今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第十一幕間 九

大学の学食でご飯。規模が高校のものの数倍ある。見た感じは学生があまりいないのだが、わざわざ見学者のためにやっているのだろうか。

 

「何頼むの?」

 

「……私はカレーにする」

 

だいたいハズレがないやつ。あとはラーメンもかな。でも今日はちょっとカレーの気分なのだ。ちょっと手間取りながらも支払いは電子マネーで済ませる。

 

真山くんはうどんにしたらしい。なるほど。比較的空いている周囲を見渡して、いい感じの席につく。ええと、私達以外に高校生ってどれぐらいいるのかな。なんか暗い雰囲気の人はたぶん大学生だと思うけど。

 

「さっきの授業、難しかったね」

 

「和乃さんでもそうなんだ」

 

さっきまでやっていた模擬授業の話。プログラミングは授業でやるけど、じゃあ具体的にそういう計算をコンピュータはどういうふうに処理しているのか、という話だった。ちゃんと入試に出てくるような問題と絡めてくれていたのも面白かった。

 

ただ、周りの雰囲気と真山くんの反応からしてちょっと難しすぎたような気もする。いや、私にとってはわかりにくかったわけじゃないですよ。むしろ知らない概念だけどすっと入ってきてくれていた。

 

それでも学んだことが多いのでちょっと飲み込むのに時間がかかる感じ。でもいいな、将来の進路に情報系を追加しておく。こういうのに結構影響されやすいのかもな。まあ何も決まっていなかったので、少し参考になるものができた分今日来た意味があったと考えよう。

 

「午後はどうする?」

 

「全体の受験系の話聞こうかなって。個別相談するほどではないし」

 

勝手な感想だが、この大学は今日のイベントにかなり力を入れているように感じる。やはりそもそもの受験者数が少ないのだろうか。私はスマホで受験生向けサイトを開きながらスプーンを動かす。

 

「……普通のうどんだ」

 

「そりゃ特別なものはそうそう出てこないでしょ……」

 

平日は日替わりメニューとかあるらしいけどね。今日は土曜日なのだ。ああやっぱり、ここしばらく倍率が下がっている。つまりは志願者数が少なくなっているということだ。こういうイベントで引き込みたいのだろう。

 

「あとはキャンパス見学とかもできるって」

 

「えっどこ?」

 

私の質問に真山くんは手の中にあった紙の隅の文字を見せる。ちゃんとそこまで読み切れていなかった。

 

「図書館……」

 

「気になる?」

 

「少し、ね」

 

タイムテーブルと見比べて、余裕のある時間とかを考えていく。ちょっと早めに食べて図書館に寄って、その後メインホールなるところで開かれる説明会に行こう。そうと決まればちょっとスプーンに盛る量を増やして口を大きく開けることにする。

 

「……よく食べるね」

 

「育ち盛りだから」

 

そこまで考えて、真山くんとペースを合わせなくちゃなとちょっと食べる量を控えめにする。こういうコントロール、もう少し上手になりたいよな。相手に変な気遣いとかさせたくない。練習とか経験ぐらいしかこういうものの解決にはならないのかな。

 

食器を戻して、また冷たい感じの外へ。自動ドアに今月の営業予定が書いてあったのでちょっと見ておく。

 

「来月からは入試になるんだね」

 

「……あと、二年だね」

 

「二年前のことを考えると、それだけあれば何でもできる気がするな……」

 

その時には私は中学生二年生ですよ。あの生意気で今から考えるとかなり恥ずかしいことを平気でしていたような年頃です。あの界隈に戻ることがあっても絶対別名義を使おう。

 

「僕は……あまり変わった気がしないな」

 

「そう?私が知ってる範囲でも真山くんはそれなりに変わっている気がするけど」

 

私と関わったことが、真山くんにあまり影響を与えていないとしたらちょっと悲しくはある。いや、だからといって傷をつけたいわけじゃない、とまでは否定できないな。こっちの方向で考えるのはやめておこう。

 

「……そう、かな」

 

「そうだよ」

 

「……あまり変わりたくは、ないかも」

 

「どうして?」

 

「……和乃さんは、今の僕が好きでしょ?」

 

「変わった真山くんもそうそう嫌いにはならないと思うけどね」

 

図書館までの道を進みながら私は言う。

 

「……本当?」

 

「そりゃいきなり性格がガラリと変わって私を殴るようになったりすれば別だけど」

 

「……殴らないよ」

 

「人間なにするかわからないから断言しないほうがいいよ、私が物理的か精神的かはともかく暴力振るうようになったら逃げてほしいし」

 

「……うん」

 

「まあそういうこと考えるのは今じゃなくてもいいか、ここ?」

 

「そのはず」

 

自由に入っていいらしいのでゲートを通過。街の図書館とはまた違った、専門書の多い感じの本棚がずらりと並んでいる。そうそう、こういうのが好きなんですよ。あまり街の図書館ではこういうの見れませんからね。

 

「……楽しそうだね」

 

「わかる?」

 

ずらりと並んだ本に私は意識を集中させる。興奮で無意識につま先を動かしてしまう。真山くんはちょっと無視。いやこういう機会はあまりありませんからね。しっかり楽しまないと。

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