今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 十回目 二十五周目

人の気配で目を開ける。化学基礎の授業は終わっていた。顔をあげると私が授業前に貸した本を持った真山くん。

 

「ありがとう、読み終わったよ」

 

真山くんが私に心理学の本を渡しながら言う。さっきの授業の間にちょうど読み終わったということか。そんな短時間で読めるものでもないだろうとは思う。

 

授業が終わり、放課後までの短い時間。

 

「そろそろ終わり?」

 

「……どうだろ。まだ時間があるかもしれない」

 

「……そっか」

 

数えてないということだな。あえて、ということだろう。なら私はその選択を尊重するまでだ。

 

「面白かった、って言えばいいのかな」

 

「今ここで感想を言う?」

 

ネタバレが嫌なわけでは無いが、低くない確率で終わるのにわざわざ話すのもどうかとは思う。

 

「……忘れないうちに、言葉にしておきたくて」

 

「そっか」

 

「なんていうのか、色々自分の中で思っていたことがそういう時期があるんだって書かれてて、ちょっとだけすっきりした」

 

「よかったね」

 

ちょっとだけ辛さというのか、終わるだろう自分を想って胸が痛くなるような感覚がある。

 

「……和乃さん?」

 

「あとどれぐらいで、今周は終わり?」

 

「ホームルームが始まらないぐらいで」

 

「……そっか。それで、私たちってどういう感じだったの?」

 

「……どういうこと?」

 

「いや、ちょっと授業中に色々考えていたことがあって」

 

どこまで詳しく説明するかは難しい。もともとまとめるつもりもなかったとりとめもない思考だ。ただ、これが消えてしまうのは少しもったいないなと思ってしまう。

 

他の周の私に伝えてくれれば、この思索を続けることができるかもしれない、とは考えるものの実際にどこまで次やその先の私になるかはわからない。ただ、面倒な感情にあと数分向き合うよりも会話をしていたほうがいい気がした。

 

「どんなこと?」

 

「私が他の周で考えていたことを、真山くんは聞いているのかなって」

 

「……全部の周じゃないけど、何回か聞いたよ」

 

「どんな感じだった?」

 

「……たぶん本心だとは思わないけど」

 

「……それには同意するよ」

 

たぶん私の自制心とかがもう少し弱かったら、あるいは体調が良くなくてストレスへの耐性が低い状態だったら、ここで真山くんの胸ぐらを掴んでいてもおかしくないとは思う。

 

あるいは今の周の自分のことだけを考えて、何かを残そうとするとか。口の中で犬歯を舌の先でなぞるようにする。物理的な傷はループでは引き継がれないけど、痛みの記憶は残るだろうな。

 

「でも、たぶん僕と話しているときは楽しげだった」

 

「……私は楽しくても、真山くんは?」

 

「……毎回、この和乃さんとはお別れなんだって思わなくはないよ」

 

だろうね。それを意識させたくないって考えた周の私は寝たふりを続けたり、あるいは他愛もない考えについて話していたかもしれない。いつもそういうどうでもいいことを考えているので話す内容はいくらでもある。

 

「辛い思いをさせて、ごめん」

 

「和乃さんのほうが辛いと思うよ」

 

「わかるけど、あまり背負い込みすぎると壊れるよ」

 

「……そう、書いてあった」

 

真山くんは本に視線を落とす。へえ、面白いこと書いてあるな。

 

「具体的には?」

 

「親身になって寄り添うのも大切だけど、抱えている問題が寄り添って解決しないこともあるし、安易にやると自分も巻き込まれるって」

 

「だからカウンセラーって職業があるんだろうね」

 

私の精神的負荷を真山くんが負いたいって言ってくれるのは嬉しいが、私が毎周数時間づつ考えた世界への怨嗟を数十周分ぶつけられるとかは相当辛いだろう。

 

自分で考えていて嫌にもなるのだ。こういう面倒なぐるぐるした思考に真山くんがどれほど慣れているかは知らないが、まあ慣れていたとしても押し付けていいものではないだろう。

 

「……ループ中だったら、和乃さんの好きなことしていいからね」

 

「どういう意味?」

 

私はあくまで冷笑的な表情を向ける。好きなこと、ね。そう考えると、案外思い浮かばないものだ。

 

「……文字通りに」

 

「私は嫌だよ、知らないうちに好きな人が知らない人に傷をつけられているのは」

 

「……そっか」

 

「むしろそっちからしてもいいんだよ、授業を抜け出すぐらいならやるから」

 

「……今はしたくない」

 

「じゃあ仕方ないね」

 

相変わらず、ここらへんは平行線だ。たぶん互いに譲り合うことがあるとしたら、どちらかの基準が変化したときぐらいだ。やっぱりスキンシップとかその先を積極的に増やすべきかな。今考えても遅いか?

 

「……そうだね、今度から暇があったらハグの一つでも私にしてあげてよ」

 

「……わかった」

 

真山くんが頷いてくれた。よし。次以降の周の私たちよ、感謝してくれてもいいんだぞ。

 

「ところで、私の本は全部読み終わったの?」

 

「うん、両方とも」

 

それなりの厚さがあったのだが、まあ疲れとかなければ目を通すだけなら十数時間で行けるのかもしれない。私はどうだろ。毎日休み時間や夜に読んだりしているけど、合計ではどれぐらいで読み終わっているのかあまり意識したことがない。

 

「それはよかった。次からどうするの?」

 

「ネットの記事でも読むよ、化学基礎の先生は特に言ってこないし」

 

「それがい

 

[二十五周目終了]

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