今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 四回目 二周目 二

あくびを一つ。校門をくぐる。

 

期末試験が近づいてきて、勉強とかをしないといけない時期になっている。そういうわけでいくつかの部活は活動お休みらしい。私?帰宅部が活動中止にされたら大変でしょう?

 

昨日遅くまで起きていたのに、なぜ私がこんな朝早くから学校に来ているのか。ただの徹夜である。というか私は終了仮説に望みを託しすぎている気がする。

 

私の自意識の連続が土曜日までなら、まあそれはそれで。それまで無茶はできるし、ちょっとやそっとの無茶ではもし終わらなかった時でも影響は残りにくい。

 

そういうわけで教室一番乗り。なので空いてない。朝練の人とかは荷物を部室に置いているのだ。というかまだ朝練も始まるかどうかという時間帯である。そして試験前なので朝練をする人はいなんだよ。

 

人の少ない職員室で鍵を借り、教室に入って、鞄を枕に寝る。居眠りは遅刻に比べて扱いが軽いのだ。

 

そうやって意識があったりなかったりする境目をさまよっていると、次第に人がやってくる。とはいえ誰が誰なのかは正直良くわからない。

 

「ショウタじゃん、早くない?」

 

女子の声が聞こえる。頭の中で声と足音の分布を確認する。

 

「ちょっと早く起きちゃって」

 

夜中までスマホ越しに聞いたあの声が返事をしている。

 

「ふーん、ま、そろそろ試験だしね。頑張んないと」

 

そんな他愛もない会話を交わしている。いいなぁ。私は自分から話しかける方法がわからない。タイミングを掴むとか、勇気を出すとか、多くの人はそういう事をする必要もないらしい。

 

足音がこっちにやってくる。慣れれば歩幅の間隔とかペースとかで見当がつくようになるんだろうか。そして、それは机を挟んだ私の正面で止まる。

 

「和乃さん、おはよう」

 

声が聞こえる。ぼやける目に無理にピントを合わせて相手を見上げる。あまりいい姿勢をしていなかったので、身体が痛い。

 

「……おはよう」

 

寝癖とかついてないかな。あくびが漏れて涙が出てしまう。

 

「大丈夫?」

 

「まあ、うん。昨日面白い話を夜中まで聞いていたから徹夜しちゃって」

 

「……よかった」

 

いや良くはないがな?と思ってしまうが眠くて口には出せない。よかった。私はこの後ずっと脳がねぼすけな方がいいのではないか?

 

「まあでも、次は早く寝たいな」

 

「そうするね」

 

よしよし。次の私に一ついいことをした。

 

「何かやることある?」

 

脳を少しづつ起こしながら聞く。首をストレッチするようにひねるとバキリとなんかやばい感じの音がした。

 

「ううん、大丈夫」

 

「わかった」

 

「和乃さんのほうは?」

 

そう言われて何か考えるが、特になにもないのだ。まあ別になにかしなくちゃいけないと迫られるよりはマシかもしれない。ともかく、静かに首を振る。

 

「そっか。ところで、土曜日って予定は空いてる?」

 

「……ないよ。もし必要なら付き合うけど」

 

前のループでやり残しとか、あとは今回のループでやっておきたいこととか?一日自由に使える休日というのは貴重なのかもしれない。

 

「どこか行かない?」

 

「……デートみたいなもの?」

 

できるだけ真顔で言う。

 

「……まあ」

 

彼も真顔で返した。まあ、うん。冗談だったつもりなんだけどな。空気が変になってしまった。

 

「でも条件はあるよ」

 

「どういうもの?」

 

「何度でも楽しめるか、あるいは面白いかどうかわからないものにして。もし他の私が経験したいことなら、出た後で誘ったほうがいいでしょう?」

 

例えば映画なんかはそうだ。古いものだがループもので面白い映画があったのでもし出かける先がないなら誘おうかと思ったが、ループ内で何度も同じ映画を見させることはしたくない。

 

あるいは真山くん視点では別の映画にできるのかもしれない。しかし、出た後で引き継がれる最終周の私にはその周でみた映画一本しかないのだ。

 

「わかった。ちょっと気になるお店があるから、一緒に行かない?」

 

「それならいいよ。もしよかったら次も誘ってね」

 

こういうふうに真山くんはちょくちょく挑戦をしているが、怖くないわけがないと思う。だったら隣にいてあげるぐらいは、友人としてやってもいいんじゃないだろうか。

 

「そうする。で、場所なんだけど」

 

そう言って彼はスマホを私に見せる。うーんと、土地勘がないエリアの喫茶店だな。私の行動圏外である。まあ行動圏は駅と学校と家を結ぶ細い線なのだが。

 

「……知らない」

 

「前に聞いたけど、フレンチトーストがおいしいらしい」

 

「それはそれは、行ってみよう」

 

「現地集合でいい?」

 

「えっと、真山さんの住んでいる場所ってどこだっけ?」

 

「ちょっと待ってね、ここらへん」

 

そう言って彼は地図にピンを立てた。学校と私の家と彼の家がちょっと歪な直線に並ぶ感じ。

 

「学校に集合でもいいし、私がそっちの家まで迎えに行ってもいいよ」

 

ルート的にはちょっとの散歩ぐらいで済むからな。私一人では絶対にこういうことをしなかったので、ループのおかげもあってリスク低めでおもしろい経験がわかるわけだ。

 

デートではない。忘れないようにしないと。

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