今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第四幕間 二

「一旦現状を整理するね」

 

そう言って私はちょっと真山くんの後ろを確認する。もちろん誰もいない。

 

「うん」

 

「今回のループは十五分ぐらいのを八十周ほど。ってことは一日弱の間ループをしてたんだよね」

 

「そうなるね、ただ正直そういう気はしない」

 

「というと?」

 

「夢ってさ、そう長くないはずの時間に見ているはずなのに中では数年経ってるとかない?」

 

「……ありそうな話だよね」

 

私はあまり夢を覚えない。毎日記録取ったりすると思い出しやすくなったりとかするらしいけど、あまりそこまでする必要も感じない。

 

「そんな感じ。ループが始まった前のことが少し怪しかったりもするけど、一晩寝たら忘れちゃうことだってあるでしょ?」

 

「でも、何かきっかけがあると思い出せる」

 

「そういう感じ。あとは夏休み明けでも学校への道は間違えない、っていうのでもいい?」

 

頷く私。染み付いた習慣というのは時間が経ってもなかなか抜けないものだ。

 

「長く通っていた場所に行く道を間違えて通ってしまう、みたいなことはないの?」

 

ちなみにこれは私の実体験である。中学校の方に行く道を歩いて急いで引き返したのは二回だったかな。

 

「……ある」

 

「あるかぁ」

 

そう言って、私はまたドーナツを一口食べる。全体の三分の一ほどが食べられた計算だ。

 

「ループ内のことは、どれぐらい覚えてる?」

 

「一言一句まで、とは言わないけどなんとなくは。あまり一つのループで話し込んだことがないから、和乃さんと話すのは少し変な感じだったけれども」

 

「毎回毎回、私は真山さんのこと忘れてたんでしょう?」

 

「覚えてないというか、そもそも知らないんだから仕方がないけど」

 

ああ、これ互いに相手の視点で捉えているな。まあ相手がいいやつだって思おう。こういうところあるから、私はちゃんと秘密を託したのかな。

 

「私は、出た後の話をしていた?」

 

「……いくつか」

 

「まあ、奢ってとは言ったらしいね」

 

「あとは、僕からの質問に一つ答えてくれるって言ってた」

 

「それは特定の質問?それとも任意の質問?」

 

私の二者択一的な言い方に真山くんはやり込められたというか躓いたというか、そういう感じで話を止めてしまう。あっ何かやらかしたな。なんだろう。もしこれが以前の周の私の発言に絡んでいるならどうしようもないけど。

 

「……今は、ちょっとその話は飛ばしてほしい」

 

袖で口元を押さえた彼がちょっと辛そうに言う。

 

「ごめん、なら他の話にしよう。何か私が準備しておくことはある?」

 

「準備……って、何の?」

 

「次のループの回」

 

「いいの?」

 

「一日でもそれなりに疲れてない?もっと長い、例えば一週間ぐらいのものがあったりしたら徒労感で壊れちゃうでしょ」

 

ちょっとこれは賭けみたいなところがあった。自分に頼って欲しいっていう感情がなかったと言えば嘘になる。

 

「……お願い」

 

「いいよ」

 

「それで思い出したんだけど、話の話をしていた」

 

「はなしのはなし、ねぇ」

 

「話の内容をスマホのアプリを使って決めるって話」

 

「なるほど、ランダマイザか」

 

三題噺みたいなやつなら、語彙リストを用意すればいいのかな。

 

「ランダムにするもの、みたいな意味?」

 

「そう。ただ、何を鍵とするかだなぁ」

 

乱数生成は普通は時間とか使うんだっけ?ただ、同じタイミングで話しかけてくることも十分考えられる。となると、変わるはずの物を使えばいいか?

 

「僕が振ればいいって」

 

「加速度か。それならセンサーから取れる」

 

コードを書くだけならそう難しくはない感じがする。ただ、実際にはやったことがないので試すしかない。アプリって簡単に作れるものだっけ?

 

「ところで、ループで行動を変えてもいつも同じ結末みたいなことってない?」

 

「……あったり、なかったり」

 

「多少無茶に思えることがあって、あたかも最初からそういうふうに定められたかのように同じ現象が起こることは?」

 

ループものの定番だ。もし解決しなければならない条件があって、それが変わったことでループが解除されているとしたら?

 

「たぶん和乃さんが求めているようなのはない。自転車で踏切に突っ込むようなものでしょ?和乃さんが言うには、僕のループは不随意のものだって」

 

「そう。……ってなると、物語として使いにくいループだな」

 

どうやら今の私は作者というか編集というか、そういうモードらしい。

 

「使いにくい?」

 

よくわからない概念を突っ込まれたような顔をしている。まあそれもそうか。こういうメタな考え方をするの、実はちょっとした特殊技能らしい。普通は自分の主人公としてのアピールポイントを考えたりしないのよ。

 

「何かを解決したら終わりとか、逆に言えば何かを解決させるために主人公を動かすとか。そういう原動力がない。まあ真山さんは自分でそれを見つけているからいいけど」

 

自分からほとんど知らない人に話しかけるというのは、物語としてどうなんだろう。私は人物書き分けがそこまでできないから無理ってだけで、そういう短編集みたいなやつも行けるのかもしれない。

 

「あまり、そういう事考えてなかった」

 

「タイムリープをしている以上、物語だったら主人公、そうでなくとも世界の特異点の可能性があるんだから色々楽しまないと」

 

そう言って、私は水を飲んだ。彼のコップはまだ水が半分も残っていたのに、私のは空っぽだった。

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