今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 十一回目 八周目 二

朝ご飯とお昼ご飯を合わせた食事からそれなりに経って小腹も空いてきた。ちょうどいいぐらいの空腹感で、ちょっと息を切らせながら喫茶店の扉を押す。ここの味は私を含めた私達と真山くんのお墨付きだ。

 

「ごめんね、待たせた」

 

これは純粋に私が予定から三分ぐらい遅れたためである。何度も来ている気がしたが、真山くんは私と来ていても私が来たことのある回数は少ないんだよな。まあ迷ったのも準備が甘かったということで言い訳にはならないだろう。

 

「そんな待ってないよ」

 

「予定時間を過ぎているので……」

 

というか真山くんの落ち着き具合からすると待ち合わせの何分か前に来ているわけだよな。ループ一周の時間は限られていて、それを終えたら説明とかを再度させる必要があるわけだ。それはちょっと、うん。

 

「フレンチトースト二つ」

 

「あと……和乃さんはブラックでいい?」

 

「いや、今日はちょっと甘いのにする。カフェオレ二つで」

 

さくっと注文を終わらせてメニューを立てかけ、私は正面の相手を見つめる。

 

「まずは私の謝罪から」

 

「いいよそんな、僕だって」

 

「いいから聞いて」

 

「はい」

 

「……まず、秘密を安易に第三者に伝えたことについて」

 

こういう言い方がいいのかはわからない。どうせ終わる私が頭を下げてどこまで真山くんが満足するかも未知数だ。でもここで言っておけば他の周での行動がスムーズにはなるだろう。

 

「……それは、仕方がないって思うよ」

 

「ただ、ちゃんと説明するべきだった。納得してないならするべきじゃなかったし、私は調子に乗ってリスクのある発言をしていた」

 

以前の時にコードとして頼んだものは、地震の起こるタイミングだった。未来予知やタイムリープの根拠としては十分なものだが、それを提示した上で冗談でしたとかでは済まされない。

 

「でも、それは和乃さんが必要だって考えていたんだよね」

 

「逃げ道を考えないのは私らしくないよ、ループがいきなり終わる可能性だって完全に否定できたわけじゃないんだから」

 

規則性があるからと言って、それがずっと続くという確証はない。何せ他の物理法則とかにまとめて喧嘩を売っているような現象であるタイムリープに関することなのだ。とはいえ、というかだからこそ証拠のない与太話の範囲であれば別に誰かに聞かれる恐れのある場所で会話するぐらいは許容範囲だと思う。

 

「……和乃さんは、どうすればよかったと思うの?」

 

責められているような言葉使いだけど、たぶんこれは純粋に私の言いたいことが混乱しているせいだな。よくない。一旦落ち着いて運ばれてきたカフェオレを飲む。

 

甘さと苦さが適度に興奮を落ち着けて冷静さを高めてくれる。糖分にはともかくカフェインにそういう作用ってあったっけ。プラシーボ効果な気もするが気分転換になったからいいか。

 

「どういう人だったかを確認するのにループを使うべきだった。どうせ回数はそれなりにあるし、他の人経由で確認もできた。リスクを取るなら、そう言う方向に使うべきだった」

 

「……そう、なんだ」

 

「真山くんはどう思う?」

 

「……僕からは、それについては特にないな」

 

「そっか」

 

責めてくれればまだマシだったんだがな。まあでもここからが本題だ。謝るのはいい気分ではないが、だからといって避けていいものではない。

 

「それと、無理に言わせてごめん」

 

「何を?」

 

「私のことを好きで、独占欲とかそういうものを持っているってなかなか言いたくないよね」

 

かなり直球に言った。だって他にどうしろっていうんですか。真山くんは俯くように頷くだけ。

 

「それは嬉しいよ。本当に。誰かに好かれるって難しいことだし、私はそれが好きだから」

 

「……うん」

 

「ただ、私は昔それに溺れちゃって失敗したって思っている。そこは注意してほしいな」

 

ここは譲れない。一緒にダメになるのはその瞬間では素晴らしいものかもしれないけど、私は真山くんとの関係をそんな刹那的なものとして扱いたくはない。

 

「……はい」

 

「それと、したいことがあったら……特にループ中だったら、あまり私の側からの合意を考えずに行動していいからね」

 

「……和乃さんは、それでいいの?」

 

「そもそもループに付き合うっていうのはそういうことでしょ?」

 

「……そっか」

 

そんな話をしていたらフレンチトーストが来たので私はもぐもぐと食べる。真山くんと合わせるべきだとか、あくまで会話の合間に食べるべきだとかそういう常識はあるけどこのおいしいものを冷ましてしまうのはもったいないじゃないですか。

 

「ほら、一旦食べない?」

 

「そうだね」

 

ちょっと真山くんの顔が明るくなった。良いことだ。この年頃の少年はいっぱい食べているのがいいのだ。それは私の趣味ではないか?

 

「……和乃さんって、このあと暇?」

 

「そうだね」

 

「……色々教えて欲しいことがあるんだけど、いい?」

 

「……いいよ、私にできる範囲なら」

 

どんな事かな、と私はあまり期待しないで考える。いや別に真山くんが何をしてきても失望するとかはないだろうし、できるだけ真剣に向き合おうとは思うけどね。

 

[八周目終了]

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