今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第十一幕間
高校一年生 第十一幕間 一


放課後の勉強会。座っている場所は真山くんと同じ最前列。後で色々聞こうと思っていたことをまとめていたら、時間が過ぎ去っていく。

 

あのホームルームの後は色々話しかけられたりしたので、正直真山くんとちゃんと話す時間はなかった。このまま帰る時に会話してもいいが、それだとあまりゆっくりはできない。

 

いや、と画面上のキーボードを叩いていた指を止める。今日は父がおそらく遅い日だな。仕返しというか、お礼というか、まあそういう感じのことをするのはいいかもしれない。

 

ただそういう事をする前に今の問題を片付けましょう。はい。真剣に問題に向き合っていく。きちんと全体像を把握できればそう難しくはないよな。あとはミスをしないように。

 

答え合わせまでやって、教師役の人が今日の分の終わりを告げる。今日の生徒役の皆さまがわいわいと会話を交わしながら帰り支度をしていく。真山くんも話しているようだし待つか。

 

「結衣さん、鍵は私がやろうか?」

 

ちょっとぼんやりしていると同級生の友達の子が声をかけてきた。

 

「……お願い」

 

「何かあったの?」

 

彼女は心底心配そうに私の顔を覗き込む。いい人なんだけどね。ちょっとおせっかいに感じるところもある。でもそこがいいって思っています。

 

「大丈夫だよ、そう面倒なことじゃない」

 

「何かあったら言ってね。……特に真山くんのことなら、相談に乗るから」

 

「どうして?」

 

「真山くんと結衣さんって……こう、独特な関係でしょ?」

 

恋愛とかそういう枠に収めないあたり、彼女は誠実だ。真山くんと中学が同じだったので色々見ていたのもあるだろう。その頃はあまり特定の人と親密に付き合ったりするような人じゃなかったらしいしね。

 

「……まあね」

 

「真山くんって、そういうのはあまり得意じゃないと思うから」

 

「詳しいんだ」

 

「昔のことだけどね。高校に入ってからは性格変わった気もするし、たぶん結衣さんのせいだけど」

 

ちょっと悲しそうな声。表情が豊かというか、感情を表に出すというか。なので本当に彼女はたぶん真山くんのことを大切に思っているし、私を心配しているのだ。

 

「……ごめんね」

 

「何が?」

 

きょとんとされてしまった。えっと、じゃあこれは私の考え過ぎか。中学生の頃から好意を向けていた相手が高校に入って性格が変わって自分ではない誰かと親密になったとかそういうのだとこういうふうにはならないはずだ。こういうのがすぐ出てくるのはそういう話とかシナリオが好きだったせいです。

 

「……その、真山くんを変えてしまって」

 

「いいのいいの!正直私は二人を見るの大好きだし、こう、いいんだよ、なんていうか……」

 

言語化が間に合っていないらしい。ここらへんは昔の好きなことを思いっきり楽しめていた頃の私と似ているのでどこか親近感がある。かわいいし。

 

「……どういたしまして」

 

「ところで、その……どこまで行ってるか、って聞いていい?」

 

「へえ、私と真山くんが付き合ってるみたいな言い方だね」

 

「違ったらごめん!」

 

そう言いながらもう両手を合わせて謝るポーズを取っている。用意周到だ。そういう事をされるともともと責めるつもりもなかったがちょっと面白いことを言ってみるか、という気分になる。

 

「……ここだけの話、だけどね」

 

「うん」

 

「去年のクリスマスに告白された」

 

「ありがとうございます」

 

とても真剣な口調で、とても丁寧に、なぜかはわからないけどお礼をしてもらった。いいことをすると気分が良くなるな。

 

「でもそうか、結衣さんが相手か。昔の真山くんからしたらちょっと意外って思うけど」

 

「そうなの?」

 

「そもそも人付き合い少なかったし、あまり恋愛とかしそうじゃなかったから別にどんな相手ならそれらしいかとかないんだけど」

 

「……覚えていたらでいいんだけど、今度その頃の話を聞いていい?」

 

「卒業アルバムとか見る?」

 

「見たい」

 

「……あまり見ないでほしいな」

 

隣から声がしたのでびっくりして顔を向けると真山くんが立っていた。そうか一緒に帰ろうと私を待っていてくれたんだな。で、遅かったので様子を見に来たとかそんなところだろう。

 

「結衣さんのアカウントってこれだっけ」

 

彼女は急いでスマホを取り出し、メッセージの画面を見せる。

 

「それ」

 

「じゃあ詳しい話はまた後で!ごめんね真山くん、大切な人と過ごす時間を奪っちゃって」

 

そう言って、彼女はてきぱきと教室の鍵を閉めに前の扉の方に走っていった。

 

「……これ、僕がどう答えても怒られない?」

 

よくダブルバインドに気がつきましたね。肯定するとちょっと恥ずかしがった私が八つ当たりするし、否定したら私は大切じゃないのかと言うつもりだった。

 

「去ってくれてよかったね」

 

「……僕と帰るの、面倒だって思わない?」

 

「いや普通に夜道は一人よりも二人のほうがいいから」

 

「……そう」

 

「二人とも!早く出てくれないと私が閉めれない!」

 

「ごめんなさい!」

 

私は手にキーホルダーを持った彼女に謝って、真山くんの袖を掴んで暗い廊下に引っ張った。

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