喫茶店でだらだらしながら英語の問題の話をして、その後にしばらく歩いてショッピングモールのアパレルショップに行った。
「……買うの?」
素材を触って確かめている私に真山くんが聞いてくる。
「もし今周で終わったらね。終わらなかったら似合ってたなと思ったやつを教えてよ」
「わかった」
もちろん誰かの価値観に合わせて服を買うということの意味ぐらいわかってますよ。でも私はそれ以上に服のセンスが無いんです。
「真山くんはシュッとしてるよね」
襟付きの半袖シャツと長ズボン。シンプルと言えばそうなのだし、男子高校生のファッションの選択肢が少ないから無難なものが見えるのかなと考えたが、それでも私が一人で選ぶよりはマシだろう。
「そう?」
「うん、私はそういうの好きだよ」
だからといって真似すればいいってものでもないのは難しい。身長とか体型とかはそれなりに違いますしね。私は年頃の平均身長ぐらいなので小柄とは言わないけど。
「……そっか」
「試着したほうがいいかな」
気に入った服を手に取りながら言う。
「待つよ?」
「ならいいや」
一緒に過ごす時間を増やしたほうがいいな、という判断。決して店員さんに話しかけるのがちょっと怖かったとか、そういうわけではありません。
そういうわけで、他のところも見てみる。色々あるんだよな、ここ。私の標準行動圏よりちょっと外れているが、何か特別なものを買うとしたらここだ。
「ここには一緒に来たことないよね?」
今回、私は真山くんと色々なところに行っていたようだ。書店にも行って、面白い本を見つけたらしいから後で見てみよう。
「ないはず」
「他の人とは?」
「家族とはたまに、あと中学生の頃に同級生と」
「いいなぁ、私は友達と買い物に行ったことがないよ」
中学時代には友達と呼べるような人は、まあ、いましたとも。最近連絡取ってないけど。まだ名前は覚えてますけどね。
「ここで食べる?それとも他のところに行く?」
ショッピングモールの中のフードコートみたいなところで食べてもいいし、夕方の街を歩いて駅前のどこかで食べてもいい。
「……ループ前に食べたほうが、いいかな」
「食事を娯楽と考えるならそうかもね。私はどっちでもいいよ」
「一緒に食べる?」
ここで一緒に、というのはループ前に、って意味かな。
「うーん」
ちょっと考えてしまう。それなりに歩いて疲れたのもあって、お腹はそれなりに空いている。しかし今の時間帯だと深夜にお腹が空いてしまうんだよな。
その時に私がストックしてあるおかしに手を出さないとは思えない。自分への信用がない。
「……嫌だった?」
「ううん、行こうか。でもどうせなら悪いことしようよ」
「どういうこと?」
「後払いのところで食べて、食べているタイミングでループが終わる時間になるようにする」
「なんて邪悪なんだ……」
ちょっと引かれてしまった。なんだよ、別に出れた場合には素直に払うことになるし、出れなかった場合はそもそも払う相手がいないんだから問題ないだろ。
「まあ後払いのお店があるかは知らないけど」
「高めになりそう」
「……私が出すよ」
「いいの?」
「お昼奢ってもらったから。かわりに選んで」
「かわりになってる?」
「選ぶのが面倒なんだよ」
そんな話をしながら、建物をぐるぐると回って何がいいかを決める。休日の夕方なのでそれなりに人が増えてきたのもあり、早めに決めることにする。こういうことをやっても、時間を無駄にしている気がしないのはいいな。
結局回転寿司になった。あまり行ってないのでなかなか楽しみである。
「並んでる?」
私は機械を手慣れた感じで操作して券を持ってきた真山くんに声をかける。
「十分ぐらいだよ」
「残り時間は?」
「二十分ぐらいだね」
ということは他のレストランとかに比べて注文から到着の時間が短いとしても、頼めるものはあまり多くないな。
「そっか」
まあ、もしこれでループから抜け出せなかったとしても無銭飲食できるわけだ。なんとなく気分がいい。
「……やっぱり、楽しむのが一番だな」
「なに?」
私のつぶやきに、真山くんが横を向く。
「終わるのは怖いのかなって思ったけど、真山くんと一緒に悪いことをできると考えるとあまり怖くなくなった」
「そういうものなの?」
「少なくとも私はそうだよ」
そんな話をしていたら、前を通っていったたぶん三世代で来ている六人ぐらいの集団の次が私たちになった。
「そろそろ?」
「だね」
そう言ってから、座れるまでの時間と終わるまでの時間のどっちの意味で聞いたかがわからなくなってしまった。
「早く注文しないと」
そう言って、私は真山くんに注文用の端末を渡す。
「……いいの?」
「何が?」
「先に選ばなくて」
「別に構わないよ、どうせなら記憶を持ち越せる人のほうが食べたほうがいいでしょ?」
とはいえ来たら横取りするつもりである。二貫で一皿ってことはそういう意味だよね。まあ真山くんは一緒に二皿頼んでくれたんだけど。
いくつかの握りとあと茶碗蒸しを頼んで、水を持ってきて、まあそういうことをしているうちに到着。
「……久しぶりに食べるけど、こういう味なんだね」
「いいものでしょ?」
そう言ってきた真山くんに、私は頷い
た。