校に入って友達と胸を張って言えるようになった最初の相手は真山くんなのだ。なので今なら、笑い話として片付けてあげなくもない。

 

[二周目終了]

 

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