今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第十一幕間 六

真山くんにはちょっと今日の放課後は別件があるのでと断って、私は近くのドーナツ屋に行く。私が関わった最初のループの後で真山くんと行ったところだ。

 

「相談料はドーナツ二つね」

 

「よく食べるな……」

 

「今日はセールだからいいでしょ」

 

ちょっと割引されているのでまあいいか。私もあったかいドリンク頼んでしまおう。ちなみに彼女は飲み物分は自分で払うようだ。ここらへんは好きだな。

 

「で、真山くんの話だよね。私は彼のことあまり知らないんだけど」

 

そう言って彼女が大きめに一口ドーナツを齧る。

 

「ええと、もともと英語の問題がわからないって話が春の最初の定期試験であって、話し始めたのはそこからかな」

 

そんな会話をしながら、私は頭の中で少しおぼろげになっていた記憶をカバーストーリーで塗りつぶしていく。

 

「それで自習室で一緒に勉強することになってさ」

 

「……なるほど。で、具体的にはどういう関係なの?ユイちゃんはそこはぐらかしてるよね。言いたくないの?」

 

かなり直球だ。ぐさりと来てしまう。

 

「……恋人、だよ。そういう事になっている」

 

「告白はどっちから?」

 

「……真山くんから」

 

実際のところは私がその背中を押したので、真山くんがそこまで積極的だったかというと怪しくはあるのだがこれをちゃんと説明できるとは思えない。

 

「翔太くんがそこまでするってことは、ユイちゃんのことが相当好きなんでしょ?」

 

「……うん」

 

「それはそれとして、ユイちゃんはそういう関係を重く感じたりしている?」

 

「……重いのは、私の方かもしれないし」

 

「あのね、私が聞いてるのはあなたがどう思っているか」

 

「……面倒だな、って思わないわけじゃないよ、でも恋人ってある程度そういうものでしょ」

 

プレゼントを貰ったら、相手に何を返すべきか考えてしまう。一方的に何かをしたりされたりするのが嫌なので、どこかで釣り合いを取ろうとする。依存関係にならないように、常に距離を調整しなくちゃいけない。

 

「まあね、手を抜くと関係ってすぐ崩れるから」

 

そう言って彼女は抹茶ラテを飲む。

 

「おいしいの?」

 

「なかなか」

 

そう。今度頼んでみようかな。面倒だったら真山くん経由でいつかの私に飲んでもらって感想聞けばいいか。

 

「……頑張りたくないってわけじゃないけど、失敗したらどうしようかって思うことがあって」

 

真山くんの秘密を私は握っているので、それを使って脅すようにして関係を続けることも理論上はできなくはないけどさ。それは駄目でしょ。私はそういうふうに相手を縛り続けることができるほど器用でもなければクズになり通せるわけでもない。

 

それなら、どうせいつか失敗する運命とかの可能性があるなら、最初っからそういうものがなくてもいいんじゃないかって気がしている。

 

「だからと言って今ここで手を抜くのは違うっていうのは、私が言葉にしていったほうがいい?」

 

「……言ってくれると助かる」

 

「なら言うね。互いにちょっと気負い過ぎなんじゃない?まあ私が部外者で二人の関係がどうなろうと知ったことじゃないからこういうふうに言えるのかもしれないけど」

 

まあ私だってドーナツ二個分でそこまで親身に話を聞いてもらうつもりではなかったが、それでもちゃんと割り切って見てくれるのはありがたいものだ。

 

「外部の視点が欲しかったから。そうか、でもいいのかな……」

 

「そもそも今の関係だって、聞いたところだと毎日自習して、せいぜいたまに週末に遊ぶぐらいでしょ?同棲しているわけでもなければ日常生活を分担しているわけでもないんだし」

 

「そこまでじゃないかな、まだ」

 

「……まだ、なんだ」

 

彼女はそう言って息を吐いた。

 

「……うまく行けば、だけどさ」

 

「うまくいかなくてもそういうことはできるよ、私の家はそうだから」

 

「……うん」

 

「まあそんな深刻になられても困るけどね!距離取ってるってだけでそれぞれで私とお姉ちゃんには愛情注いでくれてるからいいんだけど」

 

「そういうのでいいんだ」

 

「いいのいいの、全部完璧にしようったって無理があるんだから」

 

ちょっとだけ気が楽になったが、話に乗せられているだけじゃないかとも思ってしまったので改めて私も自分のドーナツを食べる。ちなみに私の分は一個だ。

 

「でもいいな、そういう話をあまり聞くことがなかったから新鮮で」

 

「……そういうの、あまりないの?」

 

「私に?……まあ、ないかな。そういう相手も少ないし」

 

「そうなんだ……」

 

案外かっこいいので一部の層からは人気がありそうなものなのだが。そっちの層と相性が悪いのかもしれないからまああまり言わなくてもいいか。

 

「でも話を聞いた感じ、ユイちゃんはしっかり悩んでいていいと思うよ。翔太くんにそれを伝えていればもっといいかもしれないけど」

 

「言ったほうがいいかな?」

 

「馬鹿正直に何もかも言う必要はないけどね、悩んでいたりするって事自体は伝えておくと相手も割り切れると思うよ」

 

「そういうものかな」

 

「どうせ似たもの同士でしょ?翔太くんも考え込んで他人にちゃんと本心伝えなさそうなキャラしてるし」

 

まあ確かに言われればそうかもしれない。次のループが来る前に一回相談しておくか。

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