高校に入って最初の中間試験のテストを改めて確認しながら、私は少し笑みを浮かべる。
「
そういう声が聞こえて返却された解答用紙から目を上げると、同級生である
「……どうも」
真山
「この前読んでいた英語の本ってSF?」
「んー……」
一応広義のSFではある。とはいえかなり
「まあ、そう」
これ以上は聞かれたら話せばいいか。ほとんど初対面みたいな人に引かれたくはないし。
「和乃さんって、そういうものが好きなの?」
「生きがい……って言っていいぐらいかな」
実際勉強よりもこっちに時間はかけてるし。学生の本分はどこへやら、だ。
「そういうと、タイムマシンとかも信じてるの?」
「信じる、って言い方はどうだろ。でも実現できたほうが楽しいし、既に実現しているって考えるのもいいよね」
「既に、って誰かが作ってるの?」
「さぁ」
そう言って私は精一杯の口角の上がらない笑顔を彼に向ける。
「でもそういう想像って楽しいよね、僕もたまにする」
「真山さんはわかるほうなんだ」
おっなんだ?同類か?とはいえここで一気にまくしたてるようでは良くないですよお嬢さん。こういうときはゆっくりと、忍耐深くやるのです。釣りと同じでございますよ。やったことないけどな。
「うん。タイムリープができたらとか考えるし」
「……時間跳躍?筒井康隆以降の?」
「時をかける少女は映画しかちゃんと見てない。アニメの方だけど」
「なるほどね」
SFは好き。とはいえ古典を漁って読んだりとか海外から未訳を取り寄せるほどではない、と。当然だ。そんなやばい高校生がそうそういてたまるか。
「……だからさ、もしタイムリープしたら誰も信じてくれないんじゃないかとか考えて夜眠れなくなる」
「それは普通に体調不良とかの可能性があるから、本格的に続くようだったら専門家の意見を聞いたほうがいいよ」
「大丈夫だよ」
本当かなぁ。思春期は色々と悩む時期なのだ。必要になるかもしれないしスクールカウンセラーさんの顔と名前を覚えておくのもいいかもしれない。
「……そうだね、もしそういう事があったら証明が必要になるのはある。例えばもとの小説のほうでは地震と火事がトリガーになっていた。バック・トゥ・ザ・フューチャーでは未来で知っていた雷のタイミングが重要だったし、そういう自然現象を使うのはひとつある」
「でもそれは、めったに起こらないよね」
「あとは三周以上必要だけど、One-Time Passwordを使うとか?」
「なにそれ」
「んー、ちょっと待ってね」
私は周囲を見渡してからスマホを取り出す。中学時代は授業開始時に先生に預けることになっていたからまだ気にしてしまう感覚が残ってしまっているんだよな。
「こういうもの」
ゲーム通販サイトのアプリを開く。久しぶりにログインしたときなんかに質問されて面倒なんだよね。ええと、あったあった。
「ここの英数字混じりの文字列があるでしょ?」
認証コードを見せたところで、指で隠してある私のアカウント名とパスワードがわからなければ入れないはずだ。セキュリティ的にはあまりよろしいものではないが。
「この文字列は、時間と数学で計算される。だからこの時間にこの文字列が出るって予言できれば、少なくとも未来を知る方法があるってわかるわけ」
まあこのネタ自体は私のオリジナルじゃないけどね。
「ってわけ。こういうこと。あとは私の場合ならあといくつかあるけどさ」
「どういうの?」
ずいと身を乗り出して真山くんが私に近づく。思わず距離を取ってしまったがこれよかったのかな。まあいいや。
「秘密。もし次でさっきの文字列を覚えてたら教えてあげるよ」
「……わかった。そうする」
おや、案外ノリがいい。
「そういえば、さ」
「ん?」
私の声に応える彼の風貌は案外悪くないのだ。私の脳の悪い部分が女装が似合うぞとか受けに向いているとか言っているが適当に処断しておこう。って、そうじゃない。
「どうしてこういう話をしたの?私が英語一位だっていうのは言ってないはずだけど」
条件は整っている。もしこのあたかも秘密の情報を知っているぞとアピールするような行為をわざとやっているとしたら、相当におちゃめなやつだ。
とはいえ不正ログインのためにこの話を持ちかけたって可能性のほうがまだ高いんだよな。こっちはこっちで私の私生活を一通り監視していることに繋がりかねない。ヤンデレは嫌いなシチュじゃないけど現実と物語は分けて考えようね。
「前のあなたに聞いた」
そう言いながら、真山さんはメタルバンドの腕時計を見た。案外いいデザインだな。
「……どういうタイプのタイムリープ?」
ここは面白そうだし、騙されてやるとしよう。私は文字通りおもむろに両手を口元で組んで肘を置く。こうすると作画コストは下がるけど読唇が使えなくなるのでほどほどに。
「もし終わらなかったら話