高校に入って最初の中間試験のテストを改めて確認しながら、私は少し笑みを浮かべる。
「
そういう声が聞こえて返却された解答用紙から目を上げると、同級生である
「……なに?」
私に声をかけてくるということは何だ?というか真山くんと接点ないよな。別に真山くんと接点ある人を知っているわけではないけど。
「この文字列、何だと思う?」
そう言って彼が見せてくるのは紙に書かれた英数字混じり5文字。というか返ってきた英語の解答用紙の裏に書くなよ。
「どうって、ランダム生成のコードか何か?」
アルファベットは全部大文字。ってことは大文字26文字と数字10文字、一桁につき計36文字が割り振られるタイプかな。
「前の和乃さんにこれを見せてって言われた」
「タイムリープ?」
ご冗談を、と思いながらスマホを取り出す。私が使うことのあるこの手のコードっていうとあれだな、ゲーム通販サイトのやつ。
「なんで一瞬でわかったの?」
「前のって言い方は普通しないでしょ、それにワンタイムパスワードを鍵にしようだなんて発想は私ならするから」
表示される文字列は一致しない。とはいえ切り替わるタイミングがいくつかあるからな。
アルファベット26に数字が10でIとOを抜いて34。34×34がだいたい1000なので、1000×1000×34にちょっとおまけすることになって組合せは数千万通り。一日は八万秒ぐらいだったので、偶然の一致だとしたら数十年に一度ってことだ。
「……和乃さん?」
「ごめん、ちょっと考え事してた。これが偶然で当たったなら真山さんはギャンブラーの素質があるよ」
あるいは詐欺師か。とはいえこのワンタイムパスワードを見たいだけなら目的は果たせているわけで。一応あとで変なログインなかったか確認しておこう。
「ところで、このパスワードってどういうふうに決まるの?」
「暗号学の分野になる。そういう本を読んだことは?」
「たぶん、ない」
「わかった。この数字は、内部の時間と共有した秘密の言葉から数学的に作られるの。そして、出てきた文字列からどういう時間か、あるいは秘密の言葉が何かを知ることはできない」
「……影、みたいな感じ?」
「いいね。同じ影ができたとしても、何がその影を作るのかはわからない。でも、条件が揃えば同じ影ができるのはいい?」
「そうやって作るんだ、面白いね」
「実際は向こうの会社側のサーバーの時計と私のこのスマホの時計がズレていることもあるから、そこは多少ズレてもいいようにはなってるんだけど」
私がそう言うと、表示されるコードが切り替わった。
「……本当にタイムリープ?déjà-vuみたいなものの可能性もあるけど。いや、結局は私にとっては似たようなものか」
声を小さくして、一応周囲を見渡す。こちらに注目している人はいない。
「聞きたいんだけど、他にも僕がタイムリープしてるってことを、あなたなら信じる方法があるって聞いて」
「タイムリープに限らないけどね。強いて言うなら、未来の私か、平行世界の私か、ともかく私と同じ記憶をある程度共有している存在がその相手を信頼しているって証明のために使える秘密を私は三つ持っている」
どれも私にとっては嫌な、思い出したくない思い出だ。そしてそのどれもを私は隠しているし、共有もしていない。
「……信頼、できない?」
「タイムリープしてるっていうのは信じる。だから、一番弱いやつを教えるよ」
万が一、私が一番隠したがってる第一級の秘密を話してくる人がいたらほとんど条件無しで言う事を聞くようにしようと考えている。真山くんを少なくとも今はそこまでは信頼できない以上、まずは直接的に影響のないこっちからいくか。
「私が小学三年生の時、盗みを働いた事がある。次の周があったら、ワンタイムパスワードと一緒にそれを言って。そうしたらその盗みについて詳しく教えてあげる」
「ありがとう。助かる」
「いいのいいの。で、残り時間はどれぐらい?」
「あまりない」
真山くんは腕時計を見ながら言う。お、メタルバンドのかっこいいやつだ。私もこういう時計つけようかな。でも大抵忘れちゃうし、失くしても嫌だ。
「そっか。じゃあ、ループから抜けたらでいいから、どういうタイプのループか説明してね」
「次のあなたに言うよ」
「それだと何度も話す必要があるでしょ?もし情報共有が抜け出すために必須ならともかく、徒労は避けたいでしょ。何周目かも知らないけど」
「五か六、いや七かも。今回はそれくらい」
「……何回も経験してるの?」
もしそうだとしたら、精神的な影響とかは色々とありそうだ。とはいえ私はそういう相手にちゃんと対応できるほど心が大人というわけでもない。辛い。
「うん。今回は期間が短いし百周ぐらいかな」
「……私ならこれぐらいの話し相手になれるから、頼っていいからね」
下心がないとはいいませんが、人間ってそういうものでしょう?ともかく、私は助けを求めてきた人を無下にできない程度にはお人好しだ。なら次の彼も上手くやってくれるだろう。
「いいの?」
「何度も同じこと繰り返すと飽きるでしょう?私なら、それな