今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 十一回目 四周目 一

『ゆわちゃん、元気だった?』

 

ヘッドセットから聞こえる声は、懐かしい女性のもの。二年前にこのサーバーを抜けたときと同じような落ち着く声。

 

「……ええ、なんとか」

 

一対一の通話だ。特に記録とかもされていないはずだ。

 

『で、先ほどもらったメッセージだけど』

 

前の周の私達がやったように、今周も私は懐かしのサーバーに戻ってちょっとキャリア相談をしている。まあ真山くん経由で大体知りたいことはわかっているんだけどさ。

 

「どう思います?」

 

ただ、今周はちょっと寄り道。散々TRPGで振り回してくれたこの人の推理能力を確認しておきたい。

 

『そうね、予知あるいはなんらかの地理的影響を与えることができる巨大なエネルギー源の制御ができる、とか?』

 

私が渡したのは、送信一時間後ぐらいに起こった地震の時間、震源地、マグニチュード。検索すれば世界中で定期的に小さな地震は起きているが、それがいつ起こるかは予測できないはずだ。

 

いや、確かに人工地震みたいなものはありますよ。地殻の構造とかの研究のためにするやつ。実際、私が示した程度のマグニチュードであれば核爆弾とか大量の爆薬を用意すれば地震を起こすことはできる。

 

「似たようなものです」

 

『そういうこと、いつからできるようになった?』

 

「高校入ってすぐですので、一年弱前です」

 

『……もし聞いてよければ、ゆわちゃんの年齢と学年を教えて』

 

「十六歳、高校一年生」

 

『……魔法少女にでもなった?』

 

「前もそんな事言っていましたね」

 

真山くん経由での伝言。あくまで今回は私がそういう異常現象の中心人物として振る舞うことを目的としている。これは真山くんにまで影響が及ばないようにするためだ。

 

『ループ』

 

まあ私の発言からすればそういうふうに推測するのは妥当だよな。

 

「そうです、って言って信じます?」

 

『私を騙そうとしているならもう少しちゃんと練れる人だと思うよ、ゆわちゃんは』

 

「……ええ」

 

『どのタイプか聞ける?意識?メッセージ送信型?あるいはマスコットキャラクターが伝言をくれる感じ?』

 

多分偶然だと思うが、最後のやつが大当たりなんですよね。なのでそうじゃない方向に持っていこう。

 

「意識のタイプです。あと魔法少女に引きずられすぎていませんか?」

 

『私みたいなあまり将来に期待のないお姉さんはね、魔法少女になりたいものなのよ』

 

「そういうものなんですか」

 

『ゆわちゃんもあと十年もすればわかるわよ』

 

「わかりたくないですね……」

 

ちなみに私はまだ若いので日常の裏で起こる超常的な色々に無能力者の身で関わりたいタイプだ。

 

『周期は月に一回ぐらい、って言ってた事を考えると今まで十回かそこら、経験があるということ?』

 

「そうですね」

 

『……今はループ中?』

 

「はい」

 

『なるほど、確かにそれなら秘密が漏れる心配は最小限にできる。ところで、誰か現実の知り合いにもこういう情報って共有してる?』

 

「……うん」

 

一瞬だけ思考が混乱したが、そういうことにする。まあ嘘というか矛盾がバレたら逃げて次の周に回すとしよう。ループというのは本当に便利だ。私が主体的に使えればもっといいのだけれども。

 

『その相手は、信頼できる人?』

 

「……たぶん」

 

『特別な関係にある?』

 

「……はい」

 

『その相手に好意を持っている?』

 

「……はい」

 

『騙されている可能性は、考慮した?』

 

「どういう、ことですか」

 

『ループができるなら、巨万の富とまでは言わなくともそれなりの金額を手に入れることができる。あなたを拘束して秘密を吐き出させるような施設を作ってもお釣りが来るぐらいには』

 

「そこらへんは私も想定しましたが、そこまで実用性がないんですよ。いつ起こるかわからないループですし」

 

『……なるほど。それで、その相手にはどういう事してるの?相手が記憶を引き継ぐことはないんでしょ?』

 

「……別に、話を聞いてもらったり一緒にどこか行ったり、ってぐらいですよ」

 

『二人の問題は二人で解決すべき、というのは置いておいてそうね……』

 

少し長考に入ったようだ。この間に詰まった息を吐いておこう。

 

『私が協力できることはある?』

 

「普通にキャリア相談したいんですが」

 

『定期的に起こるだろうとはいえ、それなりに希少なループをそんな事に?』

 

「私を大切にしてくれるってことがほぼ確実な人と話すのはそう悪い使い方ではないと思いますが」

 

『そう。でも以降はこういうことしないことをおすすめする』

 

「どうしてですか?」

 

『ゲームをやる時に、相手が既にオチを知っているかもしれないって興醒めでしょ』

 

「……そんな理由で?」

 

『私は自分しか答えを知らない謎にみんなが苦しんでいるのを見るのが好きだから』

 

「……人のことをとやかく言えるんですか?」

 

『なので、ループになっちゃったら気軽にキャンセルとかしていいからね』

 

「……はい」

 

なんていうか、面白い会話になった。とはいえこの全部を伝えることはできないし、このあとの相談とかの内容を含めると次の周に渡すことができる情報は少なくなりそうだな。

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