今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 第五幕間 三

結局、男子高校生を連れて行くなら食べ放題がいいという話は間違っていないように思う。遠慮したほうが私を傷つけると考えたのか、真山くんは結構しっかり食べていた。

 

でまあ、私は消しゴムと牛乳を買って家についたわけである。シャワーを浴びて、ベッドに倒れ込んで、少し寝て起きる。仮眠みたいなものだ。

 

「次の回の準備をしますか」

 

今回はあまり有益な情報が得られなかった。とはいえ、世界が変わりにくいとわかったのはありがたい。数日程度であれば、真山くんが直接声をかけたり触れたりしなければ影響がないと考えてもいいだろう。

 

「……かといって、何かができるってことはないからなぁ」

 

未来を知ることができるからと言って、それを使う方法があるわけではない。例えば私が今から投げるコインが表が出るか裏が出るかなんてわかったところで意味はない。

 

十分ランダムに見える事象で、かつそこに介入ができて、その結果人を動かすことができれば、まだいける。でもそういう例はない。

 

「珍しい出来事を見に行くとか、あるいは逃げるとか……。人間が遭遇しうるイベント、そんなにないしな」

 

それに、過度に都合が良すぎる行動は疑われる。一度ならまだいいが、それ以降ループの情報を活用できなくなるのが厄介だ。

 

「やーっぱギャンブルかなぁ」

 

まあ、急ぐことはない。真山くんの能力はそれなりに昔からある。今後いきなり消えるなんてことは、まあ可能性としては想定するべきだけど危惧するほどじゃないな。

 

「ま、個人レベルでは色々使っているようだけど」

 

そんなこんなで、開いていた旅行系のサイトのタブを閉じて二度寝に入る。これを二度寝って言っていいのか?まあ明日は日曜日だ。だらだらしよう。一日中歩いたことで足も疲れているし、ね。

 

エアコンの温度を調整して、目を閉じて、タオルケットを手探りで自分にかける。暑くなってきた。夏休みも近い。ああ、すっかり忘れていたが私は受験生だったな。

 

後で真山くんには恩を返してもらおう。具体的には彼が得意な教科の話。なにせ中間試験では私と同じぐらいの上位の人なのだ。

 

タイムリープで練習量を稼いでるとはいえ、時間を有効に使えるといういい才能がある。

 

で、私はその時間を使わせているわけだ。罪悪感、じゃないな。まだ言葉にしにくい感情が胸の中にある。

 

脳内の厄介な声が恋だって認めてしまえよって言ってる。お前恋愛漫画っぽい展開が好きなだけだろ。たぶんキャラが同じコマにいるだけでカプ認定してくるのと同じ声だ。

 

いや、別に真山くんとそういう関係になること自体はいいのですよ。だって私に恋人がいないか聞いてくるってそういう意味でしょう?頼るときの誠意みたいなあれかもしれないけどさ。

 

真山くんが私に好意を持っているのは、まあ、見ればわかりますとも。私はそういうものには鈍い方だとは思うけど、それでもわかる。

 

でもさ、と私はため息を吐く。どうせそれは一時的なもので、そこに私がたまたまいたから、ぐらいのものなんだよ。もう少し落ち着いてから、そういう話をしたい。

 

失敗してますからね私!その頃の私は中学生ですよ、どう考えても犯罪だったじゃないですか。あの件はどっちもクズでどうしようもなくて愚かだったってことにさせて!

 

「うぅ……」

 

思い出したくない記憶が脳の中をぐるぐるし始めてしまった。どうしようもない。何かで上書きしないと。

 

手探りでスマホを取り寄せて、明るさに目を痛めながら暗くしてメッセージアプリを開く。

 

『起きてる?』

 

ええ、たぶん私は真山くんのことが大好きですとも。それが落ち着いて冷めるまで待ったほうがいいなんてわかっていても、それを実行できるほど冷静にはなれない。

 

『寝れないの?それとも何かあった?』

 

『声が聞きたい、ダメ?』

 

そう言って送ってから、私はなんていうか酷いやつだなぁと思う。これで断るとしたら相当な理由だろ。

 

着信音がする。スピーカーモードに切り替えて音量を調整。

 

「和乃さんからかけてくるの、珍しいね」

 

「前は真山くんからかけてきてくれたからね」

 

知識としては知ってるけど、記憶にはない通話。私だってそれを楽しんだっていいじゃないですか。

 

「……そうだね。それで、どうしたの?」

 

「少し面倒なことを思い出して」

 

「……それって、秘密について?」

 

「……そうだね。だから、具体的に話すと切り札が使えなくなる」

 

まあ今更切り札が必要な関係か、と言われると微妙なところだけどな。それでも、隠しておきたいことはあるのだよ。

 

「わかった。無理に聞かないし、言いたくなったら言って」

 

「本当に真山さんはここらへん上手だよね、私に慣れた?」

 

「何度も話しているからね」

 

「……デートは楽しかった?」

 

「そうだね、でももうしばらくはフレンチトーストは食べなくていいかな」

 

そう言えばあれって今日というか昨日のお昼ごはんか。

 

「私も楽しかったよ、ありがとうね」

 

「どういたしまして」

 

どういう話をしようかとかは少し考えるけど、すぐに内容がポンポンと出てきた。余計なことを考える余裕はなくなっていた。

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