今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 四回目
高校一年生 四回目 二周目 一


ベッドでぼんやりと少し古びたスマホを見ていると、枕元から通知音がしてびっくりしてしまった。

 

『二周目が始まった』

 

連絡先を交換していたので、メッセージが来ることはおかしなことではなかった。

 

『通話できる?』

 

私はすぐに返信を送る。夜はまあ遅めではあるが、小声なら両親を起こすこともないだろう。

 

そんな事を考えていると、手の中から着信音が聞こえた。

 

「もしもし、夜遅いけど大丈夫?」

 

「うん。このタイミングだとは思っていなかったけど」

 

頭の中でしばらくこの後の予定を思い出す。特に面白い行事とかはない。期末試験まではあともう少しある。ああでも長いループだとかぶってしまうか?

 

「僕も少し意外。ともかく、情報を共有するね。終わるのは三日後、土曜日の夕方六時ぐらい。いつもの経験からして、十周はしない。五ぐらいかな」

 

「二週間、ね」

 

頭の中で算盤をはじく。睡眠時間とかなんやらが入るから、私が共有できるのは長くても三十時間程度かな?今日は水曜日。もうすぐ木曜日。

 

「まず確認。真山さんが覚えている限りでいいけど、何か大きなことは起こった?」

 

「特に。ニュースもあまり役立ちそうなのはなかった」

 

明確なループ要因はまた否定される。一緒に探せば見つかるかな。

 

仮説の一つとして何かの原因があって、ループのたびに真山くんが行動を変化させるせいで起こるバタフライ効果が知らないうちに問題を取り除いているというものがあった。これの検証は私もしておきたい。

 

「わかった。まずは寝て」

 

「いいの?」

 

「試したいことはあるけど、それは三周目じゃないとできないものもある。一度に覚えられるものも少ないだろうから、最低限だけを伝える準備をする」

 

そう言いながら起き上がり、パソコンを起動。プログラムを起動すると、この時のために用意しておいたシステムが情報の整理を始める。

 

一時間ごとに、世界中の様々なデータを集めてそれを文字列に整形する。同時に株価やらニュースやらから使えそうなものを抽出。全然この分野は知識がなかったけれども、今は人工知能が手助けをしてくれる。いい時代になったものだ。

 

「こっちの方は、あまり気にしないで」

 

「……和乃さんは、あと三日をどうするの?」

 

「どうもこうもないよ、試験勉強はするけど。ああ、英語教えてあげようか?」

 

とはいえ相手はクラスで二位だったか三位だ。次に逆転されても何もおかしくはない。

 

「お願いしていい?僕も教えられることは教えるから」

 

「馬鹿」

 

「えっ」

 

「今の私に教えても意味はないでしょ、終わってからにして」

 

「……そうだったね、ごめん」

 

彼の返事を聞いて、私はまたやらかしたなと自分に溜息を吐く。考えたことをすぐに口にするな。一回深呼吸とまでは言わなくとも少し間を置くぐらいのことはしようぜ。

 

「三回目は終わりじゃないってことを前提に動いていいよね?」

 

「うん。間違いないとは言えないけど」

 

「なら、ちょっと次の私に長めの伝言をお願いね」

 

「わかった」

 

確認の結果、彼は十文字までなら数字アルファベット混じりの文字列を暗記できることがわかった。暗記する必要はない。数分間だけ覚えて、あとは紙に書き写しておけばいい。

 

「そういえば、紙のほうは大丈夫?」

 

書き写すために紙を探したりなんかしていたら、その間に忘れてしまいかねない。もし近くにメモ帳とかがないなら、それに合わせて文字列を短くしておかないといけないのだ。

 

「うん、次に始まった時に手に届く範囲にある」

 

「ならいいね。ま、コードは土曜日に伝えるよ」

 

というわけで今周の私がやることは少しづつ処理の様子を見ながら次の私に伝えてほしいコードを作ることだけ。これで知りたかったことのうちいくつかが判明する。

 

「それじゃ、おやすみ」

 

「……ちょっと、話してもいい?」

 

「……いいけど」

 

そう言って、私は時計を確認しようとしてスマホを起動する。今持っている新しいやつじゃなくて古びた方。こういう事をしていると止まったエスカレーターを歩くほどじゃないけど何かちぐはぐな感じがして気分が悪くなる。

 

時間は良い子は寝る時間だけど悪い子は起きている時間。まあどうせ遅刻しようが問題ないか、と割り切ってしまおう。

 

「よかった。なんとなくだけど、声を聞きたくて」

 

「前の周でもこういう事したの?」

 

この一ヶ月弱、私と真山くんの距離はたまに話す友人程度であった。私は私で話せる相手が一人見つかって満足だし、彼の方も先のループでの練習を活かして友人の輪を広げていた。

 

ええ、嫉妬したりはしませんとも。私は孤独を愛せる少女なのです。それに、ループの時は私を優先的に見てくれる。統計的には連続する私の意識の中で彼と話せる時間は短くなるけどさ。

 

「……してない」

 

「そう。別にただの確認だからあまり気にしなくていいよ」

 

正直、私はある種の期待とある種の諦めを持っている。まだうまく言語化はできてないけど、たぶんいつか真山くんがきちんとどれかの私の言葉とかを使って説明してくれるだろう。

 

「なら、よかった。この前の体育の授業の話なんだけどさ」

 

思ったより全然違う話が飛んできた。まあ、どうせつまらなくはない話なんだ。もしつまらなかったら次の私に言うなって言わないと。

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