今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第五幕間 二

お腹も膨れてきて、脳も落ち着いてきた。

 

「一旦、真山くんの状態を整理しよう」

 

脳の中で蠢き始める言葉たちは一旦停止。ご飯食べたんだからちょっと黙っててね。

 

「まず、対象は不定期に記憶を過去のある時点と判別がつかないようなタイミングに持ち越せる体質を有する」

 

「なんでタイムリープって言わないの?」

 

「本当に同じ過去に戻っているかわからないから。セーブデータをコピーしているだけかもしれない、って言えばいい?」

 

頷く真山くん。彼の主観では自分がプレイヤーかもしれないが、真山くん自体がゲームの中のプログラムではないと断言はできない。むしろ私がプレイヤーなら、真山くんもプレイヤーであるべきじゃありませんか?無茶な論理だ。

 

「……ところで僕は被検体か何かなの?」

 

「番号で呼んだほうがいいかな」

 

といっても私のアノマリーコレクションには真山くんしかいない。それに私の知る限り、こういう異常を専門に扱う専門家も組織もない。

 

「……実際のところ、僕がそういう目に遭う可能性ってある?」

 

「……まあ、金になるかならないかで言えばなるからね」

 

真山くんに運んでもらった二回目のループの情報の中には地方競馬の勝ち馬の番号が入っていた。それが一致したということは、当たり馬券を買えるということだ。

 

情報量が少ないから競馬を選んだが、別にもっと他のことでもいい。他のギャンブルでも、仮想通貨でも、株取引でも、真山くんであれば半ば未来予知のように行動が可能だ。

 

得られる金は、あまり疑われずにできる範囲でもまあ今回みたいな数日のループだったら平均年収ぐらいは行けるんじゃないかな。

 

「やっぱり、ってことは狙われたりとか」

 

「ただ、それを金にするのはかなり手間だよ」

 

本人の強い同意がないといけないし、ループの特性をちゃんと把握しないと使いにくい。月に一回程度のために、わざわざ専用の施設と監視を用意して、ループが発生したら必ず言わせるようにする?

 

そういうことをするためには真山くんを洗脳でもするか、あるいは信頼を得るかのどちらかぐらいしかない。私は後者を実現しつつある。

 

「そう?」

 

「うん。長いループってあまりないでしょ?それに準備も必要だし、真山くんに協力してもらわないといけないから」

 

「……一日を超えるのは三回に一回ぐらい、かな」

 

「記録は取ってる?」

 

「取ってない」

 

「……取っていい?」

 

「他の人にバレないようなら、いいよ」

 

「私を信頼するの?」

 

「和乃さんがやった方法で秘密が守れないなら、僕にはどうしようもないから」

 

たしかに妥当な判断に聞こえる。この手の判断に関しては、たぶん真山くんよりも私のほうが得意だろう。

 

「わかった。とはいえ私が知っているのは二回だけ。そのうち、ちゃんと経験したのは今回だけ」

 

それもあまりループって感じではなかったけどね。ふと気が変わって、嘘のタイムリープを理由にデートしていたとかのほうが第三者から見た整合性はありそうだ。

 

「この現象を活かしたいなら、記録はあったほうがいいと思う。期間と何周で終わったかだけでもいい」

 

「わかった。もしループ内で伝えられないような場合は、終わってからちゃんと言うね」

 

「そういうこと、あり得るの?」

 

「深夜に起きたタイミングでループしたことがある。寝ぼけていたから回数とか分からなかったし、途中から読書に切り替えちゃったから……」

 

「なるほど」

 

まあ、真山くんが普通かどうかはわからないけど本人なりに満足な生活を送る邪魔はしたくない。

 

「ところで、もし和乃さんがループできるとしたら何をする?」

 

「資金調達と旅かな」

 

「旅……ね、前にもそういう話を聞いた」

 

「体験が重要だから、実際には真山くんにとってしか意味はないかもしれないけど誘われたらだいたい付き合うよ」

 

「具体的に、どことか考えてるの?」

 

「帰りの時間を考慮しなくていいから、海外旅行とかもありだよね」

 

「……そういう発想はなかった」

 

「例えば今回なら、申請とかでどれぐらい時間がかかるのかにもよるけど夜中に申請して一日で許可、そして飛行機で一日かけて行けば世界の大きな街なら一日は遊べた」

 

実際にどうかはわからないし、申請の期限とかもあるだろうから場合によっては事前にやっておいても悪くないはずだ。帰ったら調べておこう。

 

「……すごい計算だね」

 

「たぶん無茶な旅になるし、もしループが終わらなかったら悲惨だけどね」

 

「それに学校も休むことになるし」

 

「……ループ中に、学校を休んだことは?」

 

「……たぶん、ないんじゃないかな」

 

「なるほど、私は皆勤賞の優等生を不良の道に引きずり込もうとしていたのか……」

 

「そう言う和乃さんも、なんだかんだで真面目だよね?」

 

「私が?」

 

「うん」

 

「……そう言ってもらえるのは、悪い気はしないな」

 

真面目にやっていても、大抵は誰も褒めてくれませんからね。私には飛び抜けた才能とかないので、こういう小さな言葉を大切にしていきたい。

 

「和乃さんはいつでも僕を励まそうとしてくれていたし」

 

「記憶にない感謝をされるの、なんとなく後ろめたい気がする」

 

「僕にとってはあったことだから」

 

「他の私たちのかわりにお礼は受け取っておくけどね」

 

ここらへんの価値観は、まだもう少し私の中で考えておく必要があるだろう。

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