今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 四回目 二周目 三

なにかできるはずの時間をぼんやりと過ごしてしまっているような、焦燥感とまではいかないけれどももったいないと思ってしまうような時間が流れる。

 

歴史総合はひとまずまとめの部分に入ってきた。古代と中世の切り替わり、西ローマ帝国の滅亡。いやなんで残った東側にローマがないのにローマを名乗り続けてるんだよ。

 

一応ノートは取ってるが、教科書を見ればいいところは教科書に任せてメモ書きみたいな感じにしている。だから、そう急ぐ必要はない。

 

先生の話を聞き流しながら、自分の状況を確認する。今のところ私の主観でこのタイムリープがどう終わるかの可能性は三つある。

 

まず一つ目、終了仮説。私の一番推し。世界もろとも土曜日に終わるというのは悪くない。

 

真山くんがいきなり消えたり、あるいは死んだように意識を失うかもしれない。とはいえ、個人的にこの可能性はあまり高くないと思っている。

 

もしそうだったら、私が体験できる世界線のほとんどで彼は死んでいるはずなのだ。生きているルートを的確に彼に沿うように進んでいるならともかく、そんな幸運が必要とされる仮説はどうしても優先順位が低くなる。

 

あるいは、私からすればあたかも真山くんが二周しかしないでループを終えてしまうというもの。とはいえこれも今までの法則性、つまり短い周は多くのループを含むということを裏付けてくれない。

 

確率的に抜ける世界線と抜けない世界線が分かれるとかも考えられるけど、あまりこれについて考えすぎても問題だ。

 

というアホなことを考えていたらもう金曜日ですよ。昨日は特に何もしなかった。事前に準備はしておいたので、ループで何が変わるかを調べるのは三周目にわかる。今周はできることはない。

 

いや、別にできないわけじゃないけどな、とちょっと立ち上がって外の風に当たりながら考える。昨日は暑かったが、今日はまだ涼しい。ブラウスを風が撫でる。

 

「何かあるの?」

 

そう言って声をかけてきたのは真山くんだった。なんだなんだ?まるで友人みたいじゃないか。ループのときにしか相手してくれないくせに。冗談ですよ。

 

「いや、もし何かやるとしたらどこまでできるかなって」

 

考えようによっては、世界が終わるわけだ。そういう見方でループものを扱うことができるとは思ってもみなかった。

 

「……どういうこと?」

 

「例えばさ、昨日の……じゃないな、一昨日の深夜から旅行に行くとかもできるよね」

 

「……考えたこともなかった」

 

「ループの中で日常から踏み外さないようにするの、私は多分できないよ」

 

平均台の上を歩くようなものだ。少し崩れると、日常が上書きされてしまう。

 

「あまり変なことやって、それが最後の周だったら大変だから」

 

「経験あるの?」

 

「何回かね。どうせ次があるからって思って、失敗したことがある」

 

へえ、これだけタイムリープに慣れていてもそういう事が起こるんだ。私とはまた違った形で大変そうである。

 

「……そうなんだ」

 

「まあでも、大失敗ってほどじゃないよ。中学校の時は仲直りできたし」

 

「友達、多いの?」

 

「……いるけど、あまり僕は付き合いのいいほうじゃないから」

 

「やっぱり、ループが怖い?」

 

「ループの最中でも、隠さなくっちゃいけないっていうのが辛い。和乃さんにだけは自由に話せるけど」

 

嬉しいこと言ってくれるねぇ。緩む口元がバレていないかが心配だ。

 

「私なら、三日あったら色々してしまうかも。学校休んでゲームやったり、貯金崩してどこかに旅行に行ったり」

 

「そういうこと、してみる?」

 

「夏休みがそろそろ来るから、タイミングが合えば」

 

昔のアニメを思い出す。原作はライトノベルだったはずだが、読んでいない。あれのループは半月ぐらいで、一万ちょっとの繰り返しだったはず。とはいえ記憶の持ち越しをしているのが宇宙人だけ。

 

「……わかった。もし都合のいいループが始まったら連絡する」

 

「よろしくね、できれば最終周が一番楽しいといいけど」

 

そうはできないから辛いんだろ、ということを忘れて口を滑らせてしまう。基本的に私はループの期間は受け身のほうがいいかもしれないな。

 

「……頑張る」

 

「ま、今は明日の話をしようよ!伝えるコードの詳しい解説は次の周の私に頼んでね」

 

「待ち合わせ、午前中でいい?」

 

「そうだね、お昼がわりに喫茶店で……って感じかな。その後は私は特に予定ないけど、どこかぶらぶらと街でも歩く?」

 

分かれて帰ってもいいんだけど、どうせわざわざ外に出るのなら色々とやっておきたいことも多い。消しゴム買おう買おうって思って買えてないからな。

 

「……いいの?」

 

「いや、嫌なら別に無理にとは言わないけどさ」

 

「行きたい」

 

「といっても、私はろくにエスコートできないからそういう方面では期待しないでね」

 

誰かと遊びに行くなんて経験、思い出したくないあれを除けばほとんど初めてみたいなものだからな。まあ失敗しても次の時にもう少し上手くいくように真山くんが誘導してくれるだろう。

 

私には今周しかないけど、彼にはその先があるのだ。ちょっと色々と背負ってもらおう。次の周の私から面倒なものを投げるなと言われるような気がしたが、気のせいだ。

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