今周の予定は決まってる?   作:小沼高希

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高校一年生 五回目
高校一年生 五回目 二周目 一


「始まった」

 

自習室に真山くんの声が響く。

 

「……今?」

 

私は読んでいた英語の参考書から目を上げる。

 

「うん。ええと、今日は……」

 

そう言って真山くんはメタルバンドの腕時計を見て指を折って数える。

 

「ええと、昨日に戻った」

 

「……なるほど」

 

「たぶん一日半ぐらい。最後の記憶はベッド入って寝たところだから、たぶん寝ているタイミングに始まったはず」

 

「なるほどね」

 

今日の午後と明日をまるまる使える感じか。となると、旅とかかな?特に準備はしていないし、海外とまではいけないか。

 

「最低五周は確保できるって考えていい?」

 

前回は三日弱で五周だった。それよりも短いから、周の数は多くなるはずだ。

 

「うん。今回も十回は行かないで……七とか八かな、保証はできないけど。ところで、何周するかと期間の関係性ってわかりそう?」

 

「まだ私が知っているのは二回だけだし、今回も時間が微妙だからな……」

 

五個ぐらいデータがほしい。それがあったとしてもどれぐらいの誤差で特定できるかはわからない。ただ、たぶんなんかパターンはありそうなんだよな。ある程度データがまとまったら分析してみたい。

 

「わかった。……何したらいいかな」

 

「一日半だったら、日帰りの旅行とか?」

 

「高校生だよ?」

 

「なにか問題でも?」

 

「……泊まれるの?」

 

「ちょっと待ってね」

 

そう言って私はスマホを取り出してメモ帳を開く。私は用意周到なのだよ。

 

「校則側には問題なし。それに旅館業法で相当な理由がない限りは宿泊拒否ができないようになってる」

 

「……調べてたの?」

 

「最低限はね」

 

ループに入ってから調べたらそれだけ時間がかかるからね。

 

「で、どうする?着替えて電車に乗るもよし、制服のままでもいい。今から帰って、明日の朝早くからでもいいよ」

 

「和乃さんは?」

 

「親にちょっと泊まりに行ってくるって言えばいいはず」

 

「……何か言われたりしない?」

 

「まあ、大丈夫じゃないかな」

 

幸い、私の両親はそこらへんはゆるいしあまり気にしていない。まあ、それがどこまでいいことかは分からないが。

 

もしもっと干渉するような親だったら私は中学時代にあんな傷を負わずに済んだ、なんていうのはもう済んだことだから考えないことにしよう。

 

「……よくある漫画とかだと、友達の家に泊まるって言うよね」

 

「そこまで言う必要もないし、そもそも私には嘘に付き合ってくれる友達がいないからね!」

 

一応真山くん以外にも二人か三人はいますとも。増えました。やったぁ。でも一番一緒に時間過ごしているのは真山くんですね。友人と恋人……みたいなものの両方を真山くんに背負わせるの、少し重い気もするけど。

 

「……そうなんだ」

 

「で、どうする?別に私は真面目に勉強してもいいけど」

 

っと待て、一日半後?ってことは夏休みの宿題が終わっていたかもしれないぐらいか。これに気が付きたくなかったな。ループ中にそういうことを意識して過ごしたくはない。

 

でもまあ、ループ中に夏休みが終わらなくてよかったと考えるか。少なくとも今回は、ループ中には宿題はしないぞ。悪い子になってやる。

 

「……明日でいい?」

 

「リスクある行為するなら早めにしたほうがいいけど」

 

「行きたいの?」

 

「……まあ、お金がかかることだからさ、あまり言えない」

 

新幹線乗って、ホテルで一泊したら貯金の大半は吹っ飛ぶ。帰りの電車賃を考えたらたぶん机の中の埋蔵金に手を出す必要が出てくるだろう。

 

「貸そうか?」

 

「あるの?」

 

「使っていないお年玉があるから……」

 

「私も似たようなものだよ。やっぱりバイト始めようかな」

 

かといって何のアルバイトするかとか何も考えていませんけどね。うーん、口先だけの関係で付き合ってもいない相手に貢ぐために働くって言い方をするとものすごいまずい気がするな。

 

「ループから出たら、話聞くよ」

 

「そうだね。じゃあ今回は予行演習ってことでいい?」

 

「……お願い」

 

「わかった」

 

真山くんとの最初のお泊りはできずじまい、か。今周の私、残念!まあ別にだから何だって話ではある。

 

「それじゃあ、勉強しようか」

 

「えっ」

 

「真山さんにとっては実質夏休みが伸びるようなものでしょう?」

 

「そうだけど」

 

「なら時間を無駄にするべきじゃないよね」

 

なおループを経験できない私は時間を湯水のように使っています。これでいいのか?

 

「……そうだね」

 

「ちょっと流されやすいと思うよ、真山さんは」

 

「そうかな……」

 

首をひねる真山くん。かわいいな。

 

「じゃあ、私は次周以降のプランを用意しておく。覚えておいてもらえる?」

 

「今回はコードはいいの?」

 

「……一緒にお願いできる?」

 

「どっち優先したほうがいいかな」

 

「一回だけコードをお願い。それ以降は一致してたか、あるいは違ったかさえ教えてくれればいい」

 

「わかった」

 

頷いた真山くんを確認して、ルーズリーフと筆記用具を取り出す。ここから一日半で行ける範囲の観光地をリストアップしていく。夏休みとはいえ平日なので多少は空いていると信じたい。まあ、もしダメでも真山くんの思い出にはなるからな。

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