高校に入って最初の中間試験のテストを改めて確認しながら、私は少し笑みを浮かべる。
「
そういう声が聞こえて返却された解答用紙から目を上げると、同級生である
「……なに?」
「ここじゃあれだし、少し廊下で。あとスマホある?」
「あるけど」
なんだろう。悪い遊びにでも私を誘おうというのか?残念ながらそういう方面はもうこりごりなんだよ。嫌な記憶を思い出してしまったので軽く頭を振る。
「和乃さんが小学三年生の時に、物を盗んだことがあるって聞いた」
一瞬だけ胸がぎゅっと痛む。だれだ、あれは誰も知らないはずだ。私だってそう言われるまで忘れかけていたのに。
「……わかった。念のため確認。いつ、どこで、誰から聞いた?」
でもこれは、私が前に決めた第三級の秘密だ。だから、これが意味することぐらいは見当がつく。そういうことはまず起こらなくて、思考実験で終わると思っていたのだが。
「僕にとっては前の周で、時間としては数分後のあなたから聞いた。あとこれは和乃さんのアプリのワンタイムパスワード」
「まず確認してからでいい?」
ここまで準備がいいとなると、たぶんそれなりに繰り返しをしているはずだ。とはいえそういう質問は彼にとっての前の周で私がした可能性もある。ここは何も言わないでおこう。わかっている感じを出したほうがかっこいいからでもあります。
「もちろん」
「私に聞きたいことがあったらちゃんと言って、私は基本的な情報は話したとして共有するから、って聞いた?」
「ううん、初耳」
「わかった」
となると周数はそう多くはない、のか。少なくとも私に声をかけてきてからはそう経っていない。次は第二級を教えるのがいいかな。でもまだ彼のことを信用できていないし。それだったら第三級を強化しておいたほうがいいかな。
「……何をしてほしい?」
「いや、あまり考えてなくて……」
少し抜けたように返す彼は案外かわいかった。そういう顔するんだ。
「急いではいない?」
「和乃さんには、説明しなくても良さそうだから」
「んー、勘違いかも。私はついさっき初めて真山さんに話しかけられた。たぶんタイムリープして私との会話に慣れているから繰り返しにならないようにわかったように振る舞っているけど、完璧じゃないからね」
「それだけでも十分だよ、同じことの繰り返しじゃないってすごい楽で」
「……そう」
真山くんの笑顔から、辛かったのかなとか考えてしまう。
「出れるアテはあるの?」
なにかが原因となってループから抜け出せないっていうのはループもののお約束。もしそういう問題があって時間に追われているなら、次の周ではもう少し助けになるようにしたいけど。
「たぶんあと百周もすれば終わる。だからのんびりしてる」
意外な返答だった。真山くんは傾向を掴めるほどに多くの回数のループを経験している。その中には百周程度のものもある。なるほど、珍しそうなタイプだ。
「……繰り返し期間は?」
「十五分ぐらい。英語の試験の解説のあたりから始まって、あと数分で終わる」
「それぐらいなら、まあ心理的側面については大丈夫かな。経験則はあるの?」
「長いと繰り返しは少なくて、短いと多い」
「最短と最長、覚えてる?」
「長いと前は一ヶ月ぐらい巻き戻ったことがある。それは繰り返さなかった。短いと数分ぐらい」
「……なにか時間つぶしはある?」
「本をいつも持ってる」
「なら、なんとかなるかな。必要なら貸すから」
なぜか私の鞄の中には本が三冊ほどあるのだ。英語のペーパーバック、文庫本の小説、ハードカバーの科学の本。今度からはもう一冊ぐらい入れておこう。
「……どうして、そこまでしてくれるの?」
まだそういう疑問を持つぐらいなのか。というか私は説明してないな?
「真面目な答えと不真面目なものと、どっちがいい?」
「まず不真面目な方から聞かせて」
「もし真山くんがタイムリープをしているなら、私に対して何周分もの恩を作れる。それに比べて、私がしなくちゃいけないのはこの一ループ分での手助けだけ。投資としては割がいい」
とはいえ、私が確信した時からそう経ってはいないので今ではそこから六周目ぐらいかな。ワンタイムパスワードのことを聞き出して、そこから秘密にたどり着くまで何回か無駄な回が必要になると思うし。
「そういうふうに思われたこと、たぶん、ない」
「だろうね、これは私が特殊だから」
だから私を頼ってほしいな、とは言わなくていいか。もし前に私が言っていたら押し付けがましくなりかねない。
「次の私には、不随意で脱出条件が回数のタイプのタイムリープだって伝えてくれればいいから」
「フズイイ……」
「思い通りにならない、ってこと。頑張っても心臓を止めようと思って止められないように、どうしようもないもの……って言えばいいかな」
「わかった。そろそろ巻き戻るはず」
「じゃあ次で。まあ別に声をかけなくてもいいけど」
ワンタイムパスワードを覚えるのも面倒だろう。私はぶつぶつ唱え続けないと無理だ。それにずっと私に声をかけつづけるのもあれだろうし。百周あるなら、きっと色々するんだろうな。
「しばらくは和乃さんと話したいな」
「そう。あ、聞きたいことがあった」
「どういうもの?」
「いつもループする時の間って何をやってい