今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 四回目 三周目 一

ベッドでぼんやりと少し古びたスマホを見ていると、枕元から通知音がしてびっくりしてしまった。

 

『三周目が始まった』

 

連絡先を交換していたので、メッセージが来ることはおかしなことではなかった。

 

『通話できる?』

 

『寝て』

 

『はい』

 

『あと頼まれてたコードはこれ』

 

そう言って彼から送られてくるのは英数字混じりの十文字。

 

「よっしゃあ!」

 

私は前の周の私とループに入る前の私を褒め称える。これで今周の私にも存在価値ができた。いや存在価値がないと在っちゃいけないとか、そういうわけではないんですけどね?

 

しかしこれを今すぐ扱うのも困りものだ。寝ろと言われているんだ、寝てしまおう。でもその前にちょっと見るぐらいはいいじゃないですか。

 

パソコンを起動。この時間がじれったくも嬉しい。脚が揺れる。未来の私からのメッセージだ。それも結構複雑な。

 

過去に相当する時間に送るべきものを選ぶに当たって、私は少なくとも最初はループの特徴を掴むことを優先した。

 

例えば天気は変わるのかとか、競馬はどうなんだとか、量子力学は正しいのかとか。まあ、これについては正直いろいろ試してみたかっただけだ。

 

伝えられる情報は誤り訂正を含めて30ビット。4バイトを切ると言ってもいい。普通に文字として扱ったら半角で3文字ちょっと。どこぞのゲームで出てきたガジェットが三つに分けて送信するやつの三分の一未満である。

 

それでも、色々と情報を集めるには十分だ。起動したパソコンの中で更に仮想マシンを起動。ここで外部からのアクセスを遮断した上で処理を行う。別にそこまでする必要はないかもしれないけど趣味だよ趣味。

 

まず確認するのがこのメッセージが正しいものかどうか。誤りがあったならばそれを検出して確認できるが、それは十文字中二文字までの誤りまでが限度だ。

 

というわけで確認。問題なし。誤り訂正は必要なし。かけておいた保険が外れた気分だ。なんだ、真山くんの記憶力というのはちゃんと信頼していいやつだな。

 

それ以外の情報について確認する。いくつかのものはある程度の期間が経過しないと判別できないので、見るのは私からの隠されたメッセージだ。

 

この十文字のコードを作り出すプログラムは、事前に作っておいたフリーアドレスにメールが送られるとそこに返信としてコードを返すものと一体化している。そこで送るメールのメッセージは隠されて十文字に組み込まれるのだ。

 

解読結果が画面に表示される。1。0から7までパターンがあって、そのうちの1だ。

 

意味はまあ、そう難しくはない。わずかながら進展あり。何の進展かは、はっきりとは決めていない。なおもし緊急事態とかなら7が送られてくるはずだし、その場合には真山くんを一切信用できなくなる。まあこういうことになった場合にはちゃんとコードを言ってくれるかすら怪しくなるけどな。

 

「あーあ、前の私に先を越されたか?」

 

私だって、まあ年頃の少女だ。散々なことになった経験はあるとは言え、それでも恋に焦がれてしまう悲しき乙女だ。それなのでまあ、こういうメッセージは複雑な気分である。

 

どうせならループ外でそういうことをすればいいのに、と思うがまあこれは彼には難しいのだろう。私だったらループがあろうがなかろうがしないので、進めただけ偉い。

 

そんな事を考えて少しテンションを上げていると、通知音がした。

 

『寝た?』

 

『まだ』

 

『寝て』

 

なんか冷たいなぁ。前の周のきみはかわいかったのに、とでも言おうかと思ったが送られてきたのは2じゃなくて1だ。あまり下手なことを言うと実はそこまでじゃなかったんだよみたいなことになりかねない。

 

『前の周の私は寝不足になってた?』

 

『うん』

 

何で寝不足になってたんだ?コードの生成は時間がかかるし、プログラムを書き換えてしまっては意味がない。もしそういう事をしたならコードの誤り訂正が機能しなくなる可能性があるし、そもそもメッセージの意味がなくなる。

 

『何か前の私から、技術的なことに関する伝言を受け取ってない?』

 

『特にない』

 

返信が短い。普通はもう少し話してくれるのに。怒っている?もしそうならそういうコードである6を前の周の私が送っているはずだ。じゃあ違うか。

 

『もしかして、話したい?』

 

仮説の一つを検証する。これが正しければ、私が前の周で寝不足だった理由がわかる。

 

『どうしてわかったの?』

 

『簡単な推理だよ。私が寝不足になってもいいなら聞いてあげる』

 

何もできないはずの私が深夜テンションでわくわくして寝れなかった可能性も十分にあるけれども、真山くんが原因のほうが辻褄が合う。

 

彼は我慢していたから、こういう文面になってしまったのか。かわいすぎないか?なんていうかあたかも私のほうが精神的余裕があるように振る舞っているが、実は知っている情報はほとんど無いに等しい。

 

それでも、真山くんはそうやって全てを知っているように、じゃなかった、前の周の事を覚えているように振る舞うのを好むからな。

 

とか思っていると電話が鳴った。

 

「寝ちゃったらごめんね」

 

そう言ってスピーカーモードにしてから音量を調整し、部屋の電気を消した。

 

「いいよ」

 

落ち着く声が電波越しに聞こえた。

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