今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 四回目 四周目 六

喫茶店でだらだらしながら英語の問題の話をして、ぶらぶらと街を歩きながら話をして、まあそういうわけで夕方である。

 

「……時間までは?」

 

「あんまりない」

 

腕時計を見せてくれる真山くん。確かにそこまで余裕はない。今歩いている場所から終わりまでに行ける面白そうな場所もない。ただあてもなく、足を進めることしかできない。

 

「……他の周でさ、終わりが近づいたときに私は変なことしてなかった?」

 

「……あまり、思い出せない」

 

心当たりはあるのかな。覚えているかどうかもわからない。ただ、今までの周の私はちゃんと隠せていたか、あるいはそれを忘れるほどに楽しかったかのどちらかだ。

 

「ループ終わり、私が変な行動をする可能性は考えておいてね」

 

「……どうして?」

 

「例えばさ、明日世界が終わるって聞いたらどう思う?」

 

「……思考実験、みたいなやつ?」

 

「そうだね。今までやりたかったことをやる人もいれば、もう終わりだからってヤケになる人もいるかもしれない」

 

真山くんにとっては、周の終わりでの世界のリセットは似た効果を持つ。ただ、意識が連続するから終わりであるとの認識が薄いだけだ。

 

「……和乃さんは、どうするの?」

 

「わからない。ただ、今までの話を聞いて私の今の考えと照らし合わせるとたぶん普通を演じて過ごすと思う」

 

意識してしまった以上、それを考えないことはそうそうできない。だからあくまで、できるのはそれらしく動くことだけだ。

 

「和乃さんはさ、世界が終わると思うの?」

 

「仮説として、ね。だからそれはそれなりに怖いし、隣に誰かがいてほしいと思うのさ」

 

それがもしいまここの私がいたってことの影響を別の周に引き継いでくれる存在なら、なおさらである。

 

私は少しだけ歩幅を広げて足を進めるテンポを早め、真山くんの前に出てからくるりと百八十度後ろを向く。

 

「最後に一緒にいるのが真山さんなら、私はそれなりに幸福だと思うよ」

 

これは、かなり重い告白だと思う。もちろん、私だってそこまで深い愛を真山くんに持っているわけじゃないと思う。ただの妥協で、一番マシってだけ。でも少ない選択肢の中とはいえ、私にとって真山くんは一番の相手なのだ。

 

「……ここは、嬉しいなって言えばいいの?」

 

「そうだね」

 

さっき確認した範囲では、明らかな障害物はなかった。ペースを合わせながら後ろ歩きを続ける。

 

音の反射を確認しろ。後ろに何があるかを考えろ。いやだめだな。なにかから意識をそらすためにやるならまだしも、こういう大切な話をするときには向いていない。

 

というわけでまたくるりと反転。真山くんの隣に戻る。

 

「でもさ、これは今周の私だから言えること。たぶん、もし真山くんが私に恋人がいるかどうか聞いて、それに答えてしまったら、もう私と会える機会はないと思うよ」

 

そういうわけで、こんな悪友みたいに少年が心を寄せる少女を狙うためのアドバイスをしてくれる私はおしまいだ。

 

「……ありがとう」

 

「いいのいいの、今の時点でも、私にとって真山さんは数少ない友人なんだから」

 

小学生の頃みたいに友達の定義で悩んだりはしない。ある程度話して、互いのことをほどほどに知っていて、なにかあったら話せるぐらいの関係なら友人と言っていいだろう。

 

少なくとも、顔見知り以上ではあるはずだし。

 

「……なにか、してほしいことある?」

 

「私が、ね……」

 

そりゃ私の自意識がもうすぐ途切れるとしたら、どうせだったら最後に熱を感じたいっていうのはあるよ。

 

でも、それはダメだ。それは、恋みたいな面倒な感情に真面目に向き合った私たちにこそ与えられるべきものだ。こんな斜に構えて恥ずかしさから逃げた私には許されない。

 

「うん」

 

「あまりないかな。強いて言うなら、最後までこうやって一緒に話してほしい」

 

そうしていれば、余計なことを考えて自暴自棄になることを防げる。

 

「わかった。今度からも、そうしようか?」

 

「んー、場合によっては終わる時間を伝えなくてもいいよ。どうせ覚悟したところで意味がないんだから」

 

とはいえ嘘をつかれるのはちょっと気に食わないな。私だって自分の感情のすべてを言わずに隠しているところも多いからある種の嘘をついているけど。

 

「……いいの?」

 

「ループの特徴はだいたい理解したし、必要なときに声をかけるぐらいの関係でもいいよ。もちろん、それ以上を望むなら私は対応できるだろうけど」

 

実際のところ、どこまで行けるのかな。過去の経験からして、私はかなり無理をしがちだ。自分の身体だからといって、雑に使ってしまうと後の私が悔やむことになる。

 

「……今の和乃さんに、僕はたぶんしばらく感謝すると思う」

 

「ずっとって言わないのは、誠実さと受け取っておくよ」

 

「忘れないようにしたいけど、僕にとってはどの和乃さんも大切だから」

 

「ほどほどでいいよほどほどで。ちょっとぐらい雑にされたところで、覚えている私がいないならそこまで気にする意味もないし」

 

だからさ、私を殺したんじゃないかとか面倒なことで悩むのはやめればいいの

 

[四周目終了]

 

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